Fate/stay night Heaven’s Feel 3 映画感想 主に言峰

シェイプリフター

言峰に特化したHF映画感想。記憶力まったくないのでとりあえず思いつくままの羅列です。

・言峰ずいぶん古いBMWに乗ってらっしゃる。そういえばzeroでも運転手してた。左ハンドルなのは海外暮らしが長いから? ああいう古い外車はメンテ大変だし、わりと車好きな人が乗ってるイメージだけど、言峰モノにこだわる人ではなさそうだし。

・車中での話題は主に切嗣。いつも心に切嗣を。10年経っても新鮮な感情と理屈を腐らせず輝かせつづけられるエネルギーは凄い。でもそのエネルギーのせいで言峰は楽にも幸せにもなれないのが哀しい。

・黒鍵ってアタッシェケースに入れて持ち運ぶものだったんだ。てっきり懐に常時忍ばせてあるんだと思ってた。まあ常時忍ばせた上での追い黒鍵だったのかもしれないけど。

・疾走、走ってる者目線で描かれていたから映画の大画面醍醐味を堪能。速い速いぶつかりそうで怖いけど爽快。これが見たかったんですありがとうございます。言峰の黒鍵投擲+イリヤのアイリ直伝魔術は因縁含みでアツかった。zeroでアレに縛られたまま大木ぶっこ抜いてなかったっけ言峰。

・目の前で死なれるのはなかなかに堪えるぞ、これはクラウディアのことなんだろうけどバゼットのことも含まれていてほしいという超個人的希望的観測。でも「死なれた」だからたぶん自分が殺した女性は外れるんだろう。アイリも確か殺してたし。いや、もしかして自分の手で殺せなかったから堪えるって意味だったのだろうか。

・言峰アップになるとたまに4次峰っぽく見えるときがある。過去回想の直前だったからもしかしたらわざとそう描かれていたのかもしれないし、私の穿った目がそう見せたのかも。ちなみに映画だと正面より斜め顔のほうがカッコイイ。

・突然の嫁回想、しかもちゃんと「その時」が描かれた……クラウディア喋った! 美人! かぼそい! あーっナイフ持って何するのってわかっててもあーっ!

・クラウディアの声はてっきりアイリ(ユスティーツァ)役の方だと思ってたけどクレジットにちゃんと声優さんが配役されているのを知り申し訳ないのと私の耳はもうだめだ。女の子らしいかわいらしい声。クラウディアいったいいくつだったんだろう。言峰もこのときは若かったはずだから下手したら10代。

・アサシン戦、言峰の独白を聴いてると戦いに目が行かないし戦い観てると何言われてるかわからない。やっぱり黒鍵振りまわす言峰はすごくカッコイイ。手足が長いから映えるのと、外套の閃きが華麗かつシックでありがとうございます。一瞬八極拳ぽい部分もあったようななかったような。円盤でたらリピートして観たい。

・戦ってる最中に自分史上最高機密なんて思い出してたら隙……ほら言わんこっちゃないよー! 

・洗礼詠唱! 洗礼詠唱! フルで聴けて、そして観られて感無量。神々しい光りや堂々とした詠唱の荘厳さたるや。これが悪を極めた言峰の内から出てるという、この矛盾と仕打ちがもうね。キリエ・エレイソンの前はもっと溜めるかと思ったら割とあっさり。

・何回も言ってるけど言峰綺礼のkireiはキリエ→Kyrie→kirie→kireiのアナグラムでは。

・間桐臓硯に対する言峰の嫌悪感は切嗣に対するものと違って単純明快な憎悪という感じ。最初snで因縁を示され、そのあとzeroでの出会いが判明したけど、その時点でもう蔑んでいたようだから、初対面で嫌悪感を抱いた相手が自分と同じ眷属だと知って嫌悪マシマシだったのかな。
で、その純然たる憎悪パワー(zeroにおける何ものにも充たされない空虚や、snにおける自分が悪であった理由への希求と形を変えつつ)を言峰はたえず自分に向けていたわけで、ものすごい胆力だと感銘を受けつつ、つくづく救われない人生だという切なさもある。自分に甘くできない厳しさと烈しさ。

・良心を持ちあわせず醜悪に惹かれ、余人の苦痛が我が至福。人として欠け、歪んだ心は悪でしかなく。悪でしか充たされない言峰がしかし道徳を持ち合わせ、しかも聖職者として最高の適性を持つという矛盾。なぜ己は悪として生まれついたのか、なぜ神が禁忌とした存在をつくりだしたのか。悪であるアンリマユがこの世に産み落とされればその理由が明らかになり、理由しだいでは自分も赦され救われるかもしれない。アンリマユの誕生は言峰にとってまさしく命題。

・それにしても臓硯って名前、ゾォルケンが元だとしても内臓磨り潰すって漢字を当て嵌めるのはウマいというかなんというか。

・言峰が十字架を見上げた先にクラウディア最期の言葉。嗚呼。

・この手で殺したかったというのもある意味愛だと思う。でも言峰にとっての愛は信仰が示す(切嗣が持っていたような)愛だから違うもの。無価値と無意味のくだりは映画ではなかったけど、かつて私はあの解釈を求めて長い旅をしていました。

・士郎がバーサーカーを倒すときの一連はルート全部をひっくるめたよう。「あれを倒していいんだな」というsnルートアーチャーを踏襲したニクい台詞からのエミヤのテーマの重低音からのついてこれるかついてきやがれからの士郎の背を見送るアーチャーの遠くを見る表情、秒を刻むごとに色々こみあげてきて言葉にならない。
一瞬コンテンダーに弾をこめるサブリミナル画像あったような。

・セイバーオルタvsライダーの場面は圧倒的迫力とスピード感。疾風に乗るライダーめっちゃカッコイイ。ライダーの長髪はこのときのためだったと思うような靡き方。しかし速すぎて目が追いつけない。倒されたセイバーが一瞬正気に戻ったとき、士郎がまったく躊躇せず止めを刺したのはおどろいた。原作だと士郎もつらそうな様子だったり分岐の選択肢が出たりしてたから。

・凛の前で心情を吐露した桜、つらさや痛みをじかに告白したのは初めてだったのでは。桜にとっての凛は、強くてカッコよい学校のアイドルだし魔術師としても優等生。羨望しただけ桜の怨み嫉みも深まっていたんだろうと思う。そんな桜に同情するのではなく突き放すのが凛らしい。凛も桜をずっと気にかけながらも、マキリの子になったからには自分では何もできない現実を受け入れて、負けるな(それが桜が幸せになれる唯一の方法であったから)と願っていた。思えば凛も早くに父を亡くし正気を失った母を看取りひとりで生きてきた(100パー言峰のせいなんだけど)し、どちらがつらいか比べることはできないけれど。姉妹だからこその本音と全力のぶつかりあいがよかった。そして凛のここ一番でしくじる特性がいい方向に働いたのもよかった。さらにちび凛とちび桜はいつ見てもカワイイ。

・ちょいちょい挟まれるシェイプリフターくんがいい癒やしだった。みんな怖いよ。ボクが服になるよ。肩乗りもできるよ。
Zeroのときこの子がいてくれたらギルガメッシュもあるいは。

・最終決戦。言峰が十字架にキスした! 命を賭けるときの加護を願う意味であっても、zero時の切嗣との決戦が絶対意識下にあったからの行いだと思う。そしてその十字架を引きちぎって捨てた? 捨てたー?! 充たされまいが悪に窶(やつ)そうが何がなんでも捨てなかった信仰を捨てた気がして、もうその時点で負け戦すなわち死を覚悟してるんