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20240218

 何故だろう、岡山は城下公会堂でバンド「冬にわかれて」を拝見したいと思ったのは。
 コロナ禍を経て、インバウンドで海外からのお客さんが戻って来て、最近は宿の値段が高騰して、とても何処かに泊まろうという気にはなれないという事と、お正月以来、どこで何が起こるか判らないという気持ちにもなってしまって、泊まり掛けで何処かへ行くのは控えたい気持ちがあるのかも知れない(という割には泊まり掛けで色々出掛けてたりしますが)。
 朝、自宅にてダラダラと過ごしてはいけないと思いながらも、ダラダラとしてしまって、早朝も早朝に始発電車に乗る位の勢いで家を出発しようと思っていた気持ちは消えてしまっていて、結局ダラダラと過ごして、自宅を出発したのは9:00を過ぎてから。
 自宅で朝食を摂ると、余計に時間が掛かってしまいそうだったので、外食で朝食を済ませる。済ませて隣町の駅から電車に乗る事にして自転車、上り坂の道を登って駅の構内にある駐輪場に自転車を駐めた。
 以前、ここの駐輪場を利用した時に、駐輪票を無くしてしまって、無くした時には最大の料金を払わねばならず、その金額を払った事があって、その時の教訓で、駐輪票は自転車に格納出来る様に工夫を凝らした。

 各駅停車しか停まらない駅だったので、やって来た電車に乗って新大阪駅まで。そこから快速電車でも、新快速電車でも、次にやって来る電車に乗ろうと思っていたら、次にやって来る電車は新快速電車の様子。これで三ノ宮駅や神戸駅で乗り換えずに済むなと思い、座席を確保するために空いていた通路側の席に腰を掛けた。
 大阪駅で乗っているお客さんが入れ替わる様にドアから人を吐き出して、また吸い込んだ。
 何とか窓際の席に腰を掛けて、これから電車の中で過ごす段取りをする。背負っていたデイバッグの中から取り出したのはアナログの手帳で、一昨日の分位から溜めていた日記をメモ程度に書き留める。
 時折、窓の外に目をやって、今はどの辺りを走っているのだろうか、海の傍を走る時には大阪湾を写真に収めておきたい、とか、パールブリッジの下を走る時に写真を収めようとしても、近いと案外、写真に収まりが悪いとか、何度か通過していると判る。

電車線の駅に停車する各駅停車。須磨駅にて。

 パールブリッジを通過すると播磨灘が見えて、さっきから並走していた山陽電車がより近く感じる、明石駅に停車。
 そこから先、播磨灘はシーサイドライナー山陽電車に任せて、一路、西明石駅に停車して加古川駅、終点の姫路駅。
 書き物をしていると時間が経つのが早い。しかしペンの動きがいつもに増して遅いのは、時折窓の外を眺め過ぎるからか。姫路駅で改札を出て、煙草でも嗜もうと思ったけれど、着いたホームの向かい側に播州赤穂行きの各駅停車が停まっていたので、そそくさと乗り換えて、相生駅を目指した。
 窓を見てみると雨粒。この先ずっとこんな天気だと少し辛いなと思いながら、書き物の他にする事も見当たらず。書きながら相生駅から先の事を考える。

 時刻表を見て、先を考えてきた訳では無いけれど、相生駅から先、きっと相生駅始発の岡山行きが待っている筈。播州赤穂まで行って、そのまま岡山行きに乗るという手段もあるのだけれど、赤穂線はレールの繋ぎ目が短いのでよく揺れて書き物には不向きだと、前に乗った時に思ったので赤穂線に乗る選択肢は外した。
 山陽本線の各駅停車か、或いは追加で1000円程払って新幹線に乗るか。考えながら書き物をすると、なかなか考えが纏まらない。纏まらないまま電車は相生駅に到着して、また、着いたホームの向かい側に丁度岡山行きが停まっていたので、乗った、と言うよりも吸い込まれた。

