[番外編] 「東京ブギウギ」はここで生まれた(正確には着想がメモされた)というお店の話。

中央線を愛する皆様。西荻のフランス料理&洋菓子の老舗「こけし屋」が、歌謡史に残るお店であることをご存知でしょうか。僕がそのことを知ったのは、服部良一さんの自伝『ぼくの音楽人生 エピソ-ドでつづる和製ジャズ・ソング史』を読んでいた時のことでした。

「電車が西荻窪に停まるやいなや、ぼくはホ-ムへ飛び出した。浮かんだメロディ-を忘れないうちにメモしておきたい…」(223ペ-ジ)

そして服部先生が飛び込んだのがあの店だったのです。少し戻りますか、同じ223ペ-ジの前半にはこんな文章があります。

「レ-ルをきざむ電車の振動が並んだつり革の、ちょっとアフタ-・ビ-ト的な揺れにかぶさるように八拍のブギのリズムとなって感じられる。ツツ・ツツ・ツツ・ツツ……ソ、ラ、ド、ミ、レドラ……」

つり革の動きにリズム・パタ-ンを感じ、さらにメロディも浮かび始めたわけです。この服部先生の類い希なる感性! で、ここにブギの二文字があるので、みなさん「もしや…」とお思いになったのではないでしょうか。

そうなのです。この時、服部先生がお店のナプキンに書き留めたのが「東京ブギウギ」の曲のアイデアだったわけです(歌詞に関しては、このあと、面白いエピソ-ドがあるのですが…)。

「こけし屋」さんでフランス料理を食べる機会はぼくにはないのですか、この記述に触れて以来、つい西荻窪で電車が減速すると、つり革に目が行ってしまう僕なのでした。

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