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月のうさぎ

*想像******


月のウサギが、
そこら辺を歩いている。

杵を持って、
臼のところまで。

月に居場所がなくなったらしく、
うちに仮住まいを始めたみたいなのだ。



朝起きると、
ゴンゴンと
ウサギが杵をつく音がする。
臼が見つからなくて床を叩いている。

もう、しょうがないなあ…。

うちは臼を用意する。
ウサギは喜んでいる…ようにみえる。

ゴンゴンと臼を叩く。

ある日餅米を用意してやると、
はりきってペッタンペッタンとお餅をついた。
それはもう、
もっちりもっちり。おいしそうに。

美味しくお餅を仕上げるのがさも
使命であるかのように
一所懸命ついている。

返し手で手伝ったら尚、喜んだ。

ウサギが月にいたときは、返し手はいなかったのかな…
いたときもあったのかもな…

月のウサギの返し手のことを
想像した人がいたかもしれない。

そんなとき、

月のウサギには返し手のウサギやら、
返し手の人間のおばあちゃんやらが現われて、
お餅をラクに、楽しく、つくことが出来た。
かけ声なんか出ちゃったりして。

よっ。あいっ。ほっ。


月の映像がテレビで流れた後、

返し手どころか
月のウサギのことを想う人も
めっきりいなくなって、

ウサギは月に居場所がなくなった。

しかたなく、木の棒に小包ぶら提げて、
暗い道をトコトコ、トコトコ、
この山深い家までやってきたってわけ。

うちはあなたのこと、
想っていたからね。

誰もが忘れたとしても、うちだけは、
あなたが月にいたこと、
覚えているよ。

29歳,7.25,Mizuki


絵を描くのは楽しいですが、 やる気になるのは難しいです。 書くことも。 あなたが読んで、見てくださることが 背中を押してくれています。 いつもありがとう。