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歴史再現イベント『フロールの戦い (1627) Slag om Grolle』オランダ/フルンロー ~現存する城塞都市で開催される17世紀模擬戦闘


オランダ、ヘルデルラントの片隅にあるフルンローの街で数年に一度、不定期に開催される10月の一大歴史再現イベント。日本でいうと関ケ原合戦祭りとか相馬野馬追とかみたいなものですね。八十年戦争、オランイェ公フレデリク=ヘンドリクのフロール攻囲戦(1627)をモチーフにしています。

10年越しの念願が叶い、観戦できたのは2017年の第6回。


「フルンロー Groenlo」ってどこ?

オランダ国内ヘルデルラント州の小さな街です。フロール Grol とも呼びます。『金獅子亭』内でも、攻囲戦で取ったり取られたりで何度も出てきます。ヘルデルラントの中でも国境に近い要地でした。今でも街の大部分にオランダ式要塞を残し、旧市街は昔ながらの建物と風景が維持されています。

リヒテンフォールデ=フルンロー駅からバス10分程度。さらにバス停から堡塁内の市内へは10分くらい歩きます。


「Slag om Grolle」って何?

この存在を知ってから憧れ続けた歴史再現イベント。2012年に渡欧するものの強制送還事件(という名の飛行機乗り遅れ)が起こり、訪問直前で帰国。その5年後の2017年にリベンジが叶いました。 

フルンローでは2005年を第1回とし、1627年のオランイェ公フレデリク=ヘンドリクによる攻囲戦を模した、「Slag om Grolle (SoG)」という歴史再現イベントを2-3年おきに開催しています。2017年は第6回です。毎回参加者が増えて規模が拡大しており、17世紀歴史再現イベントとしてはヨーロッパ最大にまでなりました。再現イベント専門の役者さんたちが全ヨーロッパ、ひいては海を越えて米・豪などからも集まり、期間中、実際の戦闘シーンだけではなく、電気ガスなどを極力使わず当時の衣食住までを再現します。街中にもヤギやアヒルなどの小動物が放されたり、フルンロー市民扮する物売り・辻芸人などがうろうろするなど、街全体が当時の様子に近づけられます。

八十年戦争期は攻囲戦が多いため、実際に互いの兵同士がぶつかる白兵戦は、スカーミッシュ(小競り合い)と呼ばれる、数十人からせいぜい千人程度までの規模でおこなわれました。万単位がぶつかる大規模な野戦に比べると、確かに数としての迫力には欠けますが、この再現イベントでは兵数も当時の実態に近く、兵の一人一人がシナリオと役割を分担する細かい演出も可能です。


歴史再現イベント『Slag om Grolle 2017』観戦記

観戦した2017年は、10/21,22,23 金~日: 9:00-24:00 一般入場料: €12.50 

公式サイトによれば、2017年の期間中の観光客は30,000人、戦闘に参加した役者さんたちは15の国から1,600人だとか。

他の日程との都合で初日の金曜参加、且つ、交通の都合で滞在は夕方まででしたが、模擬戦闘は最初から最後まで観られたので充分に楽しめました。むしろ土日は非常に混雑したと推測されるので、比較的ゆったり観戦できた金曜で良かったかも。チケットは当日購入も可能ですが事前に公式サイトから買っておいたほうがスムーズです。3ヵ所の街の入口はすべて閉鎖され、チケットを見せるとスキャンのうえ手にスタンプを押して通してもらえます。

街に入ったら1枚3ユーロで独自通貨を購入し、飲食に使います。日本でもオクトーバーフェストなどのビール系イベントでよく見るタイプです。10枚だと25ユーロに割引。街中に出された露店では、普通にユーロも使えます。17世紀の扮装をした市民たちが、それっぽいものを販売しています。コスプレ衣装(鎧も買える!)や模造武器も買えます。

街は未だ六芒星型の堡塁型を維持していますが、模擬戦闘が行われるのは堡塁の外側の広場になります。フルンロー市立博物館の話好きで親切な学芸員さんから、模擬戦のフィールドには1時間前に行っておいたほうがいいよ、とアドバイスしてもらったので、ベストポジションに陣取れました。

以下、ローカルテレビ局による2017年の動画(上:戦闘、下:街の様子)。

フルンロー市立博物館

八十年戦争に特化した博物館。しかも街の性格から、八十年戦争期の中でもフレデリク=ヘンドリク時代中心の稀有なラインナップとなっています。SoG期間中は街自体への入場料がかかるため博物館は無料となり、なんなら混んでいる当日に、確実に座って安くコーヒーが飲める穴場スポットでもあります。

1Fは3室あり、フロールの街のジオラマ、肖像画を中心とした展示、ミニシアター。シアターはオランダ語に英語の字幕付きで、八十年戦争を簡易に説明していてわかりやすい。 2Fは別時代を扱っていますが、3階はずらりと版画です。もちろん、1627年の攻囲戦のものがメインとなっています。

サイトが新しくなってなくなったと思っていたコレクション検索も健在でした。

tumblr

実は2018年にtumblrで人知れずサイト作ってました。


歴史再現イベント『Slag om Grolle 2008』

Wikimedia Commonsでは第2回の2008年バージョンの写真がたくさん載っています。

模擬戦闘だけではなく街中の様子も良いショットが多くおすすめ。

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