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20240316

 諸般の諸々を経て帰宅。今日は体力の温存などをしている遑は有らず。身形を整えて自宅を出発したのは、お昼ももうすぐという11:00前。自転車を漕いで、駅近くの駐輪場まで。向かう途中の団地の入口の植え込みに、白木蓮が空に向かって咲き誇っていたので、写真に収めて先を急いだ。
 いつも利用している駐輪場に自転車を停めて、そこから、少し遠いJRの駅まで歩く。春はもう直ぐという空気の気配。

 東京は渋谷まで「闇鍋音楽祭」を拝見に向かう。

 この日の一週間位前から、どんな行程で向かえば良いのかという事を思案して、思案すればする程、色々な行程が頭に浮かんでは消えて、なかなか纏まらず。
 考えに考え抜いた結果、時間と料金の事を考えると新幹線を利用するのが良さそうだと、2日程前に新幹線で向かう事に決めた。
 インターネットを経由して指定席を予約すると「のぞみ号」より「ひかり号」の方が値段が少し安かったので、新大阪駅を出発して、京都駅に停車して、名古屋駅を出発した後に浜松駅、静岡駅、三島駅と停車して、新横浜から品川、そして終点の東京駅まで向かう「ひかり号」を選んだ。

 行程だけではなく、泊まる所も考えねばならず。選ぶ宿もなかなか財布が許可を下ろさない。財布が許した宿は、どうしてそんな値段が付いているのかと驚く位、東京に伺う時には定宿になってしまったカプセルホテル。
 こんな時、コロナ禍に考えられない安い値段で泊まれた、少し良さげなビジネスホテルが今となっては懐かしくなるけれど、考えてみると、カプセルホテルも当時はそれなりの値段だったのかも知れない。
 仕方無いなと思いながらも思案する事色々。宿の値段について、拭えない疑問が頭に舞い降りて、それに襲われながら。

 普段、滅多に旅の計画なんて練らず、行き当たり場当たりで旅をする事が多いので、綿密という程では無いけれど、久しぶりに旅の計画をした様な気になって、それも楽しかった。

 そんな旅の前置きと共に、新大阪駅まで各駅停車に揺られる事数分。

 新大阪駅で電車を降りて、コンコースに向かって、辺りを見回すと、視界には人だらけで、それだけで圧倒された。
 在来線から新幹線の乗り場に向かう時に、在来線の行先案内を見ていると違和感があった。特急サンダーバード号が30分毎のペースで走っているのは知っていたけれど、その行先が全部、敦賀駅行きとなっていて、今日は北陸新幹線が金沢駅から敦賀駅まで延伸して、ダイヤ改正が行われた日だという事を思い出した。

新大阪駅にて、敦賀行きのサンダーバードの表示。

 大阪駅から金沢駅行きのサンダーバードはもう走る事は無いのかと思うと、少し寂しくもなって、東海道、山陽新幹線の改札を通る。
 新幹線の改札内も人、人、人。向かう先は、取り敢えずの喫煙コーナー。

 向かう途中、何やら海外から観光で日本にやって来た様に見えた西洋の老父婦。どこからどう見ても、行先が分からず、狼狽えている様子が目に入って、拙い英語でどこに向かうのかと問うと、京都行きの切符を見せて来て「キョウト、キョウト」と言うので、在来線に向かう改札の方向を案内した。

 後から考ると、ひょっとすると新幹線で京都に向かう行程であれば、間違った事を教えてしまったかもしれないと、もう少し切符をよく見ておけば良かったと、気が付くのが遅かった。改札で適切な案内がされていると良いのだけれど。
 次に同じ様な事態に遭った時は、切符をよく見てから物を言おうと思った。

 から喫煙コーナーに向かうと、ここも人、人、人。コロナ禍が信じられない様な混雑で、どうしてこんなに混雑しているのか考えてみると、新幹線の車内の喫煙コーナーも昨日限りだったらしい。なので、こんなに人が多いのかと。煙の量が半端無く、何と不健康な空間だろうかと思った。そんな中で煙草を嗜んでも、少しも落ち着かず。
 吸い終えて外に出て、エスカレーターでホームに上がって、乗る予定にしている「ひかり506号」を待つ。

