職場のインターンに来た学生がめちゃくちゃ香水臭くて、今どきこんな中世フランス人みたいなつけ方する人珍しいなと思いながら、この甘く作り物っぽい花の香りが何なのか必死に思い出そうとしていた。当たり障りない世間話をしながら
①いい香りですね、何の香水ですか？と聞く
②記憶を頼りに自力で特定する
の狭間を揺れ動いていると、なんと目の前でボトルを取り出しタッチアップし始めた。人の目の前で香水つけることなんてある？　っていうかジョーマローンじゃん！！　ラベルの文字は読めないが間違いなくワイルドブルーベル。自分だとスイカになるけど、この人がつけるとチュベローズっぽくなるんだな～と感心しつつ、所感欄に「香水キツイので不可」と記入。ボトルを見ないと答え合わせできないなんて、自分の嗅覚はまだまだだな。

それにしても、ジョーマローンは毎月のように新作を出していてすごい。イングリッシュペアー&フリージアのボトルリニューアルとかで3ヶ月くらい時間稼いでいたときもあったのに。ところが立て続けに発売された可愛いボトルのブロッサムズもブリットコレクションもピンとこず、「香料たちが瓶から外に解き放たれるのを待っているのに自分は何をやってるんだ……」と床に横たわる日々。

そんな中登場した今回のナイトコレクションは、なんとカモミールとラベンダー！！　アイオライトのように薄墨かかった青のボトルが美しく（コロンが100ml展開しかないのはこの際許す）リラックスせよといわんばかりの優しい香りたち……何故か週7日仕事してたり12時間会社にいたりする自分への癒やしの贈り物であろう。ありがとうセリーヌ・ルー。

ムーンリットカモミール

7月頭は喉の調子が悪くて、毎日フレッシュネスバーガーに行ってはカモミールティーを頼んでいた。お店で飲み終わっても会社に持ち帰ってまたお湯を注げば無限に飲めるんよね。マヂこれ魔法？　それと同時に香水はメモワールデュヌオドゥール（毎回正しく言えない）（アルベルト森安のカモミール香水）をつけてた。革装の聖書みたいなデザインの箱と、伊達巻ぽいボトルがかわいい。ただラストのバニラとムスクが野暮ったくムワッとして、30度超えがちな日々では手が伸びにくい。
そんなときタイミングよく発売されたのがJMのムーンリットカモミールコロン。カモミールのまったり感はありつつも、ベルガモットや謎の葉っぱ成分が終始ビリリとしてハーバル味を主張。最後のムスクも甘みが出ずにシトラスの爽やかさをたたえていて、どの段階においてもさっぱりとして猛暑日も100点の清潔感。公式サイトでは発売直後からずっと売り切れてるけど（7/24現在）、アットコスメでは在庫が残ってるから今すぐ買うといいと思います。アットコのほうが10％ポイント返ってくるし。

フィグ&ロータスフラワー

フィグといえばフィロシコスという圧倒的王者がいるので、もう他のいちじく香水とか作っても負け戦でしょ……とクソ失礼なことを考えていた。ところがあるとき、前を歩くバンドマンぽいお兄ちゃんからフィグっぽい香りがして、なんてステキなんだ……メンズでいちじくは攻めてるな、全然アリだなと思いながらどこのフィグか頑張って特定しようと麻薬探知犬並みに鼻をフル稼働させた。
結局全然わからず兄ィを見失い、フィグ😥と思ったのもつかの間、鞄のポケットに1枚のムエットが入っていることに気がついた。アッこれジョマロで吹いたフィグ＆ロータスフラワーじゃん！！！　兄ィじゃなくてカバンから香ってたんじゃん（おわり）、そして購入。
フィロシコスとは全然違ってフィグのジューシーさはあまりなく、水辺の草花のほうがメインの透明感ある香り。海外化粧品によくあるユースキンっぽいコロン臭＋アクアなので、男性がつけても違和感がない。フィグを感じるのはトップだけで、ミドルはアクア、ラストはネロリとベチバーなのでそらメンズでもいけるわね感。あとJMにしては持続が地味に長い（5時間くらい）。バンドマンまたは古代の空中庭園が好きな男子におすすめ。

グレープフルーツ

もうレギュラーの香りはだいたい持っていて、あと買ったことないのはグレープフルーツか154かシルバーバーチラベンダーといったところ。
グレープフルーツは店頭で試すとシトラス6：スッキリグリーン4くらいの都会的な香りが心地いいのだが、アットコのレビューが「おっさん」「メンズ」「整髪料」と散々だったのでなかなか購入する勇気が出ず。しかし、ある日メルカリにおいて信頼できる売人（うりんちゅ）が破格で出品していたため、これ幸いとばかりに入手。日々つけてて思うのは、もっと早く買っておけばよかった！！！！　ということ。ジョーマローンの中で一番好きかも。アールグレーキューカンバーが一番だと思ってたけど同率。
コンバイニングおすすめはネクタリンブロッサム。ホテルの朝食バイキング会場みたいな香りがして清々しい気持ちになれる（旅行好きなのでホテルを連想させる香りに弱い）。公式でオススメしているバジル＆ネロリもグレープフルーツコロンが持ってるグリーン部分をネロリの甘さが水彩画的にぼやかしてよし。俺自身がモネ。

