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坂本龍一43歳。浅田彰との対談にて

坂本龍一は95年に浅田彰とグレン・グールドを巡る雑談のような対談を残している。

話が最終盤にきたところで、浅田が武満徹の名を出して「美しい日本の私」への回帰を批判的に語り、坂本は磯崎新の名を出してがんばっていると評価する。

浅田は市場に晒されていることを理由にあげて、晒されることにより創り手が保持せずにはいられない「強さ」に触れる。更にファッションにまで踏み込んで川久保玲を山本耀司との対比で評価する。
そこからまた更に、ヴィム・ヴェンダースが撮影した山本耀司に関する映画をクソミソに貶す。

ヴェンダースと仲の良い坂本は、友達だから悪口は言えないとごにょごにょと濁す。
そこはさすがに浅田も坂本に合わせて、ドイツの愛すべき田舎者だから山本耀司を評価するのはわかると合わせる。

しかし、創り手は市場(マーケット)に晒されるのみならず、批評(クリティック)にも晒されなきゃいけないとまだ粘る。

こうした対談を幾つも残している二人ならではの、阿吽の呼吸で話が進む感じ(何度読んでも飽きないほど面白い)が少しでも伝わればと、留置所から拘置所や刑務所までずっと手元に置いて繰り返し読んだ、グレン・グールドの『ゴルドベルク』遺作録音30年を期して世に出されたムックを引っ張りだして、我ながら下手だと思うが正確さには気をつけながら書いてみた次第です。

坂本龍一43歳。
まだまだ意気軒昂な頃のことではあるが、浅田彰は追悼のコメント動画で彼は「美しい日本の私」には回収されなかったと断言する。
坂本の晩年(と言ってもいいだろう)に始まった「もの派」との交流を踏まえながら。
それをこんなマイナーなメディアでやっているというのが興味深い。
分割して公開された動画になっていますので、その点ご注意のほどを。

坂本龍一の90年代から311を経て死去するまでのあれこれを思い返し、彼の死去以来幾度となく繰り返して感じたり考えたりしたことをまた新たに始めながら、YouTubeが推してきた動画を見ていたわけです。

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