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〈かるたdeビンゴ〉クラスdeルール

●勘違いから生まれた傑作ルール!

 高崎サークル2016年11月例会で,ある女性の先生から「2年生のクラスで〈かるたdeビンゴ〉をたのしんでいます!」という報告がありました。その方は,『たのしい授業』(2012年4月号 [No.391])に掲載された,淀井泉さんの「かるたdeビンゴ」の記事と,25枚が1セットになっている「部首カルタ」と「読み札」の資料を紹介してくださいました。

https://www.fujisan.co.jp/product/1567/b/771575/

 サークルでは「〈かるたdeビンゴ〉をやったことがない」という方がほとんどでしたので,みんなで実際にやってみることにしました。
 ぼくは,以前から淀井さんのカードゲームのファンで,〈かるたdeビンゴ〉もクラスでやったことがあります。もし体験するのであれば,賞を取ったときにもらえるバー状の「賞カード」が必需品だと思っていて,今回はその用意がなかったので,「賞をとったのかどうかがわからなくなってしまわないかな?」と心配になりました。

賞をとったときにもらえるバー

 ところが,その方は「それは,子どもとやるときも使ったことがない」とおっしゃっていたので,ぼくは「???」となりました。
 そして,実際にサークルのみんなでやってみたときには衝撃を受けました。「えー!?なにこの新ルール!超たのしい!!そして,これなら確かにバーは必要ない!」と思いました。
 さらに驚いたのは,その方が「え?こういうルールなんじゃないの?」と言われていたことです。思わず,その場で『たの授』の記事を読み返しましたが,完全にその方のオリジナルでした(笑)

 このゲームは,少人数指導の現場で淀井さんが苦しみがら生み出されたもので,その開発物語を読ませていただくと,多人数クラスで生まれることはなかったものだということがわかります。
 そして,このゲームのルールは,そんな少人数クラスの中で洗練されて出きあがったものです。ぼくは〈かるたdeビンゴ〉のやり方を淀井さんから直接,正確に教えていただいたので,多人数クラスでやるときにも,そのルールの枠を超える発想は持てませんでした。

 ところが,おもしろいもので,その方がされていた新ルールの選択肢を知った時,とても新鮮に感じたのと同時に,「多人数クラスでは,こっちの選択肢の方が自然だ。どうして思いつかなかったんだろう」と思いました。
 そして,「通常のクラスなら,こちらのルールの方が明らかに選ばれやすいだろう」と直感しました。多人数クラスを主とするその方からすれば,自然な流れで思いついたルールだったのかもしれません。

●クラスdeルール

 では,気になるそのルールを紹介します。用意する物は,

①「9枠のボード」を人数分
②2人ひと組の25枚程度のかるた
③教師用の読み札

用意するもの「かるたとボード」

 「かるた」は,どんなかるたでも大丈夫です。市販でも手作りでもOK。
ただし,枚数は2人で25枚程度のものがのぞましいので,たくさんある場合はしぼって使用します。
 今回は,3年生の国語ということで,同じく淀井さん作の「部首かるた」を使用しました。

 この淀井泉さん作の「部首かるた」は,とんでもなく秀逸です。全48種なので,ゲームでは半分の24種を使って実施しました。

 通常ルールで2人ひと組のかるたをやるとなると,かなりの量の「賞カード」のバーを用意しなければならず,管理も大変になりますが,それを用意しなくてもすむというのが,まず,とてもラクなルールだといえるでしょう。

 ではさっそく,やり方を写真つきで説明します。

①カードを半分ずつに分けて,好きな9枚を枠に並べます。 

ふたりで1セットのかるたを使います

 席が隣同士のペアでやりますが,クラスの全ペアが同じ種類のカードを使い,読み手は教師が一人で行う「クラス同時進行形式」で行います。

②余ったカードは2人の真ん中に並べておきます。 

好きなカードを自分のボードに並べ,あまりは2人の間に並べます

 ここが,「クラスdeルール」の最大のポイントです。
 通常ルールでは,「余ったカードは使わない」ことになっています。しかし,このルールでは「使うことが前提」で,「使うからこそおもしろい」のです。また,余ったカードを調整する必要がないのは,多人数でやるときにはとても便利です。

③教師が読み札を読み上げ,自分のボードにそれがあれば,自分で取ります。他の人のカードは取りません。

かるたをとると,黒文字が出てくる

 早取り競争的な楽しさをあえて除いたこのルールは,「かるたは,カードをとることがたのしい」という,かるたの本質を教えてくれるものです。自分のボード上にあるかるただけを取ることができます。競争は運なので,安心で,でもドキドキです。

④2人の間にあるカードが読まれたら,それを裏返します。
 ペアのどちらが裏返してもかまいません。クラスでやったときには,お隣さんと「これだよね?」と確認し合いながら裏返す姿がみられました。

⑤それらを繰り返すことで,ゲームが進行していきます。
 札が取られると,ロゴが表れるのが〈かるたdeビンゴ〉の特徴です。

⑥ゲームの途中で賞がもらえます!