新幹線。

 土曜日のお昼前。色々な人々の往来があるホームの上。
 自分が並んだ列の先頭には、何やら体育の大会を終えた様な学生さんが大阪から去って行く様子だったし、スーツケースを曳いた女性はどこへ向かうのだろうか。その他、海外からのお客さんが異様に目立った。
 いい天気で観光日和だとか、車内ではどうやって時間を過ごそうか、とか考えている間に「ひかり506号」がホームに辷り込んできて、ホームの扉と車両の扉が開いて、新幹線に乗り込んだ。

 一番前に並んでいた学生さんは、一番端のデッキの横に並ぶ席を縦一列に押さえているらしく、それも一つの方法だと思い感心する。
 それから座った席の後ろには、この新幹線で待ち合わせをしていたと思われる、先に乗っていた若い女性と、新大阪駅から乗って来た、同じく若い女性。リクライニングシートを少し倒す為に、声を掛けると、少し怪訝そうな顔をされたりするけれど、気にはしない。

 岡山辺りから来ただろう「ひかり506号」が走り出す。京都駅に到着するまでは、窓の外を眺める事に全力を尽くした。

 新大阪駅と京都駅の間の光景、特に進行左側は見飽きる事がない。
 新幹線に乗って、この季節。これ以上の良い天気は無さそうなので、書き物などをしようと思っていた気持ちは諦めて、窓の外の流れる光景を堪能するより他は無さそう。
 晴れた日の新幹線は、車内で何かをしようとする気持ちを奪った。

 車窓を眺める。使っているのは視覚だけで、聴覚と言えば、所在無さげに新幹線の走行音を耳に入れるばかり。
 と、思っていたら、後ろの席の若い女性の二人組の話を聞こうとしていた訳ではないけれど、会話が勝手に耳に入ってきた。
 宿があーだ、こうだと話をしていて、話は展開して何やらコンサートの物販の話になって、携帯電話だろうか並べられる商品の一覧を見て、これを買うやら、あれを買うやら、相談の会話が始まった。
 年齢や性別が変わっても、コンサートやライブの前に考える事に差異は殆ど在らず。そう言えば、自分の若かりし頃もそんなだったと思い出す。
 物販の話で盛り上がった彼女たちは、名古屋駅に到着すると、新幹線を降りて、後には外国からやって来たお客さんが、片方の椅子を返して、対面で座った。

 車内の光景が少し変わって、隣の3人掛けのシートの廊下側に腰を掛けていた男性が、徐に鞄の中からコンピューターを取り出した。窓側の男性はサングラスをして凄く怠い感じで佇む様子で、二人を真ん中の空席がバランスを取っている様子だった。
 気怠そうな男性が、浜松駅で降りて、暫くの間コンピューター男性のひとりの時間が続いた。新幹線の中でコンピューターを弄るなんて、まるで忙しい人みたいだなと思いながら、あまりキーボードは弄らずに、トラックパッドを使っての操作方法が目に入ってきた。それなら携帯電話やタブレットの方が使い勝手が良さそうなのに。
 窓の外を眺める側、時折車内に目をやるとそんな光景が繰り広げられて、時間が経って、静岡駅だっただろうか、前に気怠そうな男性が座って居た席に、スーツケースを従えた女性が席に着いた。
 女性のスーツケースが所在無さげに真ん中の席の足元に置かれて、その女性が取り出したのは、なんと、通路側の席に座っている男性と似たようなコンピューター。座席のテーブルを出して、その上にコンピューターを置いてディスプレイを開いて、操作を始めた。

富士山。

 女性の爪には派手な装飾が施されて、滑らかなタイピングをするにはハンデキャップが有りそうだったけれど、女性はそのハンディキャップを乗り越えて、実にスムーズなタイピングでコンピューターの作業を行い始める。その姿を見たのか、見なかったのかは分からないけれど、通路側の男性のコンピューターの操作もピタっと止まってしまって、男性のコンピューターの時間が止まった様に見えた。
 横の女性のタイピングが余りにも流暢なので、自分のタイピングに自信を失ってしまったのか、暫くの間、男性はじっとしてコンピューターの画面を見ているより他は無さそうに腕を組んで、自分のコンピューターのディスプレイと睨めっこをしている様だった。
 時間が流れて、始まったのはタイピング対決。男性も何やらキーボードを使って、入力を始めるのだけれど、なかなか追いつく様子在らず。このタイピング対決は、爪に派手な装飾を施した女性に軍配が上がる様に思えた。
 自分も持っているコンピューターを鞄から出して、タイピング対決に参加しようと思ったのだけれど、あまり自信も無いので参戦は控える事にした。コンピューターに文字の入力なんて、人それぞれのペースで良いのだ。
 トンネルが少ないと思っていた東海道新幹線がトンネルに入って、暗くなった窓に映った隣の席の熱い戦いは、女性が新横浜駅で新幹線を降りて幕を閉じた。