チュベローズアンジェリカ

クリ～ミィなんだけど甘くなくて、なんか杏仁とかココナッツぽい。脳が勝手にココナッツを感知して奥歯にシャキッとくる1本。公式だとアンジェリカはトップになってるけど、おろしたてのスニーカーのようなステキな苦味が出てくるのはつけて10分後くらい。アンジェリカ好きだから甘々すぎるチュベローズとの組み合わせは悪魔と天使のマリアージュ、香水界のアフォガードや～と期待したのにアンジェリカが弱すぎ。巨乳レズ生徒会長がノンケ不良女をあっさりレズ落ちさせるみたいな展開。もっと不良が爆笑しながら生徒会室に火を放つくらいの尖った展開が見たかったのに、どうして顔を赤らめながら手を繋いじゃってるの？　まあこういう強すぎる天使に屈服させられる展開も嫌いじゃないけど……。周りに香る印象としてはツルッと汚れがなくて平板なチュベローズ。

チュベローズといえばドソンなので比較すると、ドソンのほうが断然写実的。花の真に迫ったリアル感がおばけみたいで怖い。葉っぱの枯れた部分や土のような雑味があって、鼻を近づけすぎるとくさっとのけぞる部分すらある。心地よい花の蜜っぽいときもあれば、キュウリっぽい時もあり、渋みエグミを感じるときもある。油絵を近くで見ると絵の具の塊なのに遠くから見ると一つの風景になるように、少し離れたところから香ると、白い花だけでなくその周りの海辺の風景まで見えてくる。ドソンのこと最初は南国エッチとか言って馬鹿にしてたけど、マジで記憶を香りで表現している芸術だと思う。ってか半分以上ドソンのレビューになっちゃった。（ディプティックの最初のレビュー恥ずかしすぎて全部書き直したいんだけどまだ書いて1年も経ってないしキリないからやめておく）

スカーレットポピー

店頭で試すとキャラメルの印象しかなく、どのへんがポピーなのか全然わからない。もっと「ローストシュガー＆キャラメルプラリネ」みたいな名前の方が良くない？　JMお得意の「＆」を捨ててスカーレットポピーって単体で言い張るほどポピーなのか？？　と常々疑問に思っていた。ただ、赤いボトルは超絶可愛いしアメリカのターゲットでマイリトルポニーのフィギュアを爆買いしたときのことを思い出すので好き（色しか関係ない）。
2022年7月に発売されたコロンインテンスコレクションに、なんとこのスカーレットポピーの9mlが入っている。なんとなくアブソリュとともに別格感があったので、まさかミニボトル入りしてくるとは思わなかった。流石にミニボトルの色までは赤くできなかったか……（そこだけはちょっと残念）でもこのサイズで赤くしたらルブタンみたいになっちゃうもんな。

まず吹きかけた瞬間、ハイソフト工場に転移。とても濃厚なキャラメル香が半径1m内に立ち込めるため、必ず外出前に自宅でつけること。間違ってもインターン先の社員の前で吹いたりしないでほしい。甘いだけではなく洋酒のような深みもあり、冬はきれいに香るだろうなあと思う。夏は包み紙にべったり溶けた様子を連想させ胸焼けするが、2時間ほどたつとやわらかくポピーが咲き始める。ポピー＆バーリーでおなじみのほっこりフローラル。公式ではラストにトンカビーンとあるが、なんかトンカ君はトップでフライングしてなかった？　本当にラストまでいる？　嗅覚が雑なのでよくわからない……

ポピーの存在感が足りないなと思ってポピー＆バーリーとコンバイニングすると、大変なことになる。めっちゃポピー。頭がマリメッコになっちゃう！！　ウニッコのワンピースを着たい日におすすめ。

ウード&ベルガモット

ヒーリーで買った（注文してないけど勝手に入ってた）AGARWOUDがすごくスッキリ透明感のある香りで、これまで自分がウードに対して抱いてた、喫煙所の澱みたいにべっとりしたイメージを覆す体験だった。それ以来ウードへの苦手意識がやわらぎ、ジョマロならジャングルの樹液じゃなくて黒スーツが似合うスタイリッシュなウード像を提示してくれるだろうという期待も込めて一吹き。

レモンピールをかじったようなビリビリとした苦味とともに、香ばしいウッディが立ち上ってくる。イングリッシュオーク＆ヘーゼルナッツにも似た、切り倒したてのフレッシュな木の幹の印象。どうしてか2歳児まで「いいにおい～」と腕をスリスリしてくる。確かにJMのイメージビジュアルに登場するような白スーツの黒人に似合う香りだ。だがこれを日常的に纏うにはどう考えても身長が足りない。

公式サイトのレビューで「ブラックベリー＆ベイとの組み合わせが最高」と書いてあったので試したところ、急に腕が果樹園になったのでびっくりした。グレープフルーツ、ぶどう、桃……何の魔法か、彼ら主体であるウッディや草感が完全に脇役になり、フルーティーが中心となる予想外の展開。これ考えついた人すごくない！？　調香師か？　これなら身長180cmじゃなくても似合いそう。ちょっと（香り的にも体験的にも）ねるねるねるねっぽさがあるので、好きな人は試してみてください。

なんかジョーマローンは素材の名前がメインで調香師の思い出とか思想が前面に出てないから適当に書きやすくてもうレビュー4つめになっちゃった。ジョーマローン以外のレビューも適当だけど……ナイトコレクションはラベンダー＆ムーンフラワーのほうもコロンを出してほしいなあ。エスティーローダーさんよろしくお願いします。
っていうかエスティーローダー自身も香水があるのか……

ボトルの並びとムービーがラールエラマティエールっぽい！　でもディスカバリーが8種で4000円なのは良心的でステキだなって思います。ジョーマローン？　コロンコレクション（¥14,300 9mL X 5）を買え。