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20231103

 11月3日、文化の日、であると同時に今年はレコードの日でもある。ここ数年、毎年11月3日はレコードの日なのかと調べてみると、日本レコード協会が1957年(昭和32)に「レコードは文化財」という考えから11月3日に制定されていたらしい。
 レコード‧ストア‧デーはレコード屋さんの行事という気がするけれど、レコードの日は少し幅が広い様な気がして、レコード全般を楽しむ様な行事だろうか。
 何にしても、レコードを楽しむ事やレコード屋さんに赴くのが楽しいので、レコードに関する日は嬉しい。
 そんな日に、ソウルフラワー中川さんのライブ「ニューアルバム発売記念ツアー2023<大阪‧秋篇>が拝見出来るのは、輪を掛けて嬉しい。更に嬉しいのがレコード盤でのリリースとなる「ウインズ‧フェアグランド」が会場で先行リリースされるという話も飛び込んで来た。

諸般の諸々からの帰り道。空は青い。

 諸般の諸々を経て、帰宅する途中に自宅の近所の曲がり角から宅配便のトラックが出てくるのを見て、自宅に頼んでおいたレコードが届いたのを察知。帰宅すると届いていたのでひと安心。そんなレコードの日。レコードも宅配便で届くのが当たり前と思える時代になった様にも思えて、便利ではあると思うけれど、一抹の寂しさがある。

 はじめてのお使いかどうかは忘れてしまったけれど、幼い頃、幼稚園に通っていた頃か、小学校に通い始めた頃だったか。各駅停車しか停まらない駅前の商店街にもレコード屋さんがあって、そこに自分の分と妹の分のシングル盤(7インチ盤)を買いに行って、行ったのは良かったのだけれど、持たせて貰ったお金が、シングル盤の値上げで一枚しか買えなかった記憶がある。
 確か、妹の分だけ買って、自分の欲しいと思っていたピンクレディーのシングル盤は買えずで帰った様に覚えているのだけれど、その後その後の記憶は一枚だけシングル盤を持って、商店街の坂道を下った所で終わっていて、その後、どうなったのかは覚えておらず。
 因みにその時に買ったレコードは「シートン動物記 くまの子ジャッキー」の主題歌だったと思う。
 初めてレコード屋さんに行った記憶。どうしてそんな事を覚えているのかは分からないけれど、「シートン動物記 くまの子ジャッキー」の7インチ盤は傷だらけになって、反りも激しく、ジャケットも内袋も無くなってしまって、裸で保管されているのだけれど、手元にあるので、記憶も満更では無いと思う。

テレビ漫画「シートン動物記 くまの子ジャッキー」

 初めてのレコード屋さん。ひょっとして誰かに連れて行って貰って、とも考えるけれど、ならば一枚だけ買ってという風にはならないだろうとも。
 自宅に何枚かある「くまの子 ジャッキー」と同じ様な状態で保存されているシングル盤の中にピンクレディーのシングル盤がある事を見てみると、後日、買って貰ったのだろう。
 レコードの日に、レコードに関わる一番古い記憶。ひょっとすると、今までの人生の中で覚えている一番古い記憶なのかも知れない。
 レコードがCDに取って変わろうとしている頃に、レコードを手にする事はもう無いのだろうか、とも何とも思わず、新しいCDというメディアに飛びついて、そこから暫くはCDで音楽を楽しんだ。
 やがてCDもサブスプリクションや配信に取って変わってしまって、これから先、音楽はどうやって楽しめば良いのだろうかと、CDを買おうと思うと、隣町の大きなデパートに足を運ばなければならなくなってしまったし、何よりもレコード屋さんに設置された、試聴機での新しい音楽と出会う事も無くなってしまった。
 何やらサブスプリクションには、そんな音楽が好きなら、こんな音楽はどうだとお勧めしてくれる機能があるらしいのだけれど、不意に飛び込んでくる何かが無さそうな気もする。
 レコードに関して、色々と考えている間に、レンタルレコードにお世話になって居た時はカセットテープに録音して、とか、CDになってから、暫くしてからMDへと録音する媒体が変わったなとか、記憶から溢れ出して、書ききれなくなる。
 レコードの日に色々と考えている間、体力の温存をしていると、いつの間にか家を出発する時間となってしまった。
 レコードの日なので、一軒か二軒、レコード屋さんに立ち寄れれば良いかなと思っていた時間も毎度の如く無くなってしまいそう、というか、家を出発する時点で無くなってしまっていた。
 仕方あるまい。
 開場時間が17:00で開演時間が18:00。自宅を出発したのが16:00。自転車を漕いで駐輪場、から駅まで徒歩。そうして駅に到着すると、目の前で電車が出発して去って行った。もう少し早く家を出発していたらと、生まれてきて何度思ったのだろうか。また、その回数が一回増えた。
 こんな風に使いたくはなかったけれど、地図アプリで現在地からムジカジャポニカまで所要時間を調べてみると、開場時間の8分前に到着するとの事で、いつだったかの様に阪急東通り商店街の中を走らずには済みそうだと胸を撫で下ろした。

 目の前を乗る筈だった特急列車が通過して虚しい気持ちとなる。

 暫く待って、やって来た各駅停車に乗って、特急列車に乗換える駅まで行って、各駅停車は先に出発して、待っている間、もどかしい気持ちとなって、やっとやって来た特急列車に乗って揺られて、十三駅から淀川を渡って梅田駅。