 青春18きっぷの季節に非ず、お客さんは疎らだろうと思っていた電車の中はシーズン中程では無いけれど、そこそこの人を乗せて。

 相生駅に到着した時にアナログのメモ程度の日記は書き終えて、山陽路を行く時、今までの記憶を辿ってみると、いつも相生駅からアナログの日記からパソコン作業に変わる。どうしてだろう、いつも同じタイミング。
 ここで新幹線を利用すると、その過程で、やはりダラダラと過ごしてしまうので、同じホームの向かい側に停車している各駅停車に乗り換えて正解という事になった。
 座席に着くと、待ってましたと電車は出発して、鞄からポータブルコンピューターを出して、作業に取り掛かる。
 さっきまでどんよりしていた空は真っ青になって、さっきまでのどんよりとした光景は、この空の青さを見るための段取りだったのだと思う事にした。

先程とは打って変わっての青空。

 山陽路の山間を縫って、山陽本線。和気駅の辺りで、いつか片上鉄道の廃線跡を自転車(ママチャリ)で走ってみたいと思う。それから吉井川の左岸を川に沿って暫く走って、気が付けば、いつの間にか横に新幹線の高架線路と並行して走る様になって、赤穂線と合流して、百間川手前の東岡山。百間川を渡る時に、河川敷の光景でも見ようと思っていても、コンクリートの壁に阻まれて、見えない様になっていて騒音対策のひとつなのだろうと思った。
 それから旭川を越えて、学校の名前を掲げた、新しい(と、言っても出来てから随分と経っている様な気がしますが)駅に停車して、川からの勾配を下って、津山線を横目に走ると山陽路は岡山駅。

 乗っていた電車は、お客さんを一気に吐き出して回送電車となって車庫に戻る様子。

 吐き出される様に電車から降りて、向かうのは5,6,7番ホームにある喫煙室。駅に喫煙コーナーが少なくなって、こんな場所は助かると思い乍ら、列車の行き交う様子を眺めながら。
 煙草を嗜み終えて、改札口を出て、
 行き交う人の多さに圧倒されながら、東口に出た。
 いつの間にこんなに栄えたんだ岡山。という佇まいの駅前の地下街には寄らず、そのまま外に出た。
 駅前のバスターミナルから続く広場から、新幹線の高架線路の下り方面を見てみると、空が青かった。

空の青さ。

 こんな空の青さをどこかで見た事があると思って、思い出してみると、台湾は台東でしこたまお酒を飲んだ次の日、二日酔いも醒めた高雄の空に似ていた。
 その青空で、高雄から少し離れた、潮州や屛東に向かおうと思っていた気持ちは消えて、青空の下の高雄の街を堪能しようと思った青空。

 ライブの時間まで余裕があって、辺りをウロウロして時間を潰す事にした。
 路面電車に乗って、彼方此方に伺おうと思ったけれど、空が青すぎて路面電車に乗ろうとも思わず、一度、城下公会堂の場所を確認しておこうと、目抜きの桃太郎大通りを東に向かって歩いた。

岡山の路面電車、チャギントン。

 しかし、空が青い。と何度でも言いたくなる様な空の青さ。

 迷うかと思っていた城下公会堂は、案外あっさりと場所が分かって、迷う為に置いておいた時間が余ってしまったので、いい天気で、列車の中での書き物の続きをどこかで、という考気持ちが何処かへ消えてしまって困る。

 取り敢えず、城下公会堂から桃太郎大通りを挟んだ向かい側に、表町商店街の姿が見えたので、歩いてみる事に。
 日曜日という事もあってか、人が多い。多いけれど、駅前や観光地の多さでは無く、地元の人々が買い物を楽しんでいる様相で、そんな場所だからか、人混みにゲンナリする様な事は無かった。

