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じぶんはどうやら病気らしい。

先週、ばあちゃんの傘寿のお祝いで箱根に行った。それはまた記事にするとして、その次の日あたりからどうも体の調子がよくない。胃が痛い。眠れないほど吐き気がする。頭痛。悪寒。しまいには血便が出た。その日は会社で2時間横になった後、早退した。なんか変だな、こりゃいかんと思い、5/29の水曜日、会社を休んでかかりつけの内科に向かった。
受付「きょうはどんな具合で来ました?」
小林「えーっと、胃の圧迫感と、吐き気と、血便が昨日二回出まして」
受付「えっ。とりあえずお熱測って、おかけになっておまちください」
受付のひとの、血便が出たと言った時のぎょっとした顔が忘れられない。「えっ」って何さ、と思いながらおとなしく椅子に座る。
名前はすぐに呼ばれた。

「きょうはどうされました?」と当たり前のように医者は言う。いや、受付の人に聞いてくれよ、こちとら体調最悪なんだぞ、と心の中で悪態を吐きながら、また症状を言う。触診。ここ押すと痛いですか。痛いです…。ここは?めっちゃくちゃ痛い。ここも痛いですか?ええ。と言うか強く押さないでもらえますか。痛すぎます。
思えば、絶望へのカノンはここからはじまっていた。
「小林さん、あちらで採血とCTとりましょうか」

まさかの採血。そしてはじめてのCT。こんな小さい病院にもCTはあるのね、と思いながら服を脱ぐ。検査着に着替えて寝転ぶ。息を吸って止めて、を二回繰り返す。これラジエーションハウスでみたことあるやつだー。なんて呑気に笑っていられるのも今のうちなのだった。
つづいて採血。わたしは静脈が出ないタイプなので、採血を二回も間違えられた。ただでさえ苦手な注射が、もっと苦手になった。いたい。

検査結果はすぐにでた。
「小林さん、虫垂炎の疑いがあるので大きな病院に今日中に行ってください。紹介状出しとくので」
虫垂炎とはいわゆる盲腸のことだ。えっ?わたし盲腸なの?手術するの?八事日赤いくの、ばあちゃんのお見舞い以来だな。いやいや、なに冷静になっているんだわたし。というかきゅうに採血とCT取られて8千円もとられるのおかしくない?
などと、やけに脳内は騒がしかった。そのままふらつく足元で日赤病院の救急外来へ向かう。不安が心臓にへばりつく。もうやめてくれ、わたしは胃の痛さが終わればそれでいいのだ。

日赤病院の救急外来というところは、患者も医師も救急隊員もどたばたしている。待合室でぼーっとそれらを眺めながら、わたしもここのひとつに加わっているのだ、と悟る。1時間ほど待って、わたしは診察室に呼ばれた。

「お名前と生年月日を教えてください」
大きい病院ではかならず、いついかなるときでも名前と生年月日を言えと言われる。医師よりも患者の数が多いので、把握、確認のためらしい。なるほど。
今朝の田舎病院のときよりも詳しく症状を聞かれる。血便はどれくらい?血はどれくらい出ましたか?どんな色?胃のほかに痛むところは?どれくらいの痛さ?10が最大とするとどれくらいの痛み?血圧はいつもこのくらい?…
怒涛の診察を経て、わたしは救急治療室という仰々しい名前の部屋に案内された。なんかやばそうだが、ちっこいベッドが6台並んでいるだけだったので安心する。ピコン、ピコン、といろんな人の脈拍が聞こえた。ぜんいん生きているのだ、と当たり前のことを思う。
よいしょ、とじぶん用のベッドに横になり、最初になにをするのかと思えば、また採血だった。
「いまから採血二本とって、造影剤を点滴で投与しながらCTとります。それ終わったら胸部のレントゲンとりますからねー」
タイトすぎるスケジュール。というか、きょうだけで採血3本取られるとは。しかし、意識のある中、ベッドで横たわりながらCT室やレントゲン室をうろうろするのはたのしかった。たのしー、と死んだ目でつぶやいたら看護師さんに笑われた。

検査が終わって1時間ほど、ぼーっとベッドに横たわっていた。そのあいだもわたしの足先で担当のお医者さんがPC画面とにらめっこしている。横を通り過ぎる他の外科医や放射線医が、わたしのベッドを見てたちどまり、あーだこーだと言っている。複数人で真剣な顔をして、ときに笑い合いながら話しているところを見ると、お医者さん同士って男女関係なく仲いいんだなーとか思ったりして、あながち医療ドラマの雰囲気は間違っていないなあと思う。救急治療室のなかでそんなことを考えているのはきっとわたしだけだろう。(どうでもいい話だがこの担当してくれた女医さんがとてもやさしくてきれいなひとだった)

まもなくして、救急搬送された人が救急治療室の中にせわしなく運ばれてきた。その患者はどうやら意識がないみたいだった。わたしみたいなぼんやり人間が一台ベッドを占領してすいません、みたいな気持ちになった。

2時間半も日赤病院に滞在しても、わたしの病名はわからなかった。「CTとレントゲンをみたところだと虫垂炎の疑いはきわめてありません。ですが血液検査の結果白血球も多いし炎症も起きてるので、あしたあらためて消化器内科の外来に行ってください」

わたしはなんの病気なんだろう。よくわからないまま、もらった薬を飲んでその日は終わった。
長くなったので分割する。次回は「小林、消化器内科で大腸カメラと胃カメラを予約する」の巻です。

サポートの意味があまりわかっていませんが、もしサポートしていただいたら、詩集をだすためにつかったり、写真のフィルム代にとんでゆきます。