淀川を渡る。

 到着したのは開場の15分前。流石地図アプリと思いながら、大阪梅田駅の3階の改札から出て、長いエスカレーターは使わず階段で降りて、JRの高架下をくぐって横断歩道を渡って、ナビオ阪急と阪急ファイブの間の狭い道を新御堂まで。ディスクユニオンに立寄るなんて考えていた事も忘れてしまって、そこから適当な感じでムジカジャポニカまで。阪急東通りの端の方にある佇まいが何とも。と伺う度に思う。

ムジカジャポニカ

 狭い階段を登って、お店の前に到着すると、開場まで少し時間がある様子で、流石地図アプリと感心もするけれど、何か足り過ぎている物足りなさの様なものも感じた。
 程なくして開場の時間を迎えて、インターネットで買ったチケットをスマートフォンに表示させて入場。
 拝見し易い場所に腰を掛けて、ビールを頼んで、その後もビール。何杯か嗜んでハイボールへと。嗜んでいる間に開演時間を迎えた。
 出囃子はTHE BANDの「オールド.ディキシー‧ダウン」で中川さんがステージに。
 ギターのチューニングが終わって、一曲目は「バルカンルートの星屑」が始まると遠い国の夜に思いを馳せながら拝聴。二曲目「戦火のかなた」から「ビッグ‧アップル」と続く。X(旧ツイッター)のタイムラインに流れてるくる、直視出来ない様な、残酷な写真が忘れられずに頭に浮かんで、それが住んでいる世界と繋がっている事を忘れてはいけないと思いながら拝聴する。
 MCを挟んで、出囃子でも流れていたTHE BANDのカバー「オールド‧ディキシー‧ダウン」いつ拝聴しても、日本語訳が秀逸だなと。
 先日、この曲が収められたTHE BANDの二枚目のアルバムを中古盤屋さんで発見したのだけれど、少し高めの値段が付いていたので、手にいれるのを躊躇ってしまった。レコードの日にそんな事を思い出す。
 そしてアルバム「カンテ‧ディアスポラ」から「パレスチナ」「栄光は少年を知らない」と続いて、やはり、頭の中にX(旧ツイッター)の投稿が頭に浮かんでは消える。それが住んでいる世界なのだとも思う。
 それから新しいカバー曲、バンド名が明快なキンクスの「ウォータールー‧サンセット」。陽の長さも短くなりつつあって、何も無い日の夕暮れ時の歌が何とも身に沁みた。何も無い日に夕暮れを堪能したくなって一部が終わって、換気タイム。

 煙草を嗜みにドアの向こうに出てみたり、ハイボールを頼んでみたり。

 から二部は自分より少し若い世代のトラウマ‧ソング「青天井のクラウン」から曲が始まる前のMCでギリヤーク尼ヶ崎さんの話が印象的だった。そして傷痍軍人の事を歌った伊丹さんが8割方詩を書いたという「太陽に灼かれて」が演奏される。幼い頃に母親に連れられて歩いた阪神百貨店の前の歩道橋の光景が頭に浮かんだ。
 L.P.盤がリリースになる「ウィンズフェアーグラウンド」からの曲が続いて「忘れられた男」。さっきから戦争や紛争が自分の暮らしと地続きであるという事を強く意識させてくれる気がしている。
 更に続いて「イデアのアンブレラ」ギターの音を堪能しながら。梅雨の時にジメっとする気分を吹き飛ばしたい時に聴いくと、スッキリさせてくれる。
 そしてリクオさんのイベントTAKUTAKU HOBO CONNECTION、第三夜の記憶も新しい、七尾旅人さんのカバー「高江の歌」で気持ちは、沖縄県は東村高江に。
 そして中川さんのニューアルバム「夜汽車を貫通するメロディヤ」に収められた「生きる」から「満月の夕」で第二部を終えて換気タイム。

 またもやハイボールなど頂いて、かなり良い塩梅となって。

 そして第三部。待ってましたの新曲から「千の丘の足跡」メロディーラインとサビの部分にグッと来るものがあった。
 カムイ‧イピリマが発売になって30年との事がMCで。キューンソニーの短冊CDのオマケのプロモーションで付いていたCDに「世界市民はすべての旗を降ろす」が収められていた事も思い出しながら拝聴したのは「霊柩車の窓から」に続いて「石畳の下には砂浜がある」から「生命の落書きで壁を包囲しよう」畳み掛け具合に何度もグッと来るものがあって、大団円で第三部が終わった。少し物足りない気がして、求めるのはアンコール。

来年の干支は辰。

 程なくして中川さんがステージに登場する事ふたたび。
 アンコールには、レコードの日の今日に手に入れいる事ができるLP「ウィンズフェアーグラウンド」から「ホライズン‧マーチ」。そして、この曲を拝聴するといつも旅に出たくなる「地下鉄道の少年」何故だか、山陽路の深い夜を思い出す「ピープル‧ゲット‧レディ」で大団円。

 いつも楽しい夜をありがとうございます。また伺います。

 その後、何故だか滅茶苦茶緊張しました。

楽しい夜をありがとうございました。

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