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イソップ&ROトラベルキットの感想

学生の頃、学校の隣くらいの距離にイソップがあった。店内は薄暗く、いつまでも工事中なのかと思わせるような殺風景さで、当時は①怪しい不動産屋②クセの強い紅茶屋③地味な石鹸屋のうちのどれかだろうと思っていた。
その地味な石鹸屋でお買い物するようになるには、ファーストコンタクトからさらに10年の月日を要した。オシャレな人間は大体イソップを買っとる。オシャレにならなければという謎の焦燥に駆られ初めてボディクレンザーを手にしたときは、「クレンザーって書いてあるけど粉じゃないんだ……」と思ったものである。ゼラニウムボディクレンザーめっちゃいい香り。
学生さん、イソップをいつでも買えるくらいになりなよ。それが人間えら過ぎもしない貧乏すぎもしない、ちょうどいいってことなんだ。いやボディソープに5000円はふつうに高いと思うが……。

2022-2023AW

リックオウエンスの服は一度も買ったことがなく、電灯が頭についてる程度の知識しかなかった。勝手なイメージだが、文明が衰退し廃墟と酸性雨だけが地上を支配している時代に、前世代の人類が残した衣服をボロ布になるまで着ているっぽい世界観を感じる。
そしてイソップのコンクリート打ちっぱなしの内装や薄暗い店内は、電気がロストテクノロジー化して自然光だけで暮らす未来を思わせるし、官給品みたいに感情を欠いたラベルデザインもディストピア味(あじ)がある。
このアーバンなゾンビである両者のコラボレーションは、マヂ類友だしごく自然な成り行きであろう。


なんか公式の画像を見るとこんな感じなので、実際に届いたパッケージを見たらスケスケの下着に包まれていてびっくりした。花嫁の顔を神秘的に覆うヴェールのようでもある。そっと布を剥がすと無防備なリサイクルパルプがあらわになり、これからは俺がお前を守るぜという覚悟とともにROトラベルキットと俺の婚礼の儀。

ナスに着せた

この布、リックのタグがついてる! いつもはコレクション名が書いてあるところにイソップのロゴが書いてあってエモーショナルやね。

ROCLシャンプー

2015SS

泡立たない。致命的なまでに。量が足りないのか? と思ってドバドバ出すけど手から溢れるくらい使っても一向に泡立つ気配がない。そういえばリックオウエンスのモデルって長髪か髪がないかのどっちかだな……。おそらく彼らのように特に泡立てる必要がない人に向けて作られているのであろう。髪全体にシャンプー液を行き渡らせようと一生懸命頭皮を揉み込んでいると、滑りの悪さにギシギシと髪が抜けていく。禿げちゃう!

ROCLコンディショナー

何か知らんがゴムの匂いがする。ノート表記を見るとベルガモットミント/シダーウッドの樹皮/ラベンダーの茎。植物が絶滅した世界で、木を見たことがない人が太古の人類が残した記録をもとに廃材で再現したラベンダーはこんな香りがするのかもしれない。
酸性の雨が容赦なく大地を溶かす。コンクリートは裂け、廃タイヤは朽ち、全ては砂に帰す。雨が上がり、乾いた熱風が溶けたゴムの死臭を運んでくる。やがて俺たちも土に溶けていく日がくるだろう。

ROコリアンダーボディクレンザー

やーーっと普通に使えるやつきた!!! っていうかこれはめちゃくちゃいい。単品で買ってもいい。植物が絶滅した死の惑星から、急に家賃200万のタワマン最上階ガラス張り七色発光バスルームに転移する。自分が見たことあるタワマン最上階ガラス張り七色発光バスルームはもっと七色に光っていたのですが、適切な画像が見つかりませんでした。
ノートにコリアンダーシードとある通り、結構パクチーそのまんまの香りがするのだが、このさっぱりとした酸味と苦味がコンクリートの現代建築と共存する鎮守の森を思わせる。アーバンな女になりたいなら。

ROレゾルートボディバーム

黄色みがかった見た目とこってりしたテクスチャ……ユースキンひび割れクリームだこれ! スーッとした清涼感なんかもそれっぽい。しかしパチュリの苦味が、さり気なく羽織ったテーラードジャケットのようにマスキュリンな魅力を醸し出している。コリアンダーボディクレンザーとセットで使えばめちゃモテ間違いなし。ただし髪を乾かす際にコンディショナーのゴム臭がすべてを台無しにしていく。タワマンも鎮守の森も仕立てのいいジャケットも、全ては溶かされ避けがたい破滅へと向かっていく。

ストイック オードトワレ

最高の香り。これのためにROキットを買ってもいいのではないでしょうか。シャンプーとコンディショナーのことは忘れろ、オアシスはここにある。
ボトルの見た目は完全にヨウ素液。手首がやばい色になったらどうしよう……と思うのも束の間、インスタのオシャレ北欧ハウス画像から香ってきそうなシャープなグリーンが胸を突き刺す。コリアンダーシードのざっくりとした苦味、ペッパーの煙っぽさ、エレミの透明感が、居住空間と森を隔てている繊細な1枚のガラスを想起させる。台風が来たら割れるんじゃないか? 冬は寒いんじゃないか? 近所の目が気にならないのか? 金持ちはそんな些細な事は気にしないのだ。巨大なガラスのフレームの中に大自然すらも支配する、この眺めこそ成功の証。
テラリウムとか東京都庭園美術館とか、人工対自然が好きな方に。

セラミックビーズ

かっこいいけど使い所がない。白だとホコリが目立つから出しっぱなしにしたくないし……とか思ってるうちに無くした。

手提げ袋

これめっちゃいっぱい入る! クリーニング屋で冬服6着回収しても余裕。ただし生地が薄いからキャベツとか重いものは無理。いっぱい入るからってコミケに連れて行ったりしないように。

全体の感想としては、めちゃくちゃお得なセットだと思う。特に香水が素晴らしい。イソップお得意の都会的グリーンの真骨頂。これ恒常ラインナップに入れてくれないかな……ルラボのアナザー13みたいな感じで。ところで、イソップのシャンプーって全部こんな泡立たない感じなんですか? ボディソープがすごくいいから他のも挑戦したいけど勇気が出ない……。いつかリックオウエンスをかっこよく着こなせるベリショ女子になれたら買います。

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