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「豆松カフェ」訪問記 〜「引き寄せ」について考える〜

私は今、2歳の子供がいて神奈川県の大磯町というところに住んでいる。去年、「編集女子が”私らしく生きるため”のライティング作戦会議」というWebの有料サロンに参加することにした。独身で東京に住んでいた頃のように、「じゃあ、飲みにいきましょうか」と気楽に言えるわけでもないけど、出会いが欲しかった私は、「月額料金は、一回飲みに行く料金だと思えばいいじゃないか」と考え、参加を決めた。とは言え、幼児を抱えて働いている状況で、サロンの投稿を全て見れるわけでもなく、イベントやワークショップに参加できるわけでもなく半年以上の月日が経ってしまった。
 そして今回が初めてのワークショップ参加になる。「豆松カフェ」という本牧のカフェでランチを食べてから、Webメディア「灯台もと暮らし」の取材インタビューを実際に見て、後日、参加者それぞれも記事作成をするというもの。この文章がその記事なのだけれど、まさか、このような内容になるとは、参加を決めたときには考えていなかった。

「引き寄せの法則」というものがある。端的に言えば「願えば叶う」「人間は自分の思った通りの人になる」というものだと理解している。私自身は、至極もっともだと思いはするが、一方で、「その事を理解するのにわざわざセミナーに行ったり、本を読んだりする必要はあるの?」と考えている割と一般的な人物であると思う。そんな私の頭の中が、「豆松カフェ」の店主渡辺妙子さんのインタビューを聞きながら、「引き寄せてるね〜!」という言葉で一杯になってしまった。なので、参加前は「食レポってやった事ないな〜面白そう」と考えていた内容を方向転換して、引き寄せる人:渡辺さんの引き寄せ術について考えてみたいと思う。

渡辺さんの引き寄せ術①:準備をしすぎず、まず始めてみる事


 何かを始めたいとき、人はどういう行動を取るだろうか?その事に関するHow to本を買って、専門学校に行って、開業するための資金集めで働いて…。そうこうしているうちに「本当に向いているのだろうか?」という迷いが生じて、気がついたら始める前に熱が冷めてしまう。そんな人も多いのではないだろうか?
 渡辺さんの前職は環境アセスメント、大規模開発事業等による環境への影響を事前に調査する調査会社に勤めていたという。大学の専攻は美学。料理とは全く関係のない世界である。お父様が料理人だったため食に対する興味が強かった事と、両親が働いていたため中学生の頃から夕食を作る機会があった事が料理との繋がりだった。
 そんな渡辺さんが最初に始めた飲食店は月一回のレンタルカフェ。会社員勤めをしながらのスタートだった。
 そのきっかけは、盆栽が趣味の渡辺さんと若い女性盆栽職人山崎ちえさんの出会い。「盆栽を見ながら呑んでみたい」などと話しているうちに、一緒にコラボしようという話になった。女性起業相談に行った所、大倉山のレンタルカフェ「夢うさぎ」を紹介され、土間で盆栽教室、リビングで和食ランチを提供するスタイルの月一回のコラボカフェ「豆松カフェ」をスタートする。豆松カフェの名前の由来は山崎さんの屋号「豆松屋」からとったという。

 渡辺さんはいきなり大きな場所を目指していない。もし、月一回のレンタルカフェを飛ばして、いきなり「さあ、カフェを始めるぞ!」と不動産会社に行ったら店舗契約の敷金礼金の多さに驚き、お金を貯めているうちにレンタルカフェを営業しているのと同じ歳月なんて簡単に経ってしまっていたかもしれない。やりたいと思った事を大切にし、すぐに叶う方法でやってみる事が出来る人なんだと感じた。
 月一回の「豆松カフェ」を2年間続けてきた渡辺さんは、会社員勤めを辞めようと思った事、盆栽園が必要だと思った事、レンタルカフェで出会った人たちの作品を置く場が欲しいと思った事、そういった理由から、拠点になる場所を探し始める。
 そして、やはり渡辺さんらしい方法で現在の「豆松カフェ」に出会う。「拠点になる場所は古民家がいいよね」という話になった渡辺さんと山崎さん、しかし、どうすれば古民家が見つかるかは全く見当もつかない。そこで、山崎さんが建築家のイベントに出店するとき、「古民家探しています!」というチラシを作って配る事にした。そこに声をかけてきてくれたのが古民家再生のNPO法人のスタッフだった。そして紹介されたのが本牧にある古民家だったのだ。

