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雪は恐怖ではない

私は岐阜県と長野県の県境、乗鞍岳は剣が峰の山頂を目指して登山していた。天気はこれ以上ないぐらいの晴天、登山道も大変歩きやすい。

ただ、まだ雪が残っていた。ある程度まで避けられるがどっちにしろ合流して雪の中を歩いていかなければならなかった。かなりの急斜面、下を見るとますます足がすくむし、かなりの及び腰で最初歩いていた。でも、そうすればするほど恐怖の塊が大きくなっていった。大げさだが「死と隣り合わせ」という言葉が頭から離れなかった。

でも、頂上小屋のおじさんが登りながらスコップで雪かきしてくれたり、仲間から「山の斜面を向いて、かかとから突き刺すように歩いて」とアドバイスを聞きつつ歩いていると、攻めは恐れを減らす最大の味方なんじゃないかなと思えてきた。ザク、ザクとアイゼンに感謝しつつ、下りは高尾山の階段だと思いこんで一歩づつ踏み出した。登りの上の斜面を見て一瞬(登れないかも・・)とすくんでしまったところからは少し前進できた。(それでも怖いのを紛らわせるために大声で「アイゼンありがとーーー!」「やればできる!!」と意味不明な叫びを上げ続けていた)

これは山の話だが、恐いって思うのはその対象そのものよりも、自分の妄想や見えている範囲が狭かったりすることが要因なんだな、てこと。イメージがリアルとかけ離れるほど、虚像に恐怖を抱く。でも、雪だって夏になれば完全に溶けるし、必要な装備を付けるんだから思い切って踏み出せば足跡がついて受け止めてくれる。結局、足をすくませてたのは自分の作り出すイメージ、想像だったってこと。

#登山 #日本100名山登頂 #雪山

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