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マッキーノ・再入門


●はじめに

 ぼくの教室に品川正さん(群馬・小学校)が遊びに来たときのこと。黒板に貼り付けられたマッキーノのカードを見て,

「へ~。小さいな~」

と一言。

 「へ~」と思ったの はこちらも同じで,マッキーノがスバラシイのはよくわかっているのですが,そのや り方は,「それぞれの人が独自に,使いやすいように工夫しているのではないか?」 と感じました。
 何しろ,「毎日できるからいいもの」なのであって,それは,その人が最も使いやすいやり方に変化していってるはずです。そして,毎日のことだから,当たり前すぎてなかなか紹介する機会がないような気もしました。
 また,そう いうマッキーノのやり方の資料は結構あるのですが,読んでもなかなかイメージが伝わらなかったりします。

 そこで,ここでは,マッキーノを知らない人にもわかってもらえるような紹介を書きつつ,マッキーノをやっているという人にも「へ~,こんなやりかたもあるのかぁ」と思ってもらえるような話を書いてみたいと思います。
 

●マッキーノとは?

 「ビンゴゲームの進化版」といったところでしょうか。ビンゴとは違う大きなポイントは,「選ぶリストの数が決まっている」ということです。
 「9マス」でビンゴするときには,リストの数は「14」です。「16マス」でビンゴをするときにはリストの数が「22」です。これらを「マッキーノ定数」といいます。
 この「マッキーノ定数」があることで,「0列賞」という賞が生まれます。ここが,通常のビンゴとの大きな違いです。
 やり方を説明します。
 子どもたちは,リスト14の中から,自分の書きたい9個を選んでマスに書き込みます。その後,教師がそのリスト14の中から,9個だけを選んで引くのです。

マッキーノリスト(例)
マッキーノ記入用紙(峯岸版)

 教師が選んで行く中で,子どもたちの中から,最初に1列がそろった子が出たら,その子は「早上がり賞」という賞がもらえます。
 その後,教師は9個を選び終えます。終わった後で,もし1列もそろわなかった人がいたら,「0列賞」がもらえ,一番多くそろった子は「最多列賞」という賞がもらえる,というのが大まかなルールです。
 0列賞があることで,出ても出なくても,最後までドキドキすることができ,毎日やりたくなる中毒性があります。ぼくのクラスでは,運動会の当日ですら,朝に「マッキーノやりたい」と子どもが言い出したほどです(笑)
 「毎日やりたい」と子どもが言っていると,こちらもやってあげたくなりますので,自然とその用語がドリルされます。この場合,「用語を覚える」というのはおまけになっています。「たのしさが先」なのです。これが,スバラシイと思っています。 

 詳しくは『たのしくドリル・マッキーノ』(仮説社)に譲ります。これは,ぼくの教師人生に革命を起こしたドリルの方法です。
 いや,おそらく,〈世界のドリルの大革命〉だとも思いますので,ご一読をオススメします。知っているのと,知らないのとでは,教師生活に大きな差ができると思っています。
 きちんとマッキーノを理解したいと思ったら,必ずこれを読んでください。「いろいろなやり方でたのしめるんだなぁ」ということがわかります。



●基本的なやり方と,ぼくのオリジナル

 ぼく自身のマッキーノも,毎年のように変化してきました。仮説実験授業を知った初期の頃から, マッキーノをやっていましたが,かれこれ 20 年以上,毎日のように続けていますし, これからも続けていくでしょう。
 そう考えると,ものすごい影響力ですよね。 毎日行うものなので,変化するチャンスも多くあります。うまくいかないことが目に付きやすいからです。
 だから,最終的な形は人それぞれですので,「これが正しい」 というものはありません。ここでは,僕がやっている「やり方」を書いてみます。1つの選択肢として読んでいただけると嬉しいです。


0.準備(「漢字マッキーノ」の場合)

