保育業界を憂う

自分が保育業界に入ったのは10年前。勤めていた会社(福祉とは全く無関係の会社)が別法人を作り保育に参入したのがきっかけだ。何故その法人は保育に参入したのか、それは儲かりそうだから、に他ならない。

そこで自分は初めて保育士さんと仕事をし、預けにくる親御様とも関わり、と同時に保育園経営を間近で見た。

現場は本当に毎日大変だった。しかし経営陣は人件費がかかり過ぎていると人件費カットを要求してくる。

約3年、経営陣と現場の間に入り保育事業ということについて色々と考えさせられた。そこで自分なりの答えが出た。

保育園は赤字では続けられない。しかし保育士が良い環境で保育をしてくれなければ子どもと預けている親御様に失礼だ、と。保育士の配置基準を守り、安全・衛生面に配慮している、いわゆる『安心・安全』を担保さえしていれば良いのか?いや違う。それは当たり前のことで、これを当たり前とした上でどう保育をするかが大事なのだろう、という考えに辿り着いた。

そこで人件費カットを要求してくる経営陣と腹を割って話してみたところ、とにかく出来るだけ利益を出すためにコストを抑えたい、人件費の安い新卒を採用したいなどなど、とにかく『お金』しか頭にない人たちだと改めて再認識し、自分はその会社を退職して独立した。

独立したくて独立したわけではない。その会社でお金儲けのために働かされるのに嫌気がさして独立した形だ。だから何をやるのかも未知のまま起業した形だった。

当時は女房子どももいたので、生きるために仕事をしなければならない。格好ばかり付けていられないのも事実だった。独立して何をして稼ぐか、とにかくできることをするしかなかった。

その時世の中に企業主導型保育が誕生する。通常は保育事業の経験がないと助成金が貰える保育事業には参入できないものなのだが、企業主導型保育は、ほぼ誰でも参入できた。しかも当初は申請したら許可が得られる緩さだった(今は審査があり不採択になることもある)。

これなら自分も保育園が持てるかも、といつか自分の保育園を立ち上げることを目標にしながら、しばらくは保育開園のコンサルティングで凌いだ。

しかしそれは結構苦痛だった。やはりお金儲けが好きな人たちがコンサルティングの相談に来る。なるべく保育の大切さや責任の重さを唱えながらコンサルティングを引き受けてきたが、それでも1つ保育園を立ち上げると、もう1つもう1つと保育園を増やしたがる人ばかりだった。

それでも生きるためにこの人たちを相手に仕事をするしかなかった。

コンサルティングをしながら自分の保育園立ち上げを検討していく中で、3年前に自分の保育園を立ち上げることができた。やはり企業主導型保育だ。

それと同時に開園支援のコンサルティングは辞めた。やはり金儲けばかりに目がいっている人たちの助けはしたくなかったからだ。

保育をビジネスと捉えることを悪いとは言わない。しかし保育とは何かを経営陣にも考えてもらい学んでもらいたい。

そこで働く保育士、そこに通う園児、そこにお子さまを預ける親御様、そして経営者。この4者がwin-win-win-winにならないといけない。

だから働く保育士が疲弊するような保育園はあってはならない。もちろん園児虐待何てのはもっての外。

世の中には何百も保育園を経営している企業がある。そこに本当に保育に対する思いはあるのだろうか?

良い保育園とは何だろう?

行政も実績のある事業者に許認可を出すのは簡単だろう。しかしそれが本当に保育の質を高めるのだろうか?真面目に保育をしたいと願う人たちは、資金面やノウハウで自分の保育園を持ちたくても持たないでいる。本当はそう言う人たちに助成金を使うべきではないか?

決して沢山の保育園を経営している企業が悪いと言うつもりはない。でも経営側にも上辺だけでなく保育とは何なのかを考えてもらいたい。



自分は保育業界に入って10年。だけど保育についてはど素人だ。保育士資格もない。やはり自分の視点は経営者寄りなんだと思う。だから沢山の保育士さんの話を見聞きしたいと思う。


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