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『パラダイス』BGMからの考察①

2022年10月7日(金)
東京 渋谷 Bunkamura シアターコクーン
2年越しに迎えた舞台『パラダイス』その初日。

数日前からそわそわと浮き立つ気持ちが抑えられず
衝動的に電話をかけて
無事当日券をゲットし入ってきてしまった。





先に感想だけ簡単にお伝えすると


とんでもなく良かった。(語彙力)


事前に「葛城事件」を観て予習していったことが
功を奏しどっっっっぷりと ” 赤堀ワールド ” に
浸ることができた。
言葉に表すことは難しいけれど、じっくり考えて今後の人生に反映することができたらいいなとそう感じた作品だった。

あと個人的にすごく楽しみにしていた水澤紳吾さんをこの身体で体感できたことがめちゃめちゃうれしかった。
ああいう人間として大事な部分が欠如してる感じの役って水澤さんがピカイチだと思っている・・・。

まだ何度か観劇する予定なのでその都度思ったことは書き残していきたい。


さて。
事前のネタバレは避けて初日を迎えた私だが
ツイッターで「開演前のBGMが~・・・」みたいなふせったーが流れてきていたので、そこだけは気にならざるを得ず早めに着席してメモを取っていた。

以前NODA・MAPの『フェイクスピア』を観劇したときにも同じような細工が施されており、一緒に行った親友とあーだこーだ考察したことが楽しかった。今でも時々この話をして余韻に浸れるくらいである。
だから考えなしに流すわけはないだろうと期待していたのだ。



違和感その①

ロビーにいると微かに聞こえてきた
♪ BTS / Permission to Dance
開演前のBGMだと認識したのはこの曲から。
最初は会場で流れているとは気が付かず、隣の東急百貨店から聞こえてきているのかと思っていた。
いや、考えれば百貨店でそんなポップな曲は流れないであろう。
関ジャニ∞の丸ちゃんが出るのにBTSとはなんぞと思ったのである。(そこ)



違和感その②

後から誰のなんの曲か答え合わせをしたので
その場では明確にわかっていない曲も多かったが
♪ Official髭男dism / Pretender
♪ Aimer / 残響散歌
♪ AI / アルデバラン
♪ Vaundy / 踊り子 
etc…
最近のヒット曲ぞろい。

中には2番から始まる曲や
フェードインで次の曲と上手く繋げている曲もあった。

耳を澄ませて聴いていると
どれもメッセージ性の強いものが多い気がしていて
Adoなんかは典型的だが
強い言葉で大人を非難する若者の代表であろう。
何なら若者でなくても共感することが多い歌詞だったからあそこまでヒットしたんだろうと思う。
(関ジャム?)


一番耳についたのは
♪ RADWIMPS / うるうびと
『小さすぎるその背中に 大きすぎる運命背負い』
この1節。
異様に耳に残っていたが、知らなかったので後で答え合わせをしたもの。
終演後、1曲通して聴くとあまりに『パラダイス』のストーリーをなぞり過ぎていると感じた。



違和感その③

最近のヒット曲ぞろいで来ていたのに突然サビから流れ始めた
♪ 藤巻亮太 / 3月9日 
ここが特に違和感を感じたところ。
ヒット曲に越したことはないし平成世代からすれば普及の名作だと思うけれど、何故このタイミングで?しかもサビから2番??
からの
♪ BTS / Butter
だったから謎は深まるばかり・・。
BTSのヒット曲だったらⅮynamiteのほうが圧倒的に数字稼いでるのに・・・。






考察(ネタバレ含みます)

一貫したテーマの存在?

帰路を辿る間、BGMで使用されている歌詞を片っ端から調べてみた結果

「愛」

という単語がほとんどの曲に出てくることが分かった。
(そもそも愛って曲を書く時のテーマとして取り上げやすいけど)

「愛」という言自体が歌詞には出てこなくても
僕と君、あなたとわたし、みたいな
他者がいていて成立する愛(愛情)
が多く描かれているかな。

作中だと

・梶と辺見の関係
・梶と真鍋の関係

・辺見と真鍋の関係

この三角関係と

・梶と小川家の関係

が一番わかりやすい愛情だと思う。
とりあえず今回は辺見と梶と真鍋の三角関係を取り上げる。



〇梶を取り巻く三角関係

ざっとまとめた関係性とBGMとの関連について。

・梶と辺見の関係


梶は辺見さんの付き人をしていたことがあってそれなりに長い付き合い。
時には辺見さんの愛人と、そういう関係になったこともある。
(辺見さん公認、寧ろ愛人の世話してやってと頼まれて関係を持った)
付き人にさせる時点で梶さんは相当可愛がられていたことが分かるし、辺見さんも口では「人を信用していない」とは言いつつどこかで梶が裏切ることはないと思っていたはず。

