JPOになった後の就活について

この記事もあくまで自分の経験を基に書いております。個々人のバックグラウンド、志向、置かれている環境、その時のマクロ環境等によってやるべきことが変わってきます。特に、自分の場合、少し背景が他のJPOとは違いましたので、これが正解と言うつもりは全くありませんが、一つの意見として参考となれば幸いです。

1. 全体像

JPOは基本2年間で、場合によっては3年目の延長がある制度です。その為、2もしくは3年以内に次のポストを見つける必要があります。個人的にはJPO、各国の官民組織、国際機関、というように色々と渡り歩きながらまた後で国際機関に戻ってくるキャリアパスでも良いのではないかと思いますが、外務省サイドとしては金を出している以上、国際機関に残ってもらう努力をしてもらうという前提です。ですので、制度上、自分の給与を出してくれるスポンサーが存在はいる以上、一旦は国際機関に残ることをまず考えていくことになると思います。スポンサーなのでここは仕方ないですね。

一方、これも機関によると思いますが、国際機関の就職プロセスは一般論として異常に時間がかかります。早い場合でも半年かかりますし、1年以上かかるのも普通です。そして、国連の場合、資金繰りが悪化し、新規採用を一時的に凍結することも普通に発生しますので、それも実際に起きると更に時間がかかってしまいます(自分の時も新規採用凍結期間がありました)。その為、JPO期間の最後の方まで待っていると、(国際機関に残りたい場合は)苦しい状況になる可能性が高くなってしまいます。こうした事情により、外務省はJPO赴任前研修の段階から早く就活を開始するよう推奨しています。他方、日本以外の国のJPOと話していると3年目の残り半年という段階で漸く就活開始し、さらっと正規ポストを獲得する人もおり、人(+お国柄?)によってそれぞれです。

また、国際機関の就活の特徴として、採用チームとして既に意中の候補がいて、それでも「公平性」や「透明性」の為に公募をかけ、採用プロセスを踏んでいくケースが一部あります(割合はわかりません)。各ポジションに100-300人ぐらい(ポジションによってはもっと)応募すると言われていますので、出来レースにそれだけの人が付き合わされるということになりますが、これが現実でもあります。大分雑な例ですが、例えば自分が会社員だとして、複数の取引先の内、一社に何らかのサービスを発注する際、この取引先がいいな、という本命候補がありつつも、手続上、他の先にも見積もりを取ってもらうこともあると思います。採用もこれと似たようなものだと自分では捉えて納得しようとしています。逆に、既にその国際機関で勤めていて、採用チームのヘッド等に目をかけてもらっていれば自分がその意中の候補になり、可能性がグッと上がります。

2. 対策

自分は、JPOになるまで、所謂国際協力の世界に携わった経験はありませんでした。官公庁やJICAのような組織もNGOも何もなく、医師免許や弁護士、会計士資格も持っていません。その為、他のJPO同期と比較してこの世界で生き残る為のスキルや経験、就活でどんなことが求められるのかの知識等の観点では、周回遅れでした。その為、着任直後から自分の機関以外も含め自分の経歴でハマりそうなポジションにどんどん応募した、と言いたいのですが、実は自分の経歴では書類をクリアできそうなポジションが殆どない為、JPOとして所属していた機関内外でかなり苦労しながら幅広く探しました。国際機関に限った話ではありませんが、オンラインで書類を提出する時に「###の経験はありますか?」でYesと答えられないとほぼ確実に落とされるのですが、基本Noと答えざるを得ないポジションが多い為、この点はかなり苦労しました。

国際機関の就活は何回でも応募しても良いというのが特徴としてあるので、書類を書く練習という目的も兼ねて最初のうちはある程度数を重ねた方が後で活きるのではないかと思いました。実際、色々な質問のパターンに触れることで、CVやカバーレターの書き方が上達し、回答パターンも増えました。最初は提出にかなり時間をかけていたものの、最後の方は既に書いてあるネタを組合せるだけで済むようになりましたので、1つのポジションに出すのに2時間もかからなくなりました。その為、平日にマッチしそうなポストを見つけ、リストアップし、週末にパッと応募する、という生活パターンでした。

また、これも国際機関での就活に限った話ではありませんが、当該機関で働いている知り合いがいることが非常に大事です。どのような採用プロセスで、どのようなことが求められているか、採用チームの雰囲気、そもそもこのポジションは出来レースなのか等々、知ると知らないとで大きく変わります。自分のケースでもたまたま知り合った方に色々と情報を伝授頂いたことが有利に働きました。所謂「ネットワーキング」は自分の性格上あまり進んでやりませんでした。ただ、例えばその機関で働いている邦人職員や元JPOの方々は後輩を助けたいという方が多いので、どうしてもという時は、教えてください、とご相談しました。こうやって助けてもらった時は、その後の選考結果がどうであれ、確り報告と御礼をすることが大事です。そうしないと「聞くだけ聞いて報告しない失礼なやつ」と思われるリスクがあります。

