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LE LABOの感想1

https://www.lelabofragrances.jp/shop/city-exclusives/

シティエクスクルーシブのフルサイズ発売キタ━━(゚∀゚)━━!!
っておい! まだヴァニーユ(パリ)のミニサイズ発売してなくない!? 店員さんによると、バニーユ1.5mlは他の香りと5本セットのやつしかなくて、単体での発売ができないらしい。はあ…パリってそういうところあるよね。アタシは1650円で買われる安い女じゃないのよ的な。でも個人的にはヴァニーユの香りって小学生の匂いつき消しゴムの香りだと思うんよね。

ローラー使う機会ある?

店頭で肌につけてもらったときは、バニラなのに尾を引かないサックリ感! しかしなぜか気持ちが6さいになってしまうッッ! と、チープな香りとエクスペンシブな値段(15ml 17050円)のアンビバレンスに脳が引き裂かれそうになってしまった。買わなくていいやと思っていたのに、いざ「1.5mlないです」と言われると15mlを買いたくなってしまうアホの心理(予約済)。

初めてルラボを買ったのは去年の10月。
当時は香水にハマりたてで、クリスマスのために限られた予算をどう使うか検討(預金を解約)していると、なんとあの香水界のスチームパンク担当LE LABOもクリスマスセットを出すというではないか。脳内のヘラルドエンジェルが「聞け、ルラボにおいて5ml×6=15400円は実質無料でしょう」というので、何かよくわからんがホリデー ディスカバリーセットを購入することにした。シティEXに入る前に、まずはこのセットについて感想を述べる。

ルラボといえば、人類滅亡後の薬局を思わせる質素な板張りの店舗、シンプルなボトル、そして超超高いお値段……最小サイズの15mlが1万円という世界なので、たしかに今回のセットはお得。それって霊感商法とかで200万のツボの入口として1万円くらいの塩が用意されてるやつじゃん。
そんな大雑把な前知識とともにさっそく開封。外箱が大味なダンボールで、開け締めするたびにモキュ!と鳴るのが気持ちいい。でも37000円のフルボトルも同じダンボールなのはちょっとどうかと思うわよね。

以下、ホリデーディスカバリーセット6点の感想。

ANOTHER 13 (アナザー 13)

まずは「雑誌の香りがする」と大人気のアナザー13から。オタクは図書館の香りとかそういうのにすぐホイホイされてしまう。でも雑誌の香りって珍しいよな……コート紙のしょっぱ味があったりするのかな? そんな思考は脳を突き刺す金属臭によってすぐ中断された。「ウッ!?」ビデオテープを火で炙ったかのようなガサガサとしたケミカル臭が、「俺を真近で嗅ぐな」と脳に警告を送ってくる。こんなヤバイ香水が世の中に存在するなんて……
公式の説明によると、「アニマルムスクを中心に、ジャスミン・モス・アンブレットシードアブソリュートなどの香料が溶け合って魅力的なハーモニーを奏でます」魅力的なハーモニーっていうか……どっちかっていうと不穏系アンビエントじゃない? 私はこの香りでリトルバスターズの「何も起こらなかった世界」を思い出しました。PMMK最高!

腕をなるべく鼻から遠ざけると、だんだんと情景が浮かんでくる。冬、忘年会でうっかり飲みすぎてしまい、火照った頬を冷ますべく一人裏口から抜け出す。夜風が鼻先と頬をひんやりと包み、白い息が店の排気口の焼鳥臭い煙と混じりあって溶けていく。林立するビルの隙間から、遠くを走る車のライトがキラキラと明滅する。風景は輪郭を失い、自身も床と一体になる。非常階段の冷たい床板が心地よい。風の音がごうごうと響く。むせるような金属の香りが喉にまとわりつく。このまま朝を迎えたらきっと後悔する、一抹の焦りは抗いがたい眠気に飲み込まれていった。
これは酔いつぶれて非常階段で寝るときの香り。コロナで飲み会に行けない人におすすめ。

SANTAL 33 (サンタル 33)

ルラボで一番人気のやつ! アメリカではこれをつけてる人が多すぎて地下鉄からナイトクラブまで同じ香りがするとか。
火薬のようなスパイシーさ、タバコの甘み、あーなるほどアメリカ人の体臭っぽいな~と思うのもつかの間、anotherでお世話になった金属臭が再び襲いかかる。この鼻と喉をチクチクと刺すような刺激臭の正体は一体……? ちなみにフエギアに行ったときもこれが多くてダメだった。
この匂いを感じる商品はノートにムスクと書いてあることが多いので、あの~犯人わかっちゃったんですけど……と思ったが、大体の香水はムスクが入ってるので犯罪者の100%がパンを食ったことある理論でしかない。というかレビューを読んでも金属臭について言ってる人が全然いないので、自分だけに見える幻覚なのかもしれない。ルラボの製品の3割くらいはこの匂いを感じるので、仮の呼び名としてルラボ臭としておきます。
(ちなみにタバ、マッチャ、キュイールもルラボ臭がある)

