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2024欧州滞在記 Day 15

土曜日。午前中はホステルのラウンジで実里さんと事務仕事。部屋は陽当たり悪いけど、このラウンジは明るくていい。
 
ランチは「行列のできるケバブ屋」にチャレンジ。ふだんは行列系の店には行かないんだけど、肉を削ってる姿が美味しそうだし。レジがふたつあるシステムでよくわからないまま並んでみる。ケバブのプレートにレンズ豆のスープ。なかなか美味しくてかなりの量をぺろり。2人旅の良いのは食べ物をシェアできること。


地下鉄に乗って旧市街に行く。ステファン大聖堂の前でウクライナ反戦デモをしている若者たちのその前で、観光客がセルフィーしてて、ちょっとグロテスクだなと思う。歩いてillyカフェ。Wi-Fiの使えるカフェチェーンということで来てみたけど、見た感じわりとしっかりしたレストラン風。英語のできる給仕が口が軽くてある種のプロフェッショナリズムを感じる。
 
レオポルド美術館で、クリムトやエゴン・シーレの絵画を観る。クリムトは「黒い牛」という絵の暗さの吸い込まれるような濃淡に惹かれる。シーレはなんだろう、人物描写もさることながら、町の風景画が、夢の中の町のようで興味深い。そのほかは、コロマン・ムーザーの作品群が気になった。ウィーン分離派に参加したデザイナーらしい。
 
この周辺は美術館や劇場が寄り集まっている。夜はTanzquartier Wienで松根さんにチケットを手配していただいてAmanda Piña / nadaproductionsによる『Exótica』を観る。20世紀前半の、西洋ダンス史には名前の残っていないダンサー/振付家たちの霊魂を、現代に生きる様々な出自を持つダンサーたちが召喚していくといった趣向で、名前の通りのエキゾチシズム的な消費を批判的に検証するコンセプトだとは思うものの、エンターテイメント性の高さもあってか(それ自体は悪いことだと思わないけど)かえってエキゾチシズムを再構築してしまっている面もあるように感じて、そのことに対する客席の(99パーセント白人でやや年配の人たちの)熱狂的なカーテンコールでの反響にはややいたたまれないというか、興味深い現象だなと思った。お香を炊いて劇場内に充満させ、葉っぱで多い茂った舞台セットを組んでいるのも、たとえば日本において「アジア」を表象する時にやりがちなステレオタイプを想起させて、そのことに対して作り手のみなさんがどこまで批評的に意識しているのかは最後までよくわからなかった。語りのほとんどは英語なのだけれど、ひとり、超絶技巧ダンスを見せていたおそらくセネガルに出場を持つダンサーの語りはフランス語で、しかし舞台奥にある字幕(ドイツ語と、一部英語)が葉っぱの向こうに隠れて見えないので(字幕が葉っぱで見えないのも意図的な皮肉なのかどうか?)、彼が何を言っているかは残念ながらわたしにはほとんどわからなかったが、「セニョール・オーストリア」と客席に言って、「What is African Dance?」と英語で言ったのはわかった。彼は客席に乗り込んで空いていた席にどっかり座ったりもしていて、明らかに挑発的な態度をとっていた(あるいはその役割を負っていた)のだけれど、カーテンコールに彼だけ出てこなかったところを見ると、その挑発は本気だったのかもしれない。

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