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レオ・ヌッチさんに会いに行ってきました Vol.1 「ヌッチさん、ピッチンニ賞を受賞する」

音楽ライターの井内美香と申します。7月にバリトンのレオ・ヌッチさんにお会いするためにイタリアに行ってきました。そのレポートを数回にわたって連載していきます。

レオ・ヌッチさんはイタリアの至宝と言われるオペラ界のレジェンドです。来年2月には東京で、久しぶりの来日コンサートが予定されています(詳細はこちら)。日本に向けてのヌッチさんの抱負を聞くためにイタリアに行く準備をしていたところ、ヨーロッパ音楽界の重要アーティストに贈られるピッチンニ賞をヌッチさんが受賞することになったというニュースが飛び込んできました。そこで急遽、その授賞式にお邪魔することに。

コロナ前と比べて3時間ほど長く飛行機に乗り、ミラノに無事到着。翌日の7月8日にはヴェローナ近郊にあるガルダ湖畔の町、カステルヌオーヴォ・デル・ガルダを訪れました。

駅名はペスキエーラ・デル・ガルダ。タクシーでホテルに向かいます

ところでこのピッチンニ賞ですが、18世紀のイタリアのオペラ作曲家ニッコロ・ピッチンニの名前を冠した賞です。ピッチンニの子孫により1967年にベルギーで始められ、功績のあった音楽家や劇場人に贈られてきました。過去にはカルロ・ベルゴンツィやフランコ・コレッリ、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウなどのオペラ歌手、映画・オペラ演出家のフランコ・ゼッフィレッリなどが受賞しています。


ニッコロ・ピッチンニ(1728-1800)


この賞を贈るのはピッチンニ基金という団体で、現在のプレジデントはマクシミリアン・セレン・ピッチンニ氏。母方がピッチンニの血筋、父方はフランスの古くからの貴族の家系で、自身も演劇とオペラの演出を手がける文化人です。セレン・ピッチンニ氏は今年、一族にゆかりの深いカステルヌオーヴォ・デル・ガルダで夏の芸術祭「フェスティバル・リフレッシ・デル・ガルダ」を立ち上げました。今年の内容はピッチンニ他の作曲家を集めたバロック・コンサート、スカラ座バレエ団のダンサーたちによるバレエ公演、今年生誕100年となるマリア・カラスについてのレクチャーの夕べ、ソプラノのカルメラ・レミージョによるピッチンニの音楽を中心としたコンサートなど。そしてフェスティバルの最後の晩が7月8日、ピッチンニ賞の授賞式があるオペラ・ガラ・チャリティー・ディナーでした。


ガラの会場は大きなゴルフ場が併設されているリゾート・ホテルでした。ホテルに隣接しているゴルフクラブの2階に大きなテラス付きレストランがあり、授賞式はここでおこなわれました。


ゴルフクラブ・パラディーゾ・デル・ガルダが会場でした


この日はレオ・ヌッチさん以外にもう一人、ビッグ・ゲストが招待されていました。それは女優のサンドラ・ミーロさんです。イタリアでは誰でも知っている大女優で、なんと今年90歳でいらっしゃいます。フェデリコ・フェリーニの名画「8 1/2」(1963年)に愛人カルラ役で出演している方です。ミーロさんは詩人でもあり、ガラ・ディナーの前の夕方に、ホテルのプールサイドでミーロさんとセレン・ピッチンニ氏が、彼女の書いた詩や、彼女の人生について対談するトーク・イベントがありました。


サンドラ・ミーロさん(右)とセレン・ピッチンニ氏


ミーロさんはかくしゃくとしている、などと言ったら失礼にあたるのではと思うほど若々しく、頭脳明晰。トークの内容もご自身の人生や、詩についての含蓄のあるお話がたくさん。本当に素敵でびっくりしました。


そしてその会場に、レオ・ヌッチさんと奥様のアドリアーナさんが来ていました!私はイタリア語通訳の仕事を通じてヌッチご夫妻とは過去に日本で何度かお会いしていたのですが、元気なお二人に再会できてとても嬉しかったです。

レオ・ヌッチさんと奥様のアドリアーナさん


トークを終えたサンドラ・ミーロさん。素敵でした!


ガラ・ディナー前のアペリティフ・パーティーでも大人気


ディナー前のアペリティフですでにこの大量のご馳走でした
サンドラ・ミーロさんのトークが行われた美しいプール・サイド


長くなってしまいました。次回はいよいよレオ・ヌッチさんの授賞式の様子をレポートします。乞うご期待!

*)ニッコロ・ピッチンニ基金のHPはこちらです。