ROSE 31 (ローズ 31)

何か知らんが持続がヤバすぎる。寝る前につけて翌日の昼過ぎまで香っているので、18時間はもつイメージ。香りの地縛霊。アナザー、サンタルと曲者揃いだったものの、バラは好きだから何とかなるかも! と思ったがこいつこそが曲者コンテスト最優秀賞。乙女系マッチョの体臭。シティエクスクルーシブのベローズのほうがちゃんとローズしてる。

THE NOIR 29 (テ ノワール 29)

これとROSE31とBAIE19は正直全部同じような甘酸っぱ~い濃厚な香りがして全然区別がつかない。「香水ハマって1年経って嗅覚成長したな~」とか思ってたけど……俺は乳母車の上で世界を見た気になってるおませな赤ん坊でしかなかったのだ。
テノワのほうがフィグが入ってる分ROSE31より酸味が少ないが、そのせいで脳が期待したバラ香を感じ取れず頭が痛くなってくる(そもそもバラの香りじゃないからね)。しかし本当にどのへんがテ(茶)なのか教えて欲しい。例によってワンプッシュで大音量、持続が死ぬほど長い。爆音でJPOP流しながらあぜ道を疾走していくガンダムみたいな車を連想させる香り。

BAIE 19 (ベ 19)

世界香水ガイドのルカおじが、ポアブル23のレビューで「ルラボのことだからタイトル通りの香りがするわけない」と言ってたけど、ベもその一例。濃いピンクの甘酸っぱい香りにROSE31やテノワとの類似を感じるが、ベはそこに濡れた土くささが落ち着きをもたらしている。サイトに「長い間日照りが続いた後の最初の雨に伴う独特の香り、ペトリコールを表現しています」と書かれているとおり、突然の雨で中止になった運動会の寂しいグラウンドの香り。クリスマスの6本の中で一番マシ。

BERGAMOTE 22 (ベルガモット 22)

あと何回この画像使うんだろう…

あまりにも影が薄すぎて最後になった。っていうかアタシが知ってるベルガモットと違う……上記3つのうんざりするほどの濃さは何だったのかというくらい薄味で、何かもう柑橘ですらない。いい匂いのセロハンテープ。

というわけで、初めてのルラボ体験は6本中5本が苦手という結果になった。1年かけて定期的に嗅いでも評価が全然変わらないので、これはもう単純に私には早すぎたんだと思う。ごめんね、ダフネ・ブジェ……(名指し)

こうして、この夏もANOTHER13がしっかり非常階段であることを確認していると、シティエクスクルーシブ発売の報が恐怖新聞的に窓から投げ込まれてきた。知ってる方には説明不要と思うが、年1回、8月とか9月だけ買えるという世界各国限定の香りだ(普段はその国に行かないと手に入らない)。しかしここまでルラボとの相性が最悪だと、15種類あっても仲良くなれる気がしないっていうか……

気づいたときにはルラボに電話し、「シティエクスクルーシブ1.5ml全部ください」と取り置き完了していた。発売日時点では3種類だけ未入荷だったので、ヴァニーユ 44アルデヒド 44ベンゾイン 19はまた後日取りに行くことに(と思っていたがヴァニーユだけは冒頭で述べた通り単体売りなし)。
8月1日に1.5mlサイズが発売で、9月から1ヶ月間でかいサイズが買える。8月のうちにしっかり試してフルボトル買ってくれよな!ということなんだろう。一通り試して記憶に残ったやつだけ書く。

TABAC 28(タバ 28) マイアミ

画像は適当

タバコじゃなくてぶっとい葉巻の香り。サンタルのゴツめの兄。甘くスパイシーななかに、やはり胸にガサガサとつっかえるルラボ臭がここでも出現する。が、葉巻の香りが力強いのでそこまで気にならない。
ブラインドを落とした薄暗い部屋に漂う煙、交わされる取引はなにやら非合法な雰囲気。タバコのほかにもウードとかカルダモンが入っているとのことだが、あくまでタバコの香ばしい深みを引き立てるための脇役。このままエンドレスにチェーンスモークなのかとビビっていると、ラストがコットンのようにふんわり甘くて優しげなことに驚く。ま~悪いやつってのは優しい顔と悪い顔を使い分けるからね。