 マッキーノは,すべての教科で実施が可能ですが,必ず毎日やっている「漢字マッキーノ」を例に紹介してみます。

①「漢字ドリル」の問題ページを見て,「漢字マッキーノ・リスト」を作ります。 リストは「手書き派」の人,ドリルに○をつけるだけでそのまま使う派の人など,それぞれですが,ぼくは 「パソコンで作る派」です。
 ぼくは「2~3字熟語」を1つで扱っています(漢字1字でやる方もいます)。それを 14 個選んで「マッキーノリスト」を作ります。

こんな感じで14選んで,リストをつくります

 フォントは「教科書体」を使っています。そうしないと,ドリルの形と違う「ハネ・トメ」 の字が出てきてしまうので。

②プリントアウトしたものに,「ふりがな」をふります。こちらは「手書き」です。 理由は,「その方が早いから」。「パソコンの方が早い」とい う方は,そちらで。ただし,「ふりがな」はマッキーノの大きなポイントなので,「つけた方がよい」と思います。書けなくても,読めるようになるからです。

「ふりがな」をつけます

③裏面にテストをつけます。「ふりがな」をふるついでに,リストの裏面用に,テストを作っちゃいましょう。
 ふりがなと同じものを,定式の枠に書くだけです。それを,下の図の用に製版すると,1回の製版で裏表印刷ができます。

裏表で印刷し,半分に切ります

 ぼくは,これをA4の紙に裏表印刷をし,できあがりは半分に切ったA5サイズです。閉じられるように,穴あけパンチで穴をあけておきます。

④リストを1枚だけ,コピー機でA3版に拡大し,クジを作ります。それをバラバラに切り分けて,教師が引けるクジにしておくのです。

大きくして,切り分けておきます

⑤「マッキーノ記入用紙」は「テストの回答欄」と裏表で, 大量印刷しておきます。リストと分けることで,こちらを大量印刷してストックしておくことができ,大変便利です。
 また,リストとクジが同時に作れるというのも,リストを分ける利点だといえます。教師としてもラクですし,リストがあれば,家庭でもマッキーノをたのしむことができるからです。これで準備は完了です。

マッキーノ用紙(表)
マッキーノ用紙(裏)

1.用紙を配布

 「漢字マッキーノ・リスト」と 「マッキーノ記入用紙」を配ります。ぼくは,子どもに「A5版が閉じられる紙ファイル」を用意し,そこに,すべてのマッキーノを閉じていくようにします。
 「1回で終わり」となると,適当に書いて,ポイ捨てして しまう子が続出しますが(笑),「年間で閉じられる」 となると,多少は丁寧に扱ってくれます。 

マッキーノファイル

 ちなみに,市原辰徳さん(東京・小学校)は,これを 50 枚,100 枚とためていくと,シールがもらえるという サービスをしているそうです。


2.リストに記入

 リストを見ながら,14個中「9個」を選んで, 丁寧に書き写します。 はじめは,間違えないように,必ず「書き写す」ようにと伝えます。
 そのうち,慣れてきたら,リストの裏面(よみがな)を見て書いてもよいことにしています。
 「表(おもて)」が全員書き終わるまで,クジを引くのを待ちます。早く書き上がってしまった子は,「リストの裏」と「記入用紙の裏」を使って,漢字テストの自主練習をして時間を調節するよう伝えます(つまり,リスト裏の読み仮名を見て,マッキーノ裏の回答欄に漢字が書けるかテストできるというわけです)。
 「はみだし枠に先に書いておきたい」という子がいたら,書いてもよいことにしています。


3.クジを引く

 「表(おもて)」が全員書き終わったころあいで,クジを引きます。 誰が引いてもかまわないのですが,ぼくは自分で引いています。
 出たカードは,黒板のすみにマグネットで貼っていきます。ぼくは,朝マッキーノをやって,そのまま次の日まで貼りっぱなしです。
 出た漢字が,マスの中に書かれていたら,子どもが自分で自分の漢字に○をつけていきます。このあたりは,通常のビンゴと同じです。
 また,書いていない漢字が出たら,「はみだし枠」にその漢字を記入していきます。


