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ゲームライターマガジンに参加することと、もう遊べない『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の話

自分がこのnoteを始めたのは、カワチさん主催の「プロのゲームライター陣がゲームについて語るマガジン」という企画が立ち上がったのが理由だったりします。そんな自分がゲームライターになったのは電撃PlayStation誌上で『モンスターハンターポータブル 3rd』のライター募集をしていたのがきっかけ。そのまま電撃メインでライターを続けて今に至ります。『MHP3rd』でライターを始めたからというわけではありませんが、担当するタイトルはアクションが多め。最近は動画作成時のプレイを担当していたりもします。

体験を共有できないからオススメしないベストゲーム

 あえて言い訳をするなら、この自己紹介を書くのが遅れた原因のひとつが「自分の一番好きなゲームについて語ってほしい」というオーダーがあったこと。ゲームメディアで記事を書いている以上、ゲームは好きですが一番というとこれが難しい。むしろ記事を書くために人並みより多くのタイトルに触れた結果、DLCを追い切れず一番に挙げるにはおこがましいということもあります。

 最終的に自分のなかで他のタイトルと一線を画すものと確信できたのは『ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ(以下、D&DSOM)』。90年代にゲーセンに行っていた人なら多くの人が目にしたことがあるタイトルでしょう(写真は後述の『Dungeons & Dragons -ミスタラ英雄戦記-』のものです)。

 少し解説しておくと『D&DSOM』は1996年にアーケードでリリースされたベルトスクロールアクションです。舞台になるのは王道ファンタジーという単語で頭に浮かぶだろう世界。伝説の剣があって魔法があって、敵がゴブリンだったりドラゴンだったりして、まあそんな感じです。さすがに20年前のタイトルなので、アーケードで見かけることはまれですが2013年にPS3で発売された『Dungeons & Dragons -ミスタラ英雄戦記-』に収録されています。

 間違いなく自分のなかでベストに挙げられる『D&DSOM』。ただ、今アーケードで『D&DSOM』をプレイしても、過去に自分が体験したものと同等の感覚は味わえません。というのも自分のなかで『D&DSOM』が一番になっているのはゲーム自体もさることながら、当時のアーケードとしては少し変わったプレイ体験が理由にあるからです。

『D&DSOM』はベルトスクロールアクションということもあり、クリアまでプレイすると1プレイが1時間に達することがザラ。今でこそアーケードでも時間に比例してプレイヤーにお金を払ってもらうタイトルがありますが、当時は1回のプレイに対して定額でゲームが遊べるというのがゲーセンの当たり前でした。しかも『D&DSOM』はファンタジー世界がモチーフのため、味方を回復する魔法あり、強力な攻撃魔法ありと、数あるベルトスクロールアクションのなかでもプレイヤー側に強力な手札が豊富。決して高難易度なゲームではないこともあり、うまい人が初心者をクリアまで牽引していくこともできました。

 これは見方を変えると、遊ぼうと思っても誰かがプレイを始めたところだったら1時間待ちがほぼ確定するということ。遊びたいゲームを遊べない1時間は長いです。今のように整理券などで順番が管理されることはあまりない時代だったので、別のゲームを遊んだ合間に『D&DSOM』をチラ見してプレイが終わりそうなら並ぶ。遊びたいのが自分もしくは、自分たちのグループだけならこれでよいのですがライバルがいるときのいつ並ぶかのチキンレースはストレスでした。今だったらスマホで遊びながら待つという手段もあるんでしょうけれどね。

 ただ、これは『D&DSOM』を遊ぼうとしていた人すべてに共通するストレス。そのため、リリースからしばらく経つと自分の通っていたゲーセンのなかには、同じく『D&DSOM』を遊びたい見知らぬ人と一緒にプレイする文化が生まれた場所がありました。プレイしている人を後目に「自分はファイターを使う」だとか、「初心者がいるからクレリックが1人欲しい」だとか相談して冒険へ。慣れている人が集まるようなら弱キャラとされていたシーフとドワーフだけでパーティを組んでみたり。比較的難易度の低いタイトルだったこともあって、知らない人と遊ぶ微妙な息の合わなさも含めて友人と遊ぶのとはまた違った面白さがありました。ゲームを遊ぶためにはその場に行かなければいけないアーケードならではの楽しみでしたね。

 ただ、知らない人とパーティを組んで遊ぶという経験の敷居は2000年代に急速に下がっていきました。2000年には『ファンタシーオンライン』、2004年には『モンスターハンター』が登場。間の2002年には『ファイナルファンタジーXI』が発売され、コンシューマでも見知らぬ人とのオンラインプレイが当たり前になりましたよね。今ではスマホでも協力プレイができるタイトルはいくらでもあります。そういったタイトルが影も形もない、赤の他人との協力プレイが珍しかった時代だからこそ、自分のなかで『D&DSOM』は他のタイトルにはない思い出を作ってくれたわけです。

 お姉言葉を使いこなす強面のおじさん、自分が力尽きると奇声を上げつつコンティニューするヤベェお兄さん、一緒に遊ぶといつもこっちを自宅に招こうとするもっとヤベェお姉さん、今どこでなにをしているんだろうなあ。

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