「ストーリー漫画でわかるビジネスツールとしての知的財産」専門家向け解説

【専門家向け】
「もしかしてこれは間違い?」と思われたかもしれない箇所の解説です!!
オチ解説(オチですので、まだ最後まで読んでいない方は閲覧ご注意)







「同じ発明」「同じ出願日」と言っているのに、 なぜ特許法39条2項の協議命令が来ずに登録されたのか?

【セリフ】
P240
グーゴル(英国)社内
社員A「KIBOU社が同じ発明を特許出願していた!」
社員B「俺達の出願日と同じ」
社員C「俺達日付変わってすぐ出したよな!」
社員D「ということはたった数分差で負けたのか!」

【解説】
グーゴル(社員は「英国」にいます)の現地の日付から見れば「同日」に見えますが、 日本国特許庁から見ると、グーゴルの出願は湯川の出願の「翌日」になります。 従って、通常の先願主義(39条2項ではなく1項)の事案となると考えております。
補足:グーゴルの社員A-Dが見ているのは特許公報ではなく社内資料(英国時間)のようなイメージです。
社員Bは英国時間、社員Cは日本時間についての発言のつもりです(時差9時間cf.サマータイムは8時間)。

【図】

【物語の意図】
知財を専門としない一般のビジネスパーソンへ、「とにかく早く出願しなければならない」、 つまり知財(ここでは特許)は「早い者勝ち」、というメッセージを伝えたいと考えました。

「数分を争う出願」という劇的な瞬間を演出するにどうするか大変悩みました。 別発明や別出願日に逃げる手もありましたが、 それでは物語として面白味に欠けると思いました。
 異なる出願人が「数分を争う出願」というと日本では特許法の先後願(39条)が関係してきますが、39条では時分は問われず、同日出願であれば協議(39条2項)、異なる出願日である場合は先願優位(39条1項)となります。
従って日付が切り替わる前後の出願という流れにする必要があり、そこで、時差も利用して日付が切り替わる数分差を演出しました。具体的には図に示すような状況を想定しました。

 このような法律としてはかなり細かい話となる協議命令やその他諸々の法律説明をこの場面に入れてしまうと、物語の勢いを削ぎ、また「法律知識」は最小限に限定する、という本書の入門書的な狙いにも反してしまいます。

 そのため、説明を省きましたが、専門家の方が見れば、通常は39条2項を想起されると思いますし、一般のビジネスパーソンに誤解を招くのでは?というようなご批判は甘んじて受けたいと思いますが、分単位でも早い方がベター(他社の公表による新規性喪失は分単位で問題になりうる等)な事実に変わりはないので、ご容赦頂ければと思っております。

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