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幼児期の遊びが、自分で考え仲間と一緒に未来をつくる力を育てる〜堀内亮輔

近未来ハイスクールの先生インタビュー、第六弾は保育士であり、プレイリーダーでもある堀内亮輔さんです。保育園の現場だけでなく、大学などで教えたり、子ども番組の監修に関わったりと幅広く活躍しています。

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遊びの消失~遊びを知らない子どもたち

近未来ハイスクール 小林(以下、近未来 小林) 堀内さんがプレイリーダーとして子どもたちと過ごす様子を何度か見学しましたが、子どもたちが安心しきって伸び伸びと遊んでいたのはもちろん、堀内さん自身が本当に幸せそうですよね。保育士・プレイリーダーになったのはやはり子どもが好きだったからですか。

堀内 子どもと体を動かすことが好きだったからです。保育士・幼稚園教諭の資格が取れる大学に入学して、そこで出会った恩師の石井友光先生による「子どもの運動」という授業で保育士・プレイリーダーを仕事にしていく面白さや、やりがい、魅力を感じました。

近未来 小林 保育士とプレイリーダー、両方の役割をになっているんですね。

堀内 保育士と聞くと仕事のイメージが湧きやすいと思いますが、プレイリーダーは何をする人なのかわかりにくいかもしれません。

プレイリーダーは直訳すると「遊びの指導者」になります。指導というと「教える」という印象を持つと思いますが、遊び方を教える人ではなく

「こんな面白い遊びがあるよ♪」

と遊びを届ける(紹介する)人です。いっしょに遊ぶ、もしくは子どもたちが自分たちで遊び始める環境を整える、そして遊びを通して子どもの発想を引き出すことが主な仕事です。私は様々な遊びの中でも体を動かす遊びを専門とするプレイリーダーをしています。

近未来 小林 なぜ大人のプレイリーダーが必要なのでしょう。子どもたちだけで十分遊べそうですが。

堀内 遊びを知らない子どもたちが増えているからなんです。

幼少年期の子ども時代は「からだ・こころ・あたま」が関連を持ちながら育つ時期です。例えば、大繩跳びひとつとっても、リズム良く連続して跳ぶ「からだの育ち」、10回跳べるようになりたいという意欲や縄を回す子と跳ぶ子が同調する「こころの育ち」、実際に何回跳べたかを数えたり跳び方を工夫したりする「あたま(かんがえる)の育ち」が見られます。

1985年頃(35年前)を境に子どもの体力・運動能力は低下しています。体力・運動能力から見られる「からだの力」の低下は同時に意欲やコミュニケーション能力といった「こころの力」、工夫したり、判断する能力といった「あたま(かんがえる)の力」も同時に低下していることが予想されます。

近未来 小林 問題は「体力が落ちてしまった」にとどまらないんですね。

堀内 そしてこの問題の背景には「遊びの消失」があります。遊べない、遊びを知らない子どもが増えているのです。そこで、子どもたちが自ら考え、友達と関わり、体を動かす遊びを届けるプレイリーダーの存在が必要になります。

近未来 小林 遊びを通じて、自分で考える力をつけたり、人といっしょに何かをするという体験を重ねていくんですね。

遊びは子どもといっしょにつくる

近未来 小林 保育の現場で大切にしているのはどんなことですか?

堀内 「遊びは子どもといっしょにつくる」ことを保育、もしくはプレイリードの理念にしています。

私が届ける遊びは2種類あります。1つ目は子どもの文化やスポーツ文化を伝承する遊び、2つ目は子どもといっしょにつくる遊びです。

近未来 小林 どのようにいっしょに作るのですか。

堀内 「子どもが遊びを見つけ、大人はそれに応える」ことを大切にしています。ですから、子どもに届けることばも大切にしています。

例えば子どもたちにボールを渡し「こうやって遊びます!」と伝えるとどうでしょう。子どもは受け身になります。

私は「みんなだったら、このボールでどうやって遊ぶ?」と声がけをします。自ら考え、試せるようなことばを届けます。3歳児の子は、近くにあった小さな三角コーンを逆さにして、その上にボールを乗せ「りょうすけせんせい見て!アイスができたよ!」って遊びを見つけて来るんですよ。

近未来 小林 確かにアイスだ(笑)。

堀内 大人からはなかなかでない発想ですよね。「わ~おいしそうなアイスクリームだね。じゃあアイス屋さんごっこしようか? 落とさないようにお友だちのところまで届けられるかな?」と子どもが見つけた遊びに応えていくことでどんどん遊びが発展していきます。