LIMETTE 37 (リメット 37) サンフランシスコ

シティエクスクルーシブはセドラ、シトロン、ビガラード、リメットと謎に柑橘が4種類もある。ベルガモットの悲しき亜種で、つけて3分後につけたことを忘れるセドラ、シトロンは割愛。ビガラードは悪くないけどパウダリーな甘みが強くてこのお値段でこの香りならジョーマローンのオレンジブロッサムを買ったらいいんじゃない?と思った。

アルミのフタ剥がすときテンション上がる

で、リメット。リメットはライムのことらしいんだけど主役はジャスミン。自分が訪れたことのある数少ない海外の都市・サンフランシスコの香りということもあって、思い出補正でめちゃくちゃステキな香りに思えてしまう。
青い空、乾いた日差しと色あせた看板、足元をうろつくカモメ、人々の健康的な肌……。トップの柑橘はほんの一瞬で、5秒あるかないか。すぐに甘みのないジャスミンと安物の石鹸のような香りが訪れ、水とお湯を行ったり来たりするシャワーを慌てて浴びた旅の思い出をよみがえらせる。石鹸の主張が落ち着くと、ジャスミンやベチバーのほのかな苦味と、ムスクの清潔感のある柔らかさが「大人になったんだろ?また来いよ」と語りかけてくる。酒が飲めないけど大人気分に浸りたくてホテルの売店で買ったサンペレグリノの味を思い出す。15mlボトルほしいけどアメリカに行きたくなりすぎるから買わないほうがいい。

GAIAC 10 (ガイアック 10) 東京

秘湯鶴の湯

言わずとしれた温泉の香り。後述の天使ムスク25のイケメンの兄。店頭で嗅いだときは何も感じなかったが、一人静かな部屋で試してみるとそこは秘湯鶴の湯。ヒーリーのNote de YUZUを嗅いだときはどこが柚子風呂だよwと外国人が繰り出すなんちゃって日本を笑っていたが、NY出身のルラボがここまで高解像度で温泉を表現してくるとは……
今までお風呂香水としてはビュリーのヴァルパンソンの浴女一択だったのだが、かなりずっしり香るので、全身大理石の女が重たいケツでのしかかってくる感じが否めなかった。ところがガイアック10は軽さと落ち着きのバランスが絶妙で、お湯の重たさのなかに簀子の木材や石鹸、山々が醸し出すフィトンチッドの存在がちらほらと感じられ、旅に出たい……と涙を流しながら田沢湖行きの切符を買うことになる。
鶴の湯は1泊12000円だが、ガイアック10は15mlで17050円、100回近く温泉に浸かることができる。漢なら両方買うべき。たとえ一緒に行く相手がいなくても。

POIVRE 23 (ポアブル 23) ロンドン

コショウってこんなに表情豊かな香りがするんだ……!と衝撃。ちょっとレプリカのオータムバイブスに似て、枯れ葉のような甘酸っぱさがある。ゲラン系の香水のラストによくあるアンバリ~でバニラな茶色い香り。
身近にはS&Bのコショウしかないので、これが本当にコショウの香りなのか確信が持てないが、黒くなる前のコショウはこんな甘い香りがするのかな?
誰だって若い頃は甘い匂いを漂わせていろんな虫と戯れるもんよ。

MUSC 25 (ムスク 25) ロサンゼルス

みんな大好きUrbanOutfitters

ルラボ臭の犯人はムスク、そう思っていた時期が私にもありました。もうぜ~ったい非常階段の香りするでしょと思っていたが、そのあまりの無害さ、天使のような柔らかさに泣いた。さすが都市名にエンジェルを内包するだけのことはある。
この香りでロスを思い出すことはないけど、強いて結びつけるとしたら清潔なショッピングモールの新品の衣類の匂い。それがアメリカにあるというだけで100倍ファッショナブルに見えてしまうeyecandyなスポーツウェアたち…試着室でドキドキしながら蛍光色のコットンスウェットに頭をくぐらせるときの香り。
はあ、またUrbanOutfittersに行ってマカロニチーズ柄の靴下を買いたい…

というわけで、ファーストコンタクトは最低だったけど、いろんな香りを試しているうちにルラボの個性(不完全さ、あんまり他と似た香水がない、日本オタク)が感じられてよかったです。
取り置きを土日に受け取りに行ったら、レジがオイルショック並みに激混みで15mlも100mlもバンバン売れててビビった。あの空間にいると15mlの液体が17000円であることに何の疑問も持たなくなるので気をつけた方がいい。まあ個人的にはルラボに手を出してる時点で冷静じゃないとは思うけど……(ルラボは正直素朴だったり何かが欠けてる感じがする香りが多いので、値段を気にするんだったら別の店で買った方がいい)

皆さんは15mlどれ買いますか? 私はパチュリ24を買います。

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