 新横浜駅から乗る人は少なめで、そこから先、東京の住宅が並ぶ家の屋根が見えて、新幹線は高い所を走っているのだなと。川崎を越えて、多摩川を越えて、品川駅。乗っていた半分程度の人が降りて東京駅まで新幹線に乗るお客さんはその半分。それから京浜東北線やら山手線、最近では上野東京ラインと呼ばれる様になった東海道線を横目に、終点の東京駅に到着。

 自宅に土産物でもと考えていたので、一路、浅草まで向かう事にしていた。

 東海道新幹線の改札を出て、在来線に乗り換える途中。北海道、東北、秋田、山形新幹線と上越、北陸新幹線の案内の電光掲示板があって、新大阪駅を思い出して、その中に敦賀行きを探してみると、見事に敦賀の文字があって、敦賀も東京の方に向いてしまったのだと、長野新幹線が長野駅から金沢駅まで北陸新幹線として開通した時の様に、少し寂しい気持ちになった。

15:24発のはくたか号、敦賀行き、12両編成。

 北陸新幹線が金沢駅から敦賀駅まで開通するという、ダイヤ改正の初日、東京に来て思った事。

 そこからのコースは新幹線で東京に来た時のパターン。浅草は仲見世通りに土産物を買いに行くので、上野駅から銀座線に乗るよりも、つくばエクスプレスに乗った方が、浅草駅で降りた時の勝手が良さそうなので、適当にやって来るという印象の京浜東北線や山手線を秋葉原駅で降りて、深い地下に潜って乗換える事にしている。今回もその例に倣って。

 つくばエクスプレスの秋葉原駅の地下の深さったらありゃしない。と思いながら。エスカレーターを降りて、改札を抜けても、またエスカレーターで降りねばならず。これは相当だなと思いながら、やっとホームに到着。到着して乗った電車はすぐに動きだして、あっと言う間に浅草駅。
 地上に出て、朝食を済ませて以来、何も口に入れてなかったので、昼食を済ませて、土産物屋というよりも「やげん堀」の七味を買いに行く。
 七味を買いに行くというよりも、漬物やふりかけといった、そんな物を買いに。あれやこれやを大人買いで。
 済ませてから、隣にある刷子屋さんで歯ブラシや身の回りを掃除する、小さな箒の様な刷子などを買って、いい時間。というよりも、渋谷まで掛かる時間が見えないので、早めに向かっておこうかと、そそくさと浅草から離れる事にした。

浅草から。

 バスに乗って上野駅まで向かって、秋葉原から総武線、中央線快速で新宿迄という往路を考えたのだけれど、ここは、誰がどう考えても地下鉄銀座線が乗換なしで渋谷まで向かってくれるので、楽だろうと思い地下鉄の駅へと。浅草の地下の酒場でビールを飲む機会が欲しい、また時間を気にせずゆっくり来る事が出来ればと思いながら、人混みを掻き分ける様に向かった。

 どうすれば先発の電車が停まっている、向こう側のホームに行けるのかよく分からない。適当に改札からホームに停まっている電車に乗れば、何も考えなくても勝手に渋谷まで連れて行ってくれる。そう思って座席に腰を掛けて、新幹線の中で出来なかった書き物などツラツラとメモ帳に連ねる。外の景色が見えないという事は作業が捗る。
 地下鉄が動き出して、駅を二つ三つ停まった位までは良かったけれど、そのうちお客さんが増えて来て、書いているメモ帳の上に、大きな鞄や買い物袋が乗って来て、書き辛くなってしまっていけない。
 どうして、こんなに買い物袋を持ったお客さんが沢山乗って来るのだろうかと考えると、乗っている地下鉄に銀座線と名前が付けられている事を忘れてはいけないと思った。
 今、どの辺りを走っているのか駅名だけでは皆目見当付かず。地下鉄は走る。
 それで、書くのを諦めてしまおうかとも思ったけれど、それでは書き物は溜まる一方だと思うと、メモ帳の上に大きな鞄や買い物袋が乗って来る位は愛嬌と思う事にして、渋谷駅まで書き物を続けた。

