汐路と朝晴(ネタバレあり)

この2人のことを考えるととても面白い。
自分だけの解釈なので、正しくない部分もあると思う。朝晴に関しては思ったより登場時間も台詞も短かったのに、物凄く考えてしまい、後をひくものがある。
推しフィルター強めだけど。

汐路。パキパキしていて健やかそうなのに、まだとても子供っぽくて、一度思い込んだら無垢ゆえに引っ張られていってしまいそうな危うさがあった。視野がまだ狭いというか。素直で信じたものを疑わない。でも疑い出したら全てを怖がってしまうようなバランスの取れなさ。
「うちは遺産相続の度に殺し合いが起きるの」それが本当に殺し合いなのかどうか分からないのに、暗示をかけられるかのように、それを信じて、今回もそれが現実になってしまう方向に自ら進んでいく感じに見えた。原菜乃華さんはその危なっかしいまでの素直さを見事に表現していた。
汐路はきっと朝ちゃんのことでまた深く傷ついたと思う。終盤に整君は汐路にカウンセリングの話をする。甘ったるい言葉じゃなく、これから汐路がより生きやすいように現実的な助言をしてくれたのが、とてもよかった。

朝晴。この物語で1番悲しい人だと思った。
それは松下洸平さんが演じたからなのかな。遺産相続候補の4人の孫たちは、一族の忌まわしい秘密を今まで知らなかった。でも朝晴は知っていた。
きっと幼い頃からそうしなければいけないんだよ、これまで代々やってきたんだから、そうするのが一族にとって正しいのだよ、と言い聞かせられて育った青年なのかもしれない。一族と結びつきの強い弁護士の家に生まれて、子供の頃から背負わされた宿命みたいなもの。選択も余地もなく、もう何も疑問も抱かないし、逃げることもしない。
「子供って乾く前のセメントみたいなんです」
この整君の言葉がやっぱり印象的で、サチちゃんや汐路にも向けられるし、これは朝晴に向けられると、いたたまれない気持ちになる。
ぐちゃぐちゃに荒らされたセメントが、誰に気づかれるわけでもなく、固まって大人になってしまった。いびつになっていることに本人も気づいていないのかもしれない。
朝晴が警察に取り押さえられた時、暴れる様子もなかったし、僕じゃないと否定もしなかったと思う。そういう激しい反応じゃなく、USBメモリーのことを口にしたことに、私はびっくりした。
あくまで自分の役割をやってるだけだよ?と。
その時の朝晴の目はただの真っ黒い玉のようで、光が無くて怖かった。
非難されても言い返すこともせず、なんで非難されてるかも最後まで分かっていないように思えた。
ある種の洗脳状態にずっとあるみたいに思えた。
狩集家の4人と朝晴は、家は違うが、乗っ取った鬼の子孫という点では同じなのに、狩る側と狩られる側になってしまった。きっと凄く孤独だったような気がする。だけど、孤独に悩むことも無いぐらいに、そういうものだと思っていたんじゃないか。
整君が汐路に
「大きな方を分けてくれる人が必ずしも良い人とは限らないんですよ」と言った。
そうなんだけど、朝晴は実際優しい人なんだと思う。そこに嘘はないと思う。汐路が初恋をしたのも事実。
みんなにとってもきっと信用できて優しい青年だった。
個人的に強い恨みがあって殺すわけじゃない、その時がきたらそれが当たり前に自分の役割なんだと。
松下洸平さん演じる朝晴を見て、そんな人物像だと感じた。

最後、朝晴は、汐ちゃんが言ったからだよ?
汐ちゃんがあんな嘘をつくなんて…と言っていた。
他の誰かに自分のことを分かってほしい!と喋ることはしなかったけど、汐路にだけは執着をしているように思えたし、泣いている汐ちゃんにだけ真っ黒な目を向けて、喋っていたように見えた。
汐路は自分の事をずっと慕ってくれて、とても無垢。
もしかしたら、汐路はいつかこっち側にきてくれるのかもしれないと、朝晴は淡い期待を持って、仲間意識を初めて持った人物だったのかもしれない。

松下さんが殺人を犯す役はこれまでいくつかあった。無痛の時のような快楽を覚えるサイコパス。MIU404の加賀見のように衝動的に殺めてしまった人。
朝晴はどちらとも違って、そうすることが役割だと植え付けられて罪を犯す人に思えた。
朝晴は自分語りをしなかったし、子供時代のエピソードが挟まれることもなかった。ないからこそ、見た人それぞれが朝晴の背景を考えることができるのかもしれないし、もしかしたらここがこの広島編で一番大事なことだったのかな。

初恋の人であるという説得力。と、終盤の朝晴の表情と優しい口調。多くない台詞の中で、彼の語られない人生を見せることができる松下洸平さん。すごく信頼されているんだなと思った。
悲しい人がとても似合うと改めて思った。優しいのに瞳に光が無くて、話が通じない恐ろしい孤独な鬼の子孫の役で、今回また新たな扉を叩いたんじゃないか?!とオタクは嬉しくなってしまった。
また惚れなおしました。

と、結局推し万歳!!と言う感想になってしまうのでした。
(なんじゃそりゃ…)
長々と失礼しました。

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