自分には霊感はない（と思う）

だけど、まだ20代のサラリーマン時代にゾッとする体験をしたので書きたいと思います。

当時、会社の社員寮に住んでいたんですが、この社員寮が当時築50年で元々は1階が飲み屋さんで2階が連れ込み宿だった建物。
この2階の連れ込み宿部分だったところを、独身社員に住まわせていた会社でした。

この社員寮。
元連れ込み宿だったこともあって、当時は部屋の中で心中や自殺もあった曰く付きの建物で、私の住んでいた部屋も嘘か本当か女中さんが首を吊って自殺した部屋だと、よく寮に住む先輩から驚かされていまして、近所に住む子どもたちからも「幽霊屋敷」と栄誉ある称号を頂いてました（笑）

そんな幽霊屋敷で22歳から7年間、この社員寮に住み続けていたのですが、霊感の無い自分ですら、何度かおかしい体験をしました。

この寮は共同玄関、共同台所、共同トイレ、共同風呂。6畳一間の部屋以外は全て共同で、玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えて自分の部屋に行く建物の作りです。

共同トイレは玄関のすぐ隣りにあるんですが、ある日、自分だけが平日休みで寮に誰もいない時、トイレで大きいのを踏ん張っていたら、玄関がガラガラと開く音が聞こえ、奥にある共同台所にバタバタと走っていく音が聞こえました。
社員の誰かが忘れ物でも取りに来たのかなと思いつつ、トイレから出たんですが、どこにも誰もいませんでした。

他にも隣は空き部屋なのに、壁を夜中にコンコン叩く音が聞こえるとか、霊感のある単身赴任中の社員の奥さんが遊びに来た時は、あまりの霊圧に寮に入れなかったとか・・・細かい（？）問題は色々とありました。
ただ、私は霊感無いんで、ほとんど気にもせず住んでいたんですが、ここからが一番、恐ろしい体験をした話です。

この社員寮ですが隣は建設会社の社長さんの一軒家で、寮とこの家は、けっこう距離が無く、くっつきあって建っているような状態。
なので、私の部屋は隣の家に面しているので、窓から隣の家の2階の窓が丸見えという状態でした。

夏になると、寮内の気温は風通しがないので35℃以上に上がり、窓を開けっ放しにしてないと部屋にはいられなくなります。
窓を開けっ放しにするので、当然、隣の家の窓は丸見え。向こうの家の中まで丸見えで、私の部屋も向こうからは丸見え。
時たま、隣の奥さんが窓のところを通る度に、こっちを見ながら通っていくので、たぶん、ゴミを見るような目で見てたんだろうなと思ってました（笑）

話は変わって、ある日のこと。
確か、年始の仕事始めのとき、初めて隣の家にお邪魔することがありました。
毎年、社員寮の隣の家ということで、上司が年始の挨拶に行っていたんですが、私も初めて一緒に行ったんですよね。玄関先での挨拶だったんですが、玄関は吹き抜けになっていて、吹き抜けの2階部分に窓。
なるほど、位置的にあの窓が自分の部屋と隣り合ってるのかと、このとき思いました。

それからしばらくして、また暑い夏が来ました。
部屋の中でテレビを見つつ、ふと、開けっ放しの窓を見ていたんですが、一気に背中がゾッとしました。

吹き抜けの上の窓なのに、なんで窓の向こうを奥さんが歩いていたんだ？

吹き抜けだから当然、窓の下に廊下なんてありません。

人なんか歩けるわけないんです。

というか、奥さんだと思ってましたが、奥さんとは面識無く、ただ女性が歩いていたから奥さんだと思っていただけ。

あれは、何だったんだ？

それに気づいた瞬間、恐ろしくなって暑さも忘れて窓を閉めました。

それから間もなくして、私は寮を出ました。
さすがに、こんなところに住んでたら何かに取り憑かれて恐ろしい目に合うんじゃないかと思い。

話はこれで終わり・・・というわけには行きませんでした。

この社員寮は、1階の飲み屋だった部分を改造して会社の店舗にしていたので、寮を出たと言ってもこの建物には終始行かなくてはなりません。

よく、寮の前では隣の家の子供が道路にチョークで絵を書いて遊んでいたりして、私もよく、あ！お兄ちゃんだ！と、いきなり浣腸されたり、幽霊屋敷に住んでるけどお金無いの？と、遊ばれて（虐められて）いたんですが（笑）
寮を出てからしばらくして、この子と道路で会って「お兄ちゃん！もうここに住んでないの？窓見てもいないんだも」と言われました。
私の部屋と面している隣の家の窓ですが、窓の吹き抜けの向こうには2階の各部屋へのドアが見えており、おそらくそこが子供部屋。
分かりにくいと思うので、下手くそな図ですが書いてみました。

寸法とか適当ですので、だいたいの2階の位置関係です。

子どもたちは廊下から、吹き抜けの向こうにある窓から、私の部屋を見ていたようです。

「そうだよ、もう引っ越して、いないんだよ」と言うと

「女の人も一緒に引っ越したの？」

「え？女の人？女の人なんていないよ」

「お兄ちゃんの部屋、女の人も一緒にいたよ！一緒に住んでたんだよね！」

男の独身寮。私の部屋には女の人がいたことは一度もありません。

どうも私は、この世のものではない者と、住んでいたようです。

その1年後。この寮は火災で2階部分が全焼しました。