ビンゴしたとき

 すると,「たて」「よこ」「ななめ」がなくなって,ロゴがそろう時がおとずれます。クラスの中で一番先にそろった人が,それぞれの「トップ賞」となります。(この並びの場合,「よこトップ賞」↑)
 今回の「クラスdeルール」では,これらのトップ賞が,ペアのどちらか先にそろった人がもらえるのではなく,「クラス全体の中でトップだった子だけしかもらえない」というところが大きな特徴です。
 そういう意味では,マッキーノをクラスでやるときのルールに近いといえます。一番にそろった人は,自分の名前カードを黒板にはるだけなので,それぞれが「賞カード」のバーを必要としないのです。

☆「クラスdeルール」を彩る様々な賞
「たてトップ賞」
 クラスで一番早く,どこかの「たて列」がなくなったときにもらえます。
「よこトップ賞」
 クラスで一番早く,どこかの「よこ列」がなくなったときにもらえます。
「右ななめトップ賞」
 クラスで一番早く,「右ななめ列」がなくなったときにもらえます。
「左ななめトップ賞」
 クラスで一番早く,「左ななめ列」がなくなったときにもらえます。
「トップパーフェクト賞」
 クラスで一番早く,ボード上のかるたが全部なくなったとき。
「ラスト賞」
 クラスで一番最後に,ボード上のかるたが全部なくなったとき。

 ここで,重要な役割を果たしてくれるのが「真ん中に置かれたかるた」です。それがあることで,一気に賞が重なることがなく「ラスト賞」を可能にしてくれました
 2人制ルールでは,真ん中のかるたがなければ,「ラスト賞」は,児童の半分の子が賞を取れることになってしまい,面白みに欠けてしまうでしょう。もちろん,「みんなが賞をとれるからたのしい」ということもありますが,〈かるたdeビンゴ〉は通常,4人1チーム程度の人数でやるゲームで,「ラスト賞」になれるのはその中で1人です。だから,賞がとれたときに嬉しいわけです。

ラスト賞

 さらに,2人でやっていることで,こんな賞も作ることができました。

「ペアトップ賞」
ペアで一番最初に,ボード上のかるたが全部なくなったとき。
「はみだしトップ賞」
ペアの間にあるかるたが,一番最初に全部裏返しになったとき。

 このルールは,その方がされていたルールをもとにして,ぼくが新たに加えたものですが,実際に取り入れてゲームをしてみたところ,とてもいい効果を発揮していました。
 お隣さん同士,何だかとてもたのしそうに,話し合いながらやっているのです。わからない部首名だったときなど,「これじゃない?」とか,「これだと思う」とか,予想しながらやっていたり,当たっていたときには,お互い誉め合っていたりするのです。
 普通に,向かい合って取り合いのかるたをやっていたら,絶対に見られない光景だと思います。お互いが向かい合わずに,隣に並んだ状態でやっていることがよいのだと思います。
 「トップパーフェクト賞」にはなれなかったけど,お隣さんも早く上がってくれたときには一緒に「ペアトップ賞」がとれたりするので,自分のパーフェクトが無駄になる感じもしません。
 また,「はみだしトップ賞」を設けることで,選ばれなかったかるたにも興味をもって覚えてもらえるので,願ったり叶ったりなルールだと思いました。定番になりそうです!

●賞が出る確率は?(今後の研究)
 まだ,何度も試したわけではありませんが,1回目にやったときは,24人中14人が賞をとって約半数。2回目のときは,ラスト賞が少し多くいて,半数よりちょっと多くの子がとっていました。ちょうどいい感じです。「真ん中のかるたの枚数を,増やしたり減らしたりするとどうなるのか」の実験もしてみたいですが,25枚という枚数でやっているのが,奇跡的によい結果を生んでいるのかもしれません。たまたまの開発者の方いわく,「25枚もたまたま」だそうです(笑)

●子どもたちの評価と感想(群馬・小学校3年)

⑤とてもたのしかった…22人 ④たのしかった…2人 ③②①…0人

・すごい盛り上がってたのしかった。いつものマッキーノよりたのしかった。ペアトップ賞がとれて,うれしかったです。(女子⑤)
・とても楽しかったです。またやりたいです。ラストパーフェクト賞が2回も出たので,うれしかったです。(女子⑤)
・最初は,「なにこれーへんなの」と思いましたが,だんだんたのしくなってきました。毎日やりたいくらいたのしくなってきました。教えてくれてありがとうございました。(女子⑤)
・「かるたdeビンゴ」をやって,1回戦と2回戦をやったけど,1回も賞がとれなかったけど,たのしかったです。(男子⑤)
・最初はわからなかったけど,練習でやり方がわかって,たのしくなりました。ありがとうございました。(男子⑤)
・「かるたdeビンゴ」はとてもたのしかったです。毎日やりたいです。(女子⑤)
・とてもたのしかったです。いろいろなことが覚えられるように,いっぱいやりたいです。(女子⑤)
・最初,自分ではできないと思ったけれど,ぜんぜんできて,たのしかったです。(女子⑤)
・たのしかったです。賞をとれたのでうれしかったです。(男子⑤)
・しぬほどたのしかった。(男子⑤)
・賞はとれませんでした。でもたのしかったです。(男子④)

おしまい

※この記事は,「かるたdeビンゴ」と「部首かるた」の制作者,淀井泉さんからの掲載の了承と,たまたまの開発者の女性の先生にも承諾を得ています。

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