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インフラエンジニアという仕事

インフラエンジニアと言う仕事を、例えば学生に伝えるのは結構むずかしい。インフラは基盤と言う意味だけど、基盤って何だろう。今ではスマホを開いてアプリを起動すれば、電波さえつながっていれば、いろんなことができる、ということは誰しもわかっている。でもそれって、スマホが頑張っているのか。電波が頑張っているのか。大部分の人がわけをわかっていないと思う。わかっている人たちがIT業界にいて、いろんな仕組みをかき集めてユーザーにサービスを提供している。提供?、どうやって?。

私が業界に入った西暦2000年より少し前。クライアント-サーバー型のシステムが大流行りした。端末の計算性能が上がったので、画面や簡単な計算は端末(クライアント)でやらせようということになった。サーバー側はデータを集計してクライアントに配ることに特化した。サーバープログラムをサーバーで起動し、クライアントはサーバーと通信して、いろんなことをする仕掛け。そこにネットワークが生まれ、今のインターネット社会の礎を築いた。

クライアント-サーバー型の前は、一極集中型で端末は画面表示しかしなかった。端末は字を表示したり入力することしかできない。処理はホスト、と言われるどでかいコンピューターが処理していた。最近のインターネットはクライアント-サーバー型から、この一極集中型に戻りつつあると言われ、かなりの計算がデータセンターで行われるようになった。生成AIも、本格的なものはほとんどがデータセンター側で計算している。電波や光回線を切ると、手元のコンピューターはたいてい、使い物にならない。そう思っている人は、かなりの計算は手元ではなくデータセンターが実施している。

結構、端末側に性能が偏ってた時期があって、このまま行くとリッチな端末がつながり過ぎてデータセンター側に過大な要求が来てさばききれないんじゃないか、って懸念もあった。2010年ごろは、ちょっとテレビで話題になっただけで、その関連のサイトはすぐビジーになってつながらなくなっていた、と言う時代もあった。今では、かなりの大量アクセスもデータセンター側でこなせるようになっている。せっかく話題になったのに、サイトが落ちたらもったいないもんね。

こんな具合で、時代によってプログラムを動かす主体は端末にあったりデータセンターにあったり、色々揺れ動いている。データセンターの形すら見せず、クラウド、と言う名前でサービス提供することも一般的になった。インターネットの全体像を見通せる人は誰もいない中、人類はインターネットを酷使している。今の今もまた、大量のパケットがネットワークを駆け巡っている。

それを、全面的にフォローし続けるのがインフラエンジニア、と言う仕事である。世間のトレンドを見つめながら、あるべき機械の在り方を提言し続ける。あまりにもトレンドの移り変わりが激しいので、どんどん、言うことが変わっていくのも特徴である。

2024年、今の時代もインフラをめぐる状況は流動的だ。どこぞの企業が買収されて、有名なソフトウェアの先行きが不透明になったり、AIが急に流行り出してNVidiaのGPUが必要になり、それで準備をしたほうがいいんだか一時の流行りなのか。この前まで話題になってたコンテナはどうなったのか。誰も答えは知らない。

答えが決まっていなくても、期限までにロジカルな説明をしなければいけないのがインフラエンジニア。今の今、これが最もモダンで世間で選ばれるインフラの形です。そうやって、それぞれのインフラエンジニアは、それぞれで全く違うことを言いきっているから、いろんなインフラの形が共存しているんだろうな。

インフラエンジニアの世界も、基礎と言うかアカデミックな理屈はあるにはあるが、経験に勝るものなし、という側面もある。そもそもの理屈が、経験の総集編みたいなものになっていることもあり、豊富な自身の経験が、とてつもなく生きる仕事でもある。

大事なことは2つ。

①たくさんの成功している(もしくは失敗を乗り越えた)システム事例を作ったり、運用したりした経験を持つこと
②システムがどれだけ、人々の生活に根差し、重要なものであるかということを肌感覚で知っていること。

だから、なんとなく職人的な仕事になってしまう。優秀な職人が若手に伝えるような仕事の仕方になってしまうし、私自身もそういった職場を作っている。

IT、コンピューターの世界と言うと、最先端でもっと科学に基づいた想像をされがちなのだが、私の知る限り、相当に人間的な分野だ。主観の部分が大きい。場所によって、考え方が大きく違う。それは、違う人間がやっているからこそ、である。

この業界にもう25年以上いるが、ようやくインフラエンジニアとは何かが見えて来た。次の世代に大事な部分を引き継いでいきたい。社会的に今後ますます大事な職域になると思うから、発信していこうと思う。

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