近未来 小林 体を動かす声がけが本当に自然。子どものワクワクが高まっていく様子が目に浮かびます。

堀内 そのような過程で、子ども自身がさまざまなことを考え、人やモノと関わり、多様な動きを経験していく。そんなことを大切にしています。

結果重視の直接指導よりも過程重視の間接指導へ

近未来 小林 堀内さんがいろいろな保育の現場でプレイリーダーをするなかで、課題に感じることはありますか。

堀内 「過程」よりも「結果」を重視することや「楽しければ何でもいい」という保育が多いという印象があります。

例えば、なべなべ底抜けを例に挙げてみましょう。知ってますか?

近未来 小林 懐かしい。

堀内 二人で手をつなぎ、その手を離さないように体を反転させ、また元に戻ってくる伝承遊びになります。

うまくできない二人組を見つけると「こっちの手を挙げて、ここをくぐるのよ!」「ほらできたでしょ!!」とやり方を教え、直接指導をする保育者・プレイリーダーが少なくありません。一方では「遊びだし、楽しいから良いのよ」とそのままにする大人もいる。こうした実践では「できた」や「楽しい」という経験は得られても、子どもの育ちが何も見られません。

近未来 小林 親でもそれはやってしまいそう。

堀内 本当は過程が大切なのです。この例でいえば二人組を変えてみたり、「どうやったらうまくできたの?」など気づきを聴き合う時間を設けてみます。こうした間接指導をすることで子ども自身が考え、聴き合い、協力しながらできるようになります。

同じ「できた」や「楽しい」経験でも、結果重視の直接指導と過程重視の間接指導では子どもの経験や育ちの質が変わってくると思います。

幼児期らしく生きる権利を尊重する

近未来 小林 保幼小連携で意識していることはありますか。

堀内 幼児教育(保育)をしっかり見つめることです。

年長児の担任が、小学校の先生と連携で話をして帰ってくると「小学校に通うようになると45分椅子に座るから、しっかり集中して座れるようにしてきてくださいと言われてきました。椅子に座った活動を取り入れたいと思います」と突然小学校のための保育実践が展開されることがあります。

近未来 小林 座れるように、しつけておいてください、ということですか。

堀内 年長児は小学校に行くための準備期ではありません。

年長児には年長児らしく生きる、幼児期は幼児期らしく生きる権利があります。特に幼児教育(保育)は小学校以降の学校機関とは異質な場所です。園内に入ると子どもたちが「ワンワン」「ニャーニャー」と犬や猫になって遊んでいるような場所ですから(笑)。教育とは全く関係ないようなこの姿も一人ひとりの子どもが自分らしく育っていく大切な時間です。

近未来 小林 子どもたちと一緒にごっこ遊びや手遊びをする保育士さんたちをみて、目線が同じでさすがだと思うんです。どうも照れてしまう。でもそれがとても大切なんですね。

堀内 私たち保育士はまず、自分たちが幼児教育(保育)で子どものどのような姿、育ち方を大切にしてくのかをしっかりと見つめることです。その上で初めて小学校の先生と対等な関係が築けるのだと思います。

幼児教育(保育)では何を大切にしてきたのか、小学校教育(1年生)では何を大切にしていくのか、両者が尊重しあい、関係を構築していくことが保幼小連携の第一歩だと思います。

近未来 小林 子どもたちがその年代において「らしく」生きる権利。成長過程に対して、大人が丁寧に向き合っていくことの大切さを改めて感じます。

この先は、どのようなことに取り組みたいですか。

堀内  私は保育士やプレイリーダーをする一方で高校・専門学校・大学の講師、実践研究、子ども番組の監修、研究会や子どもの遊びスクールといったコミュニティの主宰など様々な活動をしています。そこには様々な出会いがあります。この出会いを大切に子どもの幸せにつながるようなことを続けていきたいと思います。

近未来 小林 活動の幅が広いですね。
最後に、今回のイベントに期待することを教えてください

堀内 今回も新たな出会いがありそうです。子ども想いで教育が好きという先生がたの話を聴きながら、子どもの幸せにつながることを見つけたいと思います。

近未来 小林 学びの現場にいる人同士が集まり、相互にいろんなヒントが得られる会になりそうです。ありがとうございました。

(オプンラボ 小林利恵子)



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