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初冬の日の一日、ちいさな旅に出た。

そんなに遠くはない。
何度かその近くを訪ねているのに、なぜかまだ未訪問の土地だった。
 
行き先は、富士山麓の湧水のある忍野八海。
「海」といっても、八つの小さな湧水群である。
かつては大きな湖だったそうだ。
平安時代の噴火で流れ出た溶岩により、この湧水群は形成された。
 
清らかな川の流れをたどると茅葺の民家が現れ、小さくはあるが信じられないような透明感の湧水池に出た。
富士山の地下で育まれ、伏流水となって地上に現れた水は限りなく清く透明であった。
 
それまで曇っていた空が開け、富士が少しだけ顔を出した。
富士山には、どこで出会っても人の心を感動させる力がある。