そうじゃなきゃ人んちの猫さらって・・したりとか、指詰めてきた真鍋を瀕死にさせるような、その人にとって大切なものを壊すことで明らかに憎悪の念を抱いてると分かる行動はしないと思う。(そうであってほしい)

↓ 

これを踏まえたうえで
辺見さん→♡→梶
として考えて関連するBGMをあげるとすると


♪ 優里 / ドライフラワー


いや、怖すぎ!?!?!?!?!?!

辺見さんの本音と建て前は見分けにくいから分からないけど、ラスト屋上のシーンでも梶のこと嫌いとは一言も言ってなかったはず。

帰ってくるのウェルカムだよ、やり直せばいいって言ってたし。
(本当に戻るとなったらどんな展開になるのだろうか・・・)

それなのにドライフラワーの落ちサビに大嫌いがくると思うと怖いです。
とても。


(梶に対してはそんな感じなのに、青木は犬くらいにしか思ってないでしょう、辺見さん。)



・梶と真鍋の関係

梶と真鍋の過去はほとんど描かれていないので、パンフレットを参考に。
梶と真鍋は腹心の中。
原田を殴りすぎな梶を止めたのも真鍋だし、若林との時も。
辺見さんが怒鳴っても駄目だったのに、真鍋は梶を制御できる。
ラストシーンで息も絶え絶え、梶に謝ったり、「やっぱりいいです」って言いかけた何かをやめてみたり、辺見さん(青木?)が皮肉っぽく言った
「相当惚れ込んでんだなそいつに」
って割とその通りだと思う。


梶も真鍋に足洗って沖縄にでも行けって連絡したり
これから2人でやり直すんだみたいな発言から
梶→♡←真鍋
だと思う。



毎熊さんのインタビューで
「梶と真鍋は同じ理想郷を持っていたのでは」
と仰っていて、そこを頼りに考えると

♪ RADWIMPS / うるうびと

違和感②で取り上げた
『小さすぎるその背中に 大きすぎる運命背負い』
とか
『僕の残りの命を2等分して かたっぽをあなたに渡せやしないのかい』
とか
一番最後
『あなたは私がこの世界に生きた意味でした』
とか。

上記を踏まえると真鍋が梶に惚れ込んでるから最期
「ちょっとだったけどいい思いもさせてもらいました」
って出てきた言葉なんだろうなとしっくりくる。



・辺見と真鍋の関係

ここもあまり描かれてないから分からないけれど。

辺見さんと真鍋が直接絡んだシーンって
冒頭のボウリングのシーンと
(真鍋がスコアを稼いだところ)
ラストの屋上のシーンの2回だけ?
(謝るのは梶じゃねえだろのところ)
な気がする。

ボウリングも真鍋が投げている時は興味無さそうだったけど、俺のボウルは使うな!ってブチ切れた。

若林をボッコボコにしている梶を止めたのは真鍋で
それを辺見さんは見ていて。

梶が「行くぞ」って声かけてはけていくとき
真鍋は辺見さんを睨んでいた。
別に無くても梶にさっさと着いて行ったって
「真鍋は梶側の人間」って既に分っているのに、
わざわざ顔を残してまで睨みつけている真鍋が気になっていた。

ちょっと話は逸れるけど
一番最後、青木と梶の絡みが
冒頭の梶と若林を彷彿とさせていて

梶が
「過去に自分がされてきたことは手下にも同じようにする」性格だとすると
辺見に可愛がられてきた自分と同じように真鍋も可愛がることが梶なりの愛情表現で。

だからそもそも真鍋は多分辺見さんの下につくって感覚で稼業始めてないんだと思う。あくまで真鍋にとっての一番は梶。

辺見さんはその構図が気に入らない。
梶にかけてきた愛情は辺見自身に返すべきだと思っている。

真鍋は自分にとってのボスがそんな仕打ちを受けているから納得いかない。


だから
辺見→×←真鍋

そこでBGMとの関連付けをするなら

①辺見から真鍋へ
♪ Ado / 踊
②真鍋から辺見へ
♪ Ado / うっせぇわ


『半端ならK.O.』の1節はラストで指詰めてきた真鍋を瀕死に追いやったところは重なる部分があるし
『別に興味ない』『特に関係ない』なんかは辺見さんが真鍋に対して思っていることなのかなと。


