風を見ていた

そのとき、私のからだはいくつもの場処で目覚めた。
緑の葉が、目の前で5月の予感に揺れていた。
静けさが、私の足下を固く踏みしめていくのがわかった。
夢の中に、聞いておくべき有り難い話の数々を置き去りにしてしまったことに気づいた。
それは、大事な約束のようなものだったのかもしれなかった。
でも、私は何も対処せずにゆるやかなあくびをひとつした。
くちの中の空気と一緒に、すべて逃がしてあげたかった。

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