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寂しくて流す、初めての涙

「おねえちゃんも、とうきょうのおうちにかえろう」

私の姉の手をぎゅっと握って離さない息子。
目は涙で潤み、流れた涙を何度も洋服でぬぐっている。姉と離れたくなくて、こんなふうに泣くのは初めてだ。

車にのせるために積まれた荷物の横で、姉が懸命に諭す。

「また遊びにおいで。夏に会おうね」

それでも、息子は姉の手を離そうとしない。姉の腕を引っ張り、姉が逃げていかないように力をこめる。

そんな2人のやりとりを離れた場所で眺めていた。

この1週間は時間が許す限り、ずっと姉が遊んでくれた。私や夫とは比べものにならない徹底ぶり。息子の気がすむまで、根気よく付き合っていて舌を巻いたほどだ。
人形でのごっこ遊び、追いかけっこ、庭での砂遊び、遊びならなんでも付き合ってくれた。

私だったら面倒に思ってしまう場面でも、姉は息子ファーストにしてくれる。

それは、事前に息子の発達の遅れを共有していたのもあるだろう。息子の成長の一助になりたい。言葉にはせずとも伝わってきていた。姉の覚悟が。

息子にもその優しさや、楽しさ、面白さが伝わったのだ。だからこそ、

離れたくない。
もっと一緒にいたい。
ずっと遊んでいたい。

そんなふうに思ったのだろう。

息子がこんなふうに感情を表すのは、1週間前にはなかったこと。

4歳だって、きっかけがあればぐんと成長する。

人の気持ちを汲み取ったり、自分の気持ちを伝えたり。大人だって難しいことを、息子も姉に対して実行していたのだ。

息子は、伴走者との相性が重要。それを姉が担ってくれて「妹」であり、息子の「母」である私は感謝でいっぱいだ。

車内に乗せても、息子はベルト着用に抵抗した。ひとまず、一緒に乗ってくれた姉に降りるよう促す。姉も頬を伝う涙を何度もぬぐっていた。

泣き喚く息子を抱っこすると、私の胸に顔をうずめ力強く抱きついてきた。私も目が潤む。

ふと、隣に座っていた娘に視線を向けると、ともに泣いていた。

「◯◯くんがないてると、つられちゃうの!」

そう言いながら、左の手の甲で涙を拭う。

パパのスマホから流れるYouTubeを、娘は必死に見ていた。なるべく実家のメンバーを見ないようにしているのが伝わった。娘だって寂しいのだ。

365日あるうちの、たった8日間。

子どもたちをぐんと成長させた濃い時間が終わりを告げる。

みんな、ありがとう。

子どもたちにとって大切な大人が増えて、ママもうれしいよ。

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