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俺は変われるのか【舌癌編】17

晩夏に入院し、あっという間に冬が目の前に来てしまった。

入院前は「2か月の入院なんて長過ぎる…」と思っていたが、退院が近くなると2か月が短かく感じられた。

治療の経過は概ね順調。

中咽頭部に再発したデカイ腫瘍もスッカリ無くなり、今は逆に、腫瘍のあった部分は凹んでいるくらいであった。

しかし、その中咽頭部の凹みには「壊死」が発生していた。

ファイバースコープで壊死部分を覗くと、下手な左官職人が塗った壁の様な、鍾乳洞の壁のような、とてもグロテスクな仕上がりになっていた。

なにより主治医が心配していたのは、壊死が頸動脈の目前に迫っており、このまま壊死が進むと頸動脈の血管を破ってしまうというのだ。

そう、この時点では「腫瘍で死ぬ危険」より「頸動脈の血管が破けて失血死の危険」の方が勝っていたのだった。

主治医からは、「壊死部分にお肉が付くように、しっかり栄養を取るようにしてくださいね。あと抗生物質を処方するので、そちらもしっかりと服用して下さい。」

栄養を摂ると言っても…口は開かない…味はしない…どうすりゃいいの。

私は、「火垂るの墓」で栄養失調の妹節子を診た医者と、兄清太のやりとりを思い出した。

「滋養なんてどこから摂るんですか!!(口開かないから)」

言いそうになったが堪えた。(嘘)

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