国際機関の場合、ポジションの採用を途中でキャンセルすることも残念ながらたまにあります。自分も最終面接まで呼ばれて、結果的に誰も採用しなかったというケースを経験しました。そのうち一回は確りHRから電話をもらい、そこで伝えてもらったのですが、別のケースでは、9ヶ月待たされ、何度もメールや電話でフォローした結果、ピロっと「そのポジションの採用はキャンセルされた」と二行の返事がメールできました。これも機関や人事担当にもよりますが、わざわざ時間を割いて応募している候補者を舐めているとしか言いようのない対応も残念ながらあります。また、応募した某機関の日本採用ミッションのケースでは、書類を提出後、人事担当から「面接をセットするので向こう一週間はスタンバイしておいて」と連絡をもらったにも拘らず、その後何も連絡がなく、半年ぐらい定期的にその担当及び日本事務所をトレースしましたが、結局全て無視され、結果的に書類落ちとなりました。非常に不愉快ですが、自分でコントロールできないことはどうしようもありませんので、忘れて前に進むしかありません。期待せずに気長に待ち、連絡が来たら逆にこっちが次のステップに進むか「検討してあげる」ぐらいのスタンスでいいと思います。受ける方にも選ぶ権利はありますので。

面接対策については、よくまとめているブログが他にもたくさんあるのであまり触れませんが、自分の受けた機関の場合、記載されているcompetencyやkey responsibilities一つ一つについて発揮した例を二つずつリストアップし、それぞれについてsituation, task, action, resultsをエクセルの表でまとめ、整理しました。自分のキャリアの棚卸しにもなり、そう言えばこういうことをやったな、と思い出したり、別のポジションで探す時のネタとしても使える可能性があります。後は、自分がそのポジションに就いた時にどのような課題があるのかを考え、自分なりにリサーチした上でこうしたい、といったアイディアをまとめていました。最初の方はかなり時間を要しますが、自分の場合は結果的にこれで上手くいきました。

また、複数のコンピテンシーのことを同時に聞いてくる質問にも対応できる必要があります。例えば、たくさんの人と協力しながら、締切がタイトな中、客のリクエストに応える必要がありますが、どのように行動しますか?といった具合で、協力、タイムマネージメント、顧客指向等、複数の要素について言及する必要がありますので、このような質問も自分で想定して練習しておいた方がいいと思います。最後の質問も確り考える必要があります。ググれば出てくるような質問は考えていないと思われますし、そんなこと聞いてどうするのという質問も避けるべきです。結局は採用サイドがどう思うかにより、人次第でもあるので対策が難しいですが、自分の場合は、すごいわかりにく表現ですが、聞かないとわからず、そして答えを聞いてモチベーションが上がるような質問を考えました。

最近はパネル面接の前に外部業者を使ったビデオインタビューを使っているところも多いです。人の面接官はおらず、好きな時にログインし、画面に質問が出てきて一定の時間で回答を準備し、その後一定の時間で自分の回答を録画する、という流れです。これも本命を受ける前に一度経験しておくといいです。

最近はパネル面接もオンラインでの面接が殆どです。その為、画面を二つに分割し、半分は会議システム、もう半分はkey responsibilitiesについて話すネタのキーワードだけを一ページにまとめた表を開いておいて、頭が真っ白になった時に参照できるようにしていました。実際には見ている余裕はないのですが、本当にパニックになった時の為のお守りのような感じです。また、ずっと見ていると目線で面接官にバレるので、そこも注意です。

面接後の御礼メールの要否は機関次第です。世銀のように公式interview guideで御礼メールを書きましょうと書いてある機関もあれば、不要のところもあります。正直選考落ちの連絡すらくれるのかもわからない相手に、御礼メールをわざわざ書く必要があるのか、という思いはありますが、要否はそこに勤めている人以外わからないと思います。個人的に面接官をやった場合(実際にやったことはありませんが)、御礼メールを大量にもらってもいちいち返信するのが手間であり、候補者のランキング付が確定するまでは選考について何も発言できませんので、困るだけ、というような気がしますが、人によるのでしょうね。不要の場合でも、面接中誤解をされた懸念があって訂正をしておいた方が仮に落ちたとしても後腐れがないようにしたい、といった目的がある場合は送っておいた方がいいかもしれません。

3. 雑感

自分の場合は、運良くJPOの任期が終わる前に次のポジションを見つけることができました。卒業先はJPOとして所属していた機関ではありませんが、実力が認められて素直に嬉しかったですし、ホッとしました。同時に、このような生活を後何続けられるのかという不安もあります。別記事でも触れますが、あまり長い間国際機関の特殊な世界で働いていると、外の世界で通用しなくなる可能性もあるので、今後30年以上働くと考えると、どうキャリアを組み立てていくべきかというのが次の悩みです。