『酒が空いたグラスあれば直ぐに注ぎなさい』
うっせぇわ、2Aメロ始まりなのが不自然でなんでだろうと思っていたが
辺見と真鍋の関係性に行き着いたときちょっと納得できて。
真鍋にとっての一番は梶なのに辺見さんに気を使わなきゃいけない
真鍋の葛藤(爆発してんな~)かな、なんて考えてみたり。

・・・辺見さんと真鍋の間に愛無いな。
愛の対義語は無関心とか、そういうこと?


(AdoをAdoで返すのか・・・)


書いてて思ったことだけどボウリングのシーン
俺のボウルは使うな!=俺の梶を取るな!
の比喩なのかな。
そんな緻密さがとても面白いと思う。




〇ヒーロー、梶浩一

一貫したテーマとして「愛」を取り上げたが、ちょこちょこ登場して
気になっていた単語が

「ヒーロー、英雄」

♪ 緑黄色社会 / Mela!
♪ 平井大 / 題名のない今日
♪  ヒグチアイ / 悪魔の子

パンフレットにも書いてある梶のセリフ。
あの言い回しからも分かるようにちょっとヒーローっぽい。
(仮面ライダーとかに出てきそう。)(?)
掛け子たちは落ちこぼれで、お金もないしこんな所で詐欺して終わってる人間と自覚していて。
それでも拾ってくれた梶さんのことをヒーローだと思ってる節はあるだろう。道子なんかは特に。


あのヒーローっぽいセリフは
誰のためにあったのか。多分私たちだと思う。


少子高齢化社会の日本。
円安は加速しているのにお給料は上がらないし、税金は増えるばかりで、ちょっと海を挟めば傍で戦争が起きている。
将来を見据えた政策は中々進まない。
そして未来に負担を残したまま大人は去っていく。
その負担を背負うのは私たち。

先の見えない将来に嫌気がさしているのは
作中の彼らだけじゃないと思う。
正直、私も将来に対しての漠然とした不安は常に持っているしそれなりに不満もある。
ただ、ちょっとだけ彼らより自分をだますことが上手くいってたから今も普遍的に生活しているだけ。

自分はどんな立ち回りをすれば上手くいく、とか
苦手な人にはこういう顔をしておけばいい、とか。

そんなの取っ払えば私だって何者でもないただの人で、彼らと同じようになったかもしれない。
それで、まだまだ何者にでもなれる可能性がある。

(ただ間違えると中年男みたいな無敵の人になってしまうから、それは金輪際幻影の中だけで…と作中に登場させたのかな。)

作中でのセリフは詐欺を行う彼らに対して放った言葉だけれど、きっと今後この言葉が心の灯になる気がしている。

今は困ったときの心の寄りどころとして
ヒーロー梶さんを覚えておきたい。



まとめ

BTSのⅮynamite1節に

Life is sweet as honey人生は蜂蜜のように甘い

とあって(曲の真意とは関係なく訳して考えたら)
梶さんたちはそんな甘い世界で生きていないから
外されたのかなと考えてみたり(安直!!!)

♪ Actually... / 乃木坂46
なんかは考察してる私へのアンチテーゼかとも思い始めて勝手にくそ~!って思ったり、
熟考しながら観劇後も楽しい時間を過ごしている。
最近アウトプットが多かったから、余計に。


BGMから考察する辺見さんって
めちゃめちゃ女々しいなと思っていたら
八嶋さん自身も
「辺見は女々しい」って仰っていたし

パンフレットで赤堀さんが
「三者の関係について真意は観る方に委ねたい。」
と仰っていたの拝見したから
この考察もあながち間違いではないのだろう。

観劇直後にBGMで使われていた曲を聴き直した。
観る前はみんなと同じように良い曲だな、良い歌詞だなって、思っていたのに何故かつまらなく聞こえた。
愛だとか、夢だとか、幸せだとか
心に響いて聴こえてきていたはずのものがありきたりに感じた。

ああいう世界に行きたくなる気持ちが
少し分かったような気がした。






P.S.
パラダイスに丸山隆平さん
何処にもいなくてびっくりした。(褒めてる)







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