なんでもないインタビュー

「実は私、飛び降りたんだ。」
足を骨折した彼女が言う
「死にたくて飛び降りたんですか?」
僕が聞く。
「ううん、死のうなんて全く思ってなくてね、というか日曜日に死のうと思ってて、それの予行練習だと思って低いところから飛び降りたの。低いって言っても2階だけど。」
「死ぬ予行練習ですか、、、」
彼女の言葉はよく分からなかった。
「それで、予行練習してなにか気づいたこととかありましたか?」
分からないけれど僕から質問してみる。
「気づいたって訳じゃないけど、スッキリしたの。自分の9割を閉めてた居場所があったんだけど、人間関係上手くいかなくて。『お前なんかいなければいい』て幻聴がずっと流れてたの。それが飛び降りてから消えたわ。」
「そうですか、それは良かったことなのですか?」
「そう、飛び降りて良かったわ。予行練習だと思ってたけれど、本当に死ぬのをやめようと思ったのよ。」
「それは良かったです。飛び降りたことに反省などはしてないのですか?」
「してないわ。痛みを知ったから、、もっと痛い傷みは要らないと思ったの。」
「親不孝ではないのですか?」
「結果死ななかったし死ぬ予定の日に何もしないって決めたから親不孝ではないと思うの。」
「貴方は人の気持ちを何も分かってませんね。」
「あら、そうかしら」
「飛び降りたと知った親はどんな気持ちで駆け込んだことでしょうかね。」
「それは申し訳ないとはおもってるわ。」
「思ってないから予行練習なんていえるんですよ。」
「じゃあ辛い中生きれとでも言いたいのかしら?」
「難しいとこですね。でも、貴方の居場所はもうあるでしょうに。」
「え?どこかしら」
「あなたが生まれた時から一緒にいる人がいるでしょう」
「ああ、そうね。それは盲点だったわ。」
「やはり貴方は親不孝者ですね。」

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