4.賞が決定していく

 「早あがり賞」の決定をします。 クラスで最初に1列そろった子がいたら,「マッキ ーノ!」と宣言して,その子 (その子たち)が「早あがり賞」となります。最速で,3枚クジを引いた時点で決まる賞です。
 ただし,隣の人が確認をして,間違って○をつけていたり,漢字が違っていた場合には,賞が無効となります(笑)
 ぼくのクラスでは,賞をとると自分の「名前カード」を「黒板のすみに貼ることができる」という特典があります。クラスのルールで,その名前カードが「涙くじ(強制権のある指名クジ)」になっているので,賞が出たら,その日一日,黒板に貼られているため,強制的に当てられなくてすむというわけです。

名前カードが貼ってあると,その日は強制的に指名されません(笑)


5.9枚ひいて賞が確定

 「早上がり賞」が出た後は,マッキーノが出ようが出まいが,どんどんクジを引いていきます。9枚引き終えた時点で終了です。その日の賞が決定します。
 ぼくは「0列賞」だった人から聞いていきます。「0列だった人~」と聞いて,手を挙げた人に「はい!0列賞おめでとう~!」と告げます。そのタイミングで0列賞の人は黒板に自分の名前カードを貼りにいきます。
 次に「はみだし賞」を聞きます。出なかった漢字を「はみだし枠」に書いていくわ けですが,その枠がいっぱいになったら,「はみだし賞」というわけです。先に「はみだし枠」を書いておいた子は,そこに○をつけるだけで済むので,先に書いておく子もいます。
 「0列賞」の人は,半数程度が「はみだし賞」も同時にとれる感じになります。ぼくのクラスでは略して「ゼロはみ」と呼んでいます(笑)
 また,1列の人も「はみだし賞」をとれる可能性があります。今まで,1列は「残念」でしかないイメージでしたが,「はみだし賞」は,そこに新たな光を与えてくれました。この賞は,とてもオススメ です。
 「早上がり賞」「0列賞」「はみだし賞」…と,賞が決まった人から,どんどん黒板に自分の名前カードを貼っていきます。
 そして最後に,「最多列を確認します!」と宣言して,「1列の人~」「2列の人~」「3列 の人~」…と順番に聞いていき,手を挙げてもらいます。そして,その日最も多くの列がそろっていた子(たち)が,「最多列賞」となります。


●「はみだし賞」とよくばり根性

 「はみだし賞」は,池上隆治さんの『工楽録』からアイデアを得ました。もともと, 「はみだし枠」などというものは,「余計なお世話」かもしれません。「9個だけでなく, リストの漢字を全部書かせたい!」という「教師の欲張り根性」が,その動機だからです。
 でも, 「もう少しで0列だったのに1列そろっちゃった!」という場合でも,「はみだし賞のチャンス」が残ります。だから子どもたちは「はみだし枠」に一生懸命漢字を書きます。
 そして,全部のはみ出し枠が埋まったら,「はみだし賞」が取れて大喜びします。すべては,「たのしさが優先」で続けられることが一番です。

おわり

●おまけ「マッキーノの汎用性」

 マッキーノは,「漢字マッキーノ」だけではなく,様々な教科のドリルで使えます。理科や社会の用語などです。
 用語を覚えたい場合,クジを引いたときに,その用語の内容を先に言ったりもします。例えば,以下に例としてあげる「歴史用語マッキーノ」では,

歴史用語マッキーノ(例)

…教師がクジを引いたときに,「中国や朝鮮から日本にやってきた人たち。漢字や土木工事の技術など,新しい技術を日本に伝えてくれた」と言うのです。
 そうすると,子どもたちは「なんだっけ~」と思い出しながら「渡来人」に○をつけます。
 習っていない用語でも,これを社会の時間の最初にやることで,なんとなく覚えてしまいます。その後,教科書で出てきたときに「ああ,こういうことだったのか」と学ぶことができるのです。

 これ以外にも,「地図記号マッキーノ」や「都道府県マッキーノ」など,すぐに使えるプリントを用意しました。漢字マッキーノの用紙ともに,必要な方は,以下からダウンロードできます。

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