渡辺さんの引き寄せ術②:あるものを最大限利用する事

 「豆松カフェ」を現在の古民家で始めるにあたって相応しいメニューを考えた渡辺さんは、板前だったお父様に協力してもらってランチ2000円、ディナー3000円〜の和食膳にした。もともと渡辺さん自身は、よく洋食を作っていたものの、料理の修業をしていない人がそれを提供するのは抵抗があったため、和食のプロであるお父様に協力してもらえば修業しつつプロの味を提供できるという思いがあったからだ。その内容は、ひなまつりのシーズンの今回は梅の花もあしらわれ、カフェという名前からは想像できない繊細さと味だった。
 そして、通りがかりで入る人はいない立地だからカフェメニュー以外の料理は予約制にした。
メニューも予約方法も、周りにいる人(お父様)や条件(立地)などから、できる事、ふさわしい方法を臨機応変に考えて提供している。
インタビューの中で「こだわりの食材はコストに見合わないですよね」と言われ、「そこまでのこだわりはないです」ときっぱりと答えていた事が印象的だった。あるものは「旬のもの」と考えて普通に市場から仕入れている。ただ、マルシェで出店していた農家さんと繋がりができて仕入れるようになったり、新潟から「さといも」や戸塚区から「たけのこ」を人の繋がりから購入する事になり、結果、こだわりの食材増えているという。
 そして今のお店の一番の目的は「このウチ(古民家)を見てもらいたい」という事だという。もともと美術史の勉強をしてきた渡辺さんは歴史や古いものに対する愛情がある。けれど、きっと「古いものを大切にしなければいけないから古民家でないといけない」というような発想で現在のお店を始めたわけではなく、その建物を前にして湧き上がった感情を大切に、それに寄り添うようにお店の方針を考えているようにみえる。
 ひととの出会いからお店を始めた渡辺さんは、やはり目の前にある人や環境、もので叶う事を実現させている。引き寄せる人とは来たチャンスを自分の持っているモノ(人材や能力)で上手く活用できる人なのかもしれない。


渡辺さんの引き寄せ術③:望みは具体的に言う事

 今年の10月で閉店が決まっている「豆松カフェ」。次は自然保護活動を紹介できるお店をやってみたいと思っているという。「なるべくお客様のいる本牧でお店を始めるのが第一だと思っていますが、最近、大磯が面白いと思っています」。そう、大磯はまさに私の住んでいる町である。「大磯」と聞いた時点で、私の頭の中は渡辺さんに会わせたい人や連れて行って行きたい場所で一杯になった。「よし、渡辺さんに大磯を案内するぞ」と決心した。

 発言をした時点で渡辺さんはまだ大磯町に来た事はない。私だったら、なんとなく大磯町のイメージがあっても「本牧もいいですけど、湘南で自然の多いような場所もいいかなあと思っているんですよね」というような言い方をしそうな気がする。もしも、行ってみて、思った通りでなかったらどうしようなど考えてしまう為だ。
 けれど、今回の出会いで、行きたい場所、会いたい人の固有名、望みは具体的に伝えた方が良いと思った。もし、渡辺さんが「大磯」と言わなかったら、私はここまで動かなかっただろうと思う。「湘南って言っても結局鎌倉とかそういうイメージなのかな」と勝手に解釈してスルーした可能性も高い。
 現在の「豆松カフェ」もパートナーの山崎さんがチラシを書いて配ったことがきっかけで古民家で開くことができた。流れに任せているようで、実は望みをはっきりと伝えて実現させているのだ。

後日談〜引き寄せられてみた〜

 後日、私は本当に大磯町に渡辺さんを招待した。あいにくの雨だったが、会わせたい人達にも声をかけ、お話をしてもらう事にした。
 NPO団体主催者の方を紹介したところ、渡辺さんが大磯に興味をもつきっかけとなった新聞記事の内容の「大磯農園」や「こたつみかんエール」というビールをプロデュースしていた人達だと判明した。その上、娘がお世話になっている保育園の施設長さんは、以前、渡辺さんが働いていた横浜の会社の隣の保育園で働いていたという。同僚がその保育園に預けていたとの事で、共通の知人の話でも盛り上がっていた。
 会話の3割くらい、野生動物の解体場についての話題というディープな人々…。大磯に新生「豆松カフェ」ができると面白いと思わせてくれた。
 「引き寄せ」に巻き込まれてみた気持ちは「ワクワク」だった。自分のやりたい事を生き生きと話せる人の役にたてる事は、少しも手間ではなく楽しい経験なのだと判った。
 Webのサロンメンバーになる事やそのワークショップに参加する事は、私の中で未知の体験で、はじめる前はドキドキしていた。でも、思いがけない出会いや経験、またそれを書く事で、自分自身まで変わる事ができそうに思えた。

 会いたい人や行きたい場所、やりたい事はいつも言う事にしよう。
 夢は少しづつ叶えよう。今の自分にぴったりの叶え方がきっとあるはずだ。