また、自分の場合、早く動いて良かったです。この世界では初心者であった為、まず色々と動き回ってくることで見えたものがたくさんありました。動き回って自分の実力や足りない部分が見えたので、その後また本格的に就活する必要が出てくる前に対策を練ることができました。同時に全体的に採用プロセスは相当時間がかかりますので、気長に待ちながらも随時打てる手を打っていくという、精神的な体力も必要です。短期間にあまり詰め込みすぎるとバーンアウトし、結果が伴わないと、その後が苦しくなりますので、コツコツとやっていくのがいいかもしれません。ただ、当然人それぞれに合うスタイルがありますので、そこは自分にとってベストな方法を見つければいいと思います。

後は、基本的に信頼できる人以外には、あまり周りに自分の就活の状況を話さない方がいいです。一度自分の機関の公募ポジションを受けたことがありますが、書類選考後の筆記試験の案内があった際、人事担当がミスで、BCCではなく、CCで全候補者にメールをしてしまい、誰が受けているのかが見えてしまったことがありました(立派な個人情報の漏洩ですね)。その時は外部の候補者も含め50人以上に筆記試験の案内があり、自分の知っている同僚5-6人も受けていました。このようにして隣で何食わぬ顔で働いている同僚がライバルとなっている場合が特に同じ機関のポジションの採用の場合は多いので、手の内を明かさない為にも、余程信頼できる相手ではない限りは、情報管理は必要です。後は単純に、誰々がどこどこを受けている、といった噂のネタになるのは嫌ですよね。他方、信頼できる人、全然違う分野や系統の機関のJPO同期等(要は自分とコンフリがない人)とは定期的に情報交換をしていました。

狙うポジションとして、自身の配属されたポジションの業務や興味のある分野に注力するのは当然大事であるものの、同時に他の機関や部局等で行っている業務等に関心も持つことで、足許の業務とシナジーが生まれると思いますし、JPO後のキャリアにも活きてくると思います。勿論関心のある分野を究めることは大事ですが、特に初めて国際機関で働く身としては着任後に初めて知ったことがたくさんありましたので、単純にJPO卒業後もどこかの機関で働くということを主眼に置く場合は、常に視野を広くしておくことは重要だと思います。自分の場合、よくも悪くも特定領域での専門性やどこどこの分野で働きたいという強い拘りがなかった為、幅広く見ることができましたと言えば聞こえがいいのですが、実際は拘る余裕がある程特定分野における専門知識を有していない為、寧ろそうせざるを得ませんでした。ちなみにJPOが終わった後に転職した機関の存在を知ったのはJPOになってからでした。

よくMBAが自分の仕事のsector、geography、functionを変えるcareer triple jumpのチャンスだ、と言われますが、MBA程ドラスティックに変えるのは難しいかもしれませんが、ある意味JPOも似たようなチャンスなのかもしれません。自分もJPOを通じて三つとも変わりましたし、JPOの卒業先でも更にまた三つとも変わりました。ただ、これは本部におけるコーディネーター的なポジションであったからかもしれません。現場で特定分野における技術協力等を行っている場合はまた少し違うかもしれませんが、この辺りについては知識も経験も足りませんのでコメントは控えます。同時に、特定分野に拘りがある人もいると思います。それは素晴らしいことであり、これまで積み上げてきた努力や経験が背景にあると思いますし、そういう勝負できる武器がなかった自分としては正直羨ましいですので、是非やりたいことを実現してほしいです。

最後に身も蓋も無い話をしますが、運や巡り合わせも一つ重要な要素です。自分に合うポジションがタイミング良く出てくるかどうか、そしてそれが出来レースではないポジションか、それが自分の希望する階層や勤務地かどうか、家族の理解が得られるか、この辺は実力だけではどうしようもないです。色々と書いてきましたが、自分の場合は、複数のラッキーが重なりました。自分の実力だけでは絶対になし得ませんでした。たまたまJPOとして入った機関で、たまたま仕えた上司に、運良くこういう機関があるよと教えてもらい、運良く自分の経歴でも応募できるポジションの公募の存在に締切二日前に気が付き、運良くその機関で働いている人と知り合うことができ、運良くビデオ面接の準備時間が無制限であり、運良く筆記試験も山を張っていた問題が出題され、運良くパネル面接も想定していた質問が出ました。恐らく一生分の運を使い果たしたと思います。JPOになる前に所属していた組織の留学試験に三回落ちましたが、その際、人事部に何故選ばれなかったのか聞いたところ「巡り合わせだ」と言われ、当時「は?」と思いましたが、今ならわかる気がします。自分の力ではどうにもならないことは気にせず日々を過ごすしかありません。ただ、自分が関心ある、経験・スキル上応募できそうなポジションが出てきた時は絶対見逃さないこと、自分が合うポジションを増やすことはできますので、そこは日々努力するしかありません。

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