 そうしてやっとこさの渋谷駅。地下鉄、銀座線の駅を降りると、東京の街が嵩上げされている様にも思える様になって、降りて、だいたいな感じで自分の位置を把握する。改札口を出て、初めに重い荷物を預けるコインロッカーを探した。会場にありそうなコインロッカーでも良かったのだけれど、大きな荷物を持ってライブハウスに行くのも、気持ちが憚られた。
 辺りを暫く歩いて、コインロッカーが京王井の頭線の改札横にポツリとあって、今まで見た事ない様な、狭い幅が15センチ程のコインロッカーがあって、面白そうなのでそこに荷物を預けると、見事に収まって、コインロッカーに荷物を預ける時には大概、大きなスペースが過剰にも思えた気持ちが解消されて、少し嬉しくなった。

左端、300円幅のコインロッカー。

 そうして、ライブハウス。今回は開場前に会場前に到着するつもりだったので、丁度良いタイミング。

 渋谷Spotify O-west。伺うのは1年振り。前回は開場した後に入場したのだけれど、開場前の時間も少し堪能しておこうかと。

一年ぶり。

 会場の前は開場を待つ人で溢れていた。
 行きの新幹線の若い女性二人の交わされた会話に刺激されて、というのと、売り切れてしまっては困ると思い、ソウル.フラワー.ユニオンの新しいデザインのTシャツを色違いで2枚購入。共にライブを楽しもうと、鞄の中に忍ばせて自分の番号が呼ばれるのを待った。
 今日はコロナ禍で中止となってしまった、何年かぶりの「闇鍋音楽祭」。関西での公演は無さそうだったので、ここ渋谷まで。新幹線や飛行機を利用する様になって、あまり「遥々と」という気分でも無くなって、それが良い事なのか悪い事なのかは判らない。
 そうして自分のチケットの整理番号が呼ばれるのを今かと待って、呼ばれてドリンク代を支払って、中に入る時、どちらのバンドを見に来たかと問われる。両方拝見したかったのだけれど、とも言えず、「ソウルフラワーユニオンを」と言って入場。取り敢えず、適当な場所に自分の居場所を構えて、アルコールの摂取は後程として、開演時間まで待つ事にした。

 待っている間、溜まっている書き物でもと思って、電話のメモ機能を使って文字入力。
 お昼前に自宅を出発して、バタバタとあちらこちら経由で、やっと一息付けた様な気もしながら。

 改めて、東京に居る心持ちにもなって。

 待ってましたの「闇鍋音楽際2024」開演時間が迫って、メモに文字入力も切上げて、上がる気持ち。

開演は今かと、逸る気持ち。

 19:00を迎えて、トップバッターは民謡クルセイダーズ。拝見するのは初めて。ソウル‧フラワー‧ユニオンと対バンが決まったのと、以前から興味もあったので、闇鍋音楽祭に出演が決まった時に、どんな音楽を奏でているのかと、レコードを買った。
 しかし、初めて拝見するにあたって、そんな情報を入れて行くよりも、初めて拝聴するのはライブの方が良いだろうと、レコードを拝聴するのはライブを拝見してからという事にしていた。