表町商店街。

 暫く歩くと、レコード屋さんを見つけて、入るより他は無くなってしまった。
 お店の中を一周して、心のウォントリストに入っている品は有らず、ここでLPを買うと持って帰るのも大層な気がしたので、7インチを探ってみると、「クリーデンス‧クリアーウォーター‧リバイバル」の「サムディネバーカムズ」のシングルがそこそこの値段であったのと、廉価盤コーナーを見ていると「貝殻節」があったので、その2枚をレジに持って行き、支払いを済ませると、近くの丸善の地下でレコードセールが開催されているとの事で行ってみる事にした。

商店街の一角。

 商店街は日曜日。そんな雰囲気で、角々から光が溢れ出して、日曜日の午後の趣。レコード屋さんから目抜きの桃太郎大通りに向けて足を運ぶと、暫くして丸善。
 入ろうとすると、お店の前に居たお年寄りが倒れた。何だろうと思って駆け寄ってみると、手には中にお酒がたんまり入ったレジ袋を持っていて、どうやら良い気分が行き過ぎたらしい。幸い倒れた時に、頭は打って無かった様に見えたので、起きるのを手伝うと大丈夫そうだったので、その場を離れた。
 丸善に入る。地下のイベントスペースに、各地から寄せられたレコードやCDが揃えられて、頭の中のウォントリストを探してみるけれど、やはり在らず。このまま居ると、持って帰るのに苦労する量を購入してしまいそうなので、お店をそそくさと出た。

 城下公会堂。余りに早い時間から並ぶべく、お店の前で佇んでいるのも何だろうと思い、未開の地、桃太郎大通りから東山に向かう路面電車が通る道から逸れて、その奥、少し急な坂道を上ってみる事にして、桃太郎大通りから、少しカーブを描いて勾配のある坂道を行く。
 上りきると、日曜日の公園が絵や写真から飛び出してきた様な光景が広がって、そこは烏城公園というらしく、姫路城が白鷺城なら、岡山城は烏城だという事を知る。

烏城公園から旭川の眺め。

 日曜日の公園。それ以上もそれ以下も無く。
 お城のお堀ともなっている旭川を上流に掛かる橋を見て、内田百閒さんは何度あの橋を渡ったのだろうか、ここの公演は100年前程から続いているのだろうか、等々。
 百閒さんの随筆に出て来る岡山の光景を思い描いてみたりもした。
 晴れた、日曜日の午後の公園を堪能して、城下公会堂に向かってみると、公会堂の前に何人か並んでいて、その最後尾につく事にして、晴れ過ぎの日曜日の午後の桃太郎大通りは見飽きる事が無さそうだったので、まったりと待つ事にした。

 お店の人とお客さんだろうか、何やら城下公会堂が移転になるらしい、という話が耳に入って来た。再開発されるらしい。そういえば岡山での定宿としていた、パチンコ屋の上に構えたカプセルホテルも営業を終えて、そこも再開発だとか。

 再開発はまるで良い予感がしない。自分が暮らす、大阪の街、大阪駅前も再開発が乱発して、どんどん新しい商業ビルやその中に人を呼ぶホールなんかがどんどん造られて、一昔前に造られた様な商業ビルには、酷い場合、フロアのテナントにはシャッターが降りて、閑古鳥が鳴く様な場所もあったりして、そんな光景を思い出してしまうからで、造るだけ作って、後で閑古鳥が鳴いてしまう様な再開発で無ければ良いのになと思う。
 しかし、何を再開発せねばならないのか、城下公会堂の入るビルを見てみると、その必要性はさっぱり理解出来なかった。

 ぼんやり、岡山駅を降りてから続く、日曜日の良い天気の中で、すっかり気が抜けた様にぼんやりと佇んでいると、リハーサルを終えた「冬にわかれて」が城下公会堂から出て来たので驚いた。
 それであだちさんが物販の段取りなんかをされていて、目を引いたのが諸国調味料探訪「サンラー」。そういえば以前、北加賀屋でのASIA BOOKMARKET AND FLEAでも拝見した事があって、その時、あだちさんを思い出した事など思い出して、終演後、是非手に入れたいと思った。
 そうこうしている間に、後ろに人の列がどんどん伸びて、開場の時間となった。

