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『三宮彦六の銅像、除幕式』

比企市市長のスピーチ

「え~我が比企市が産んだ、正確に言いますと比企村が産んだ、知の鉄人、いや哲人、偉人、三宮彦六像を建立することができたこと、私は非常に胸熱く、万感の思いが去来いたします、え~では、この比企に伝わる幼少より親しんできた、比企の偉人、三宮彦六を、彼の功績とともにご紹介いたします、明治元年、島井県比企村で5男3女の4男として彦六はこの世に生を受けました、生家は貧しく、カイコの繭から絹を取るカイコ飼育業を営んでおりました、彦六は兄弟の中でも病気をしやすく、体格も小さくよくいじめられていたそうです、国民学校に入りますと、彦六は一家を支えるため勉強をして包茎を治す薬を作りたいと勉学に打ち込むようになります。2つ上の兄、彦太郎が包茎を苦にこの世を去ったからです。

当時の比企村では包茎は不治の病とされていました、国民学校は隣村、河瀬村にあり、毎日毎日、家業のカイコがいっぱい入ったつづらを背負い、往復3里の道のりを雨の日も雪の日も通っていたそうです、そのカイコのつづらを背負いながら本を読む若き日の彦六が今回のこの銅像にあいなるのです。彦六は帰宅したあとも、せっせせっせとカイコ飼育しながらろうそくの火で勉学に勤しみます、また当時は鉛筆は大変高価なもので、村のはずれにある黒曜石を削って鉛筆を作り、またノートがないため、村のはずれに住む、盲目のおりんという娘のめこ汁を糊にして紙を綴りノートを作りました。彦六は貧しくともいつも笑顔を絶やさず、不平を言わないのでいつしか彦六をいじめるものは村にはいなくなりました、彦六の通った通学の山道にはなぜか花が生い茂り、虫がさえずったそうです。またこんなこともありました、村の夏祭りで彦六があやまって全裸で裸踊りをしてご開陳をしてしまうチン事件を起こしてしまったのです、え~当時がしのばれますな。それからは、毎夜、村人、特に村の女たちが悩み相談をしに彦六の家に訪れるようになったそうです。そんなさなか彦六15歳の春、奇跡が起きます。村にいる女という女が妊娠したのです、そしてもうひとつの奇跡、彦六が書いたカイコ飼育方法の分析報告が国に伝わり、国の奨学金制度により上京することになったのです、彦六はニコリともせず、まるで逃げるようにして慌てて汽車に乗り込んだ、と当時の記述にあります。


カイコ絹製品は当時は輸出貿易の要でもあり、カイコ飼育方法は是非とも国が欲しい情報でした。彦六は東京のとある伯爵の口添えで敷地内の納屋で大学研究室の勉学に勤しみます、しかし病弱な彦六は、翌年、当時としては大病であるスピロヘータとさらに翌年は尖形コンジロームにかかり病に悩まされます、またその後しばらくして、母の死により再び故郷比企村に帰ります、しかし、そこでもまた喪に服す1ヶ月もたたぬうちにクラミジアになり、故郷をあとにします、もはや帰る場所はない、と新たなる勉学の場所、アメリカを目指します、英語は読み書きできる程度でしたが、「包茎という不治の病を治す薬を作り、包茎の人を世の中からなくす」「性病をうつされないための予防医学」という2つの夢実現のため、まさにコケの一心で、ある貨物船の密航、アメリカ上陸に成功、そこからは、ニューヨーク、アリゾナと渡りアジア人初の包茎手術をした日本人としてアメリカのニュースにのり、包茎手術の技術を手に博士号を取得、妻キャサリン、奥方シルビア夫人、メイドのルーシーと共に凱旋帰国を果たす。その後南里大病院に勤める、結果的には包茎を治す薬は作れませんでしたが、生涯に見た包茎は376万本、切除した皮の長さは地球3周分と言われています、包茎が不治の病であり、包茎のものはつまはじきにされた時代に勉学に励み勇気を持ち、包茎はメスで切除することができるんだと世に知らしめた、比企が産んだ不屈の人、三宮彦六、62歳、売春婦との性交中の腹上死を家族、奥さんのおとよ、嫁のチグサ、妻のキャサリン、シルビア夫人が見守る中で看取られ、その生涯を閉じる』

小学生:カイコは…?三宮彦六かぁ、そんな立派な偉人が比企にもいたんだね、おじいちゃん。

おじいちゃん:昔は、包茎は『ちぎる』って言って、牛の角に紐ゆって皮をちぎってたらしいだよ、中には出血多量で死ぬものも居てな、そりゃもう、命がけだったんだよ、それをメスでスパーンだよねぇ、ほんに神様みてぇな人だばな…
それと驚くでねぇだど、彦六さまは今の比企市の血縁、血脈の祖なんだべ、銅像以上の贈り物だべ、その証拠に、ほれ、眉毛

小学生:あの銅像も眉毛つながってる、ぼくとおんなじ!市長も、おじいちゃんも!…でも血の濃い近親者間での姦通は…

おじいちゃん:姦通なんて言葉どこで覚えた、そこだけ妙にくわしいのう…誰かに吹かれたな?比企市全体、そうじゃ血が濃い、だから、わしの兄も妹もああなってしもうたわい……

―――完――


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