 ステージの上が俄かに賑やかになった。民謡クルセイダーズ。リズムボックスが鳴らされて、ベースラインが乗って来た。宙に浮く様なホーンセクションとキーボードが鳴らされて、何が始まったのかと思ったら「佐渡おけさ」。
 この曲には思い出があって、高校2年生時の修学旅行先が佐渡ヶ島で、その時、修学旅行で佐渡ヶ島に行くという事が珍しかったらしく、乗ったフェリーにテレビの取材なんかが来てわーわーと盛り上がっていた記憶がある。その時に島の人々との交流をという事だったか忘れてしまったけれど「佐渡おけさ」を踊りと共に仕込まれて、修学旅行先で踊った。
 踊った記憶は無くなってしまったけれど、そんな事があった事だけは覚えている。今思えば、随分と牧歌的な時代であったと、そんな事を不意に思い出して。帰りに乗った客車の夜行列車を思い出しながら。
 まさか渋谷に来て、高校の時の修学旅行を思い出すとは。と、そんな気分になってリズムに合わせて体を揺らした。
 それからエンヤートットのフレーズが印象的な「大漁唄い込み」。こんな展開を見せる民謡を初めて聴いた。じわじわと民謡クルセイダーズの魅力に取り憑かれ始めている様な気がする。からキーボードのサイケデリックなフレーズがらベースライン。ホーンセクションの小気味良い音が響いて「ハイヤ節」。こんな「ハイヤ節」を聴いた事が無い。フロアにグルーブが渦巻いている気が。しかし民謡がこんな形になって演奏されているなんて、という様な衝撃を何度も受ける。
 と、同時にホーンセクションの人達が、纏って演奏をしている前掛けが気になって、一時期熱心に酒蔵の前掛けを集めていた事があって、その時の熱が呼び戻されて、後ほど物販で売っていれば購入する事となった。
 そしてゲストに青鬼さんが招かれて「ソーラン節」。青鬼さんの弾くピアノのラテンさ加減が堪らない。これが本当に聴いて来た民謡なのかと、自分の中で何度も何度も確認する。
 そして、船を漕いだり、波を作ったり「ソーラン節」から始める健康法。
 途中、ホーンセクションの人たちが奏でる、ノルウェイの森の様なフレーズや、ウェザーリポートのバードランドの様なフレーズも心地良くて、メロディーラインを口ずさみたくなった。
 それから、一瞬、これから台湾の民族音楽が始まるのかと勘違いをしてしまった位によく似たフレーズの唄のメロディーは「貝殻節」だった。きっと、どこかで繋がっているに違いないと思いながら。少し悲しげなラテンのメロディーに気持ちが持って行かれた。
 本当に何度も台湾の民謡では無いか、とか、そんな風に展開して行かないかとか、そんな事を思ってしまう。
 それから、謎の小原庄助さんが登場する「会津磐梯山」。さっきからリズムマシンと共に演奏されている、パーカッションのリズムも軽快と思いながら。ここまで来ると、体も勝手に踊ってしまっていて、民謡クルセイダーズの魅力に、すっかり取り憑かれてしまっていた。
 凄いな、民謡クルセイダーズと思いながら。東京まで来て良かったと何度も思う。
 そして最後にキラーチューンは「炭坑節」盛り上がらない訳が無い。オマケに踊り方の指南で、民謡の7インチ盤を買うと、ジャケットの裏に印刷された踊り方の指南を思い出してしまった。いや、ホンマに凄いなと何度も。

 そうして、渋谷に大きな月を出して、民謡クルセイダーズの余韻が漂う中、ステージの上のセットがソウル‧フラワー‧ユニオンの機材に変わって行く様子を眺めているのも楽しい。
 果たして、民謡クルセイダーズの印象が強烈に残ったまま、ソウル‧フラワー‧ユニオンのライブをいつも通りに楽しめるのだろうかと、一抹の不安が薄らと頭の中に過ったりしつつも、ステージの上で器用に巻かれるケーブルや、折り畳まれたマイクスタンドをぼんやりと眺めている間に時間が経った。

 機材の転換が終えて、暫くすると、会場が暗転して、スピーカーから出囃子「アイラー‧チンドン」が流れて、ソウル‧フラワー‧ユニオンのライブが「ハビタブル‧ソーン」で幕が切って落とされた。名曲でライブがスタートするというのが良いなと。舞台の転換の間に頭を過った一抹の不安は一瞬で吹き飛んで、杞憂に終わった。 
 不安とは真逆で、さっきの民謡クルセイダーズから勢い付いてしまっていて、興奮んが更に興奮を呼んだ。唄って、踊るより他見当たらず。から「シンヤの祝福」も奥野さんの弾くメロディーラインを口ずさみながら踊る。そして、リクル‧マイさんが呼び込まれて「ラン‧ダイナモ‧ラン」から、あのギターリフが聴こえてくると「ダンスは抵抗」と続いて、興奮の坩堝。「ダンスは抵抗」と何度も唄った。
 続いてMCで中川さんが民謡クルセイダーズに寄せたコメントに全く同意。から奥野さんが被せてくるコメントが面白かった。
 MCもひと段落ついて、中川さんのソロでのライブで何度か拝聴した「川から海まで」。ベースの阿部さんの弾く印象的なベースラインから曲が始まってジャラさんのスネアから、これまた印象的なギターのリフ。Aメロからサビに向かう途中に展開する場面での音の重さに胸を撃たれて、もう名曲という事が確定した。曲が終わったのかと思ったら、アルバム「カンテ‧ディアスポラ」に収録された「パレスチナ」が少し演奏されて、中川さんの弾語りでのライブを思い出した。
 息を吐く間もなく、中川さんのブルーズなギターリフに合わせて、バンドの演奏が始まって、高木さんのスライドギターの麗しさ。何が始まるのだろうと思っていたら、演奏が一瞬途切れて、奥野さんが「ラヴィエベル~人生は素晴らしい」のフレーズを送り出して、まさかの展開に少し驚く。このタイミングでこの曲かと思いながら。CDで聴くのも良いけれど、やはりライブだなと強く思えた。
 からポーグスのシェーンさんの訃報に触れて、弾き語りでよく拝聴する「A Pair of Brown Eyes」鳶色の瞳。酒場の様子の描写が何とも言えず、夕暮れ時の酒場に身を置いて、聞こうとせずとも耳に入ってくる話を聴いている様な錯覚になりつつ。
 そして、伊丹英子さんが呼び込まれて東京の空に響く「満月の夕」。大阪から遠くに来ても、更に遠くを思った。から打って変わって「もののけと遊ぶ庭」。興奮が増して、更に踊って唄って、唄ってというよりも叫んでいるのかも知れない、という様な唄い方で演奏と共に。
 矢継ぎ早にライブは進んで、リクルマイさんが「レボリューション‧ロック」。演奏される度に、英語で一緒に唄いたくなって、家に帰って、歌詞カードを見ながらCDを聴く、という事を以前はしていたのだけれど、最近ではコンピューターに収めた音源で、インターネットで歌詞を検索してという具合だからか、なかなか歌詞が覚えられない。いや、コンピューターのせいにしてはいけない、記憶力も歳を重ねてしまったのかとも思いながら、知っている部分は唄う。
 ライブは減速する事を知らない。パーカッションのループが聴こえて来たなと思ったら「グラウンド‧ゼロ」へと傾れ込んだ。

 勢いのままMC。MCも勢いがあって、楽しいと思いながら、いつも拝見。
 楽しいのか、切なくなってしまうのか、よく分からないけれど、深いMCの後に「荒地にて」が演奏されて、曲に深みが増す。それから、伊丹さんが呼び込まれる事再び。で、「風の市」。曲のリズムのアクセントの面白さで、やはり踊って唄う。曲の終わりかけのメロディーがループする気持ち良さったら、他に見当たるものが無し。また曲が頭から始まれば良いのにと、いつも思う。
 伊丹さんから「ソウルフラワー震災基金」に報告もあり、ならではのエピソードにほっこり。していたら、このタイミングで「神頼みより安上がり」。気持ちが盛り上がらない訳が無い。曲の最後の方の「ひとり旅の~」という部分で感涙。からの「エエジャナイカ」。全編ピークの闇鍋音楽祭。楽しい、より他に言葉は見当たらず。

 このままで終わって欲しく無いなと思いながら、アンコールを求めていると、ステージの上が少し模様替えされて、その途中に中川さんがMCを。ニューエスト‧モデル「ソウル‧サバイバー」のLPがリリーズされる事やレコードプレイヤーの話をされている間に、ステージの上が整った様子で、今日の闇鍋音楽祭に出演したメンバー全員がステージの上に登場して、さらに賑やかに。全編ピークだと思っていたけれど、それを超えるピーク。針が振り切れてしまった感じが何とも。興奮の坩堝の中に居る。
 今日は演奏されないなと思っていた「秋田音頭」。民クル、田中さんのギターのトラブルはあったものの、只々、凄いモノを見た時に言葉を無くす時の様に、ただ踊って唄うより他在らず。からの「海ゆかば 山ゆかば 踊るかばね」も民クルが演奏に加わる事で、かなり贅沢な演奏。目の前で起こっている事が夢で無い様にと、祈る様に唄って踊る。
 曲がフェードアウトして、また戻って来る様な場面があって、戻って来た時の演奏を10分程聴いていたかった。

 楽しすぎて、終わってからも、この夜があって良かったと思える夜。こんな気持ちは、相変わらず、上手く言えた事がありません。

 良い祭りをありがとうございました。

良い夜をありがとうございました。

 また、伺います。

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