今日の催し。

 コロナ禍が過ぎて、というよりも、有耶無耶になった感。を経てライブが各地で行われているのが嬉しい。
 城下公会堂も以前から一度伺っておきたい場所だった。
 公演日の前、ギリギリのタイミングでライブを申し込んでおいて、申し訳無くなる様な順番で会場の中に入って、適当に見易そうな場所に腰を掛けて開演時間を待った。
 城下公会堂。奥にステージが構えられて、その佇まいのシンプルさが良かった。

スピーカー。

 空の青さが印象的な日曜日の夕暮れ時、少し前の16:00過ぎ。
 ゆったりと流れる時間。
 そして開演時間の16:30を迎えてライブが始まった。

 NORENMUZIC presents 「冬にわかれて」岡山公演。

 一曲目が「朝焼け」から。もう、うっとりとするより他見当たらず。今日伺えて良かったと何度も思う始まりで、空の青さの少し切なさと、気持ちと唄が同調する様。
 それからエレクトリックピアノで「もうすぐ雨は」で「冬にわかれて」のバンドさ加減、纏まっている感じが増している事に気が付いた。言われるまで冬にわかれてでは無く、寺尾紗穂さんのソロの曲だと気付かなくなっていた「幼い二人」と続いて、そこでMCと続いたか、そこで今日は二部制だったところを、新幹線の加減で一部となった事が告知され、その都合を後から知る事になった気がした。
 それからテレビ番組、Dear日本のテーマ曲「魔法みたいに」。何度も書きたくなる位、岡山の青い空の下に居ると思うと、切なさで泣けてきた。 
 それから、あだちさんの曲が2曲「おかしなラストプレイ」だったか「山のミルトン」だったか(すみませんタイトル失念してしまいました。)から伊賀さんのインスト「タンデム」に続いた。冬にわかれて、アンサンブルの凄さを拝見。
 それからモンゴル民謡の「かわいい栗毛」が演奏されMCに。
 それから「昭和柔侠伝の唄 最后のダンス‧ステップ」。
 この時間になると日も落ちて、城下公会堂に入り込んでいた光も、暗くなっていたのが分かった。昼間の空の青さから離れて「耳をすませて」。何とも言えない、ほっこりとした時間が過ぎて、このまま時間が止まれば良いのにと、この時間に限らずライブを拝見している時はよく思う。そんな時間。
 「愛のありか」という新曲も披露されて、次の音源の発表が楽しみになる。
 それからのMCが心に突き刺さった。マヒトゥ‧ザ‧ピーポーさんが作った映画「i ai」の事にも触れられて、それから、城下公会堂の移転に伴って、「冬にわかれて」がこの場所でのライブが最後になるという事。以前、和歌山でのライブの時に、MCで伺った話が繋がって、今日の昼間の空の青さの少し寂しくなる様な気分になった。
 本編最後に「歌の生まれる場所」。最後の部分で色々な感情が押し寄せてきて、感極まって、今、生きているという事を感じる。
 本編が終了して、アンコールを求める声が止まない。
 明日、ここでソロライブがあるというあだちさんが出てきて、まずMC。伊賀さんは飄々と佇むという感じで。
 暫くして紗穂さんが登場して、岡山に居るのに外苑前を思い出す「君が誰でも」。から会場からのリクエストでエレピの音が新鮮だった「リアルラブにはまだ」が演奏されて、大団円。

 終演後のこの気持ちは何だろうと「冬にわかれて」を拝見する度に陥る気持ちになって、心地の良い心にぽっかりと穴が開く様な。こんな気持ち、上手く言えた事が無い様な。

 ほっこりする、山陽路は岡山。
 日曜日の宵の口をありがとうございました。

良い夕暮れ時をありがとうございました。

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