俺は変われるのか【舌癌編】⑥
手術は12時間の予定であったが、結局14時間かかったようだ。
私の手術を待っていた妻は、この長い手術のせいで、デイルームに置いてある「JIN」を全巻読み終えてしまっていた。
翌早朝、麻酔から目を覚ますと、そこには主治医以下、若手の医師が数人並んでいて、更にそこに看護師が混じって、部屋はごった返していた。
「舌に入っている管を抜きますねー、お口を開けて下さい。」
関西弁混じりに促され、混濁した意識だったが口を開けた。
移植した皮弁と辛うじて残せた半分の舌。
その境目にあるドレーン用の管をピンセットみたいな物で摘み抜く。
直後…
「管を抜いた箇所を縫いますねー」
!!!!!!!
私はとても動揺した。
主治医は麻酔などはせず、そのまま針を舌に突き刺し、サクサクと数針を縫った。
痛みは全く無かった。
まだ麻酔が効いているのか??
「熱が高いので、安静にしてて下さいね。」
麻酔のせいでうつろながら、看護師と主治医の会話から、私の体温は39度以上の熱があるらしい。
術後、私の首から上には計4本のドレーンが繋がっていた。
頸部後方に2本、オトガイ部に2本。
そのドレーンのチューブには、基本的には赤い血液様のものが流れているのだが、手術から数日後、その管を流れる液体は、赤から白に変わっていた。
その液体を見た主治医は…
「カイラスか!?」
ポケモンのモンスター名のような名前を呟いた。
その管を流れる白い液体はカイラス?といったもののようだ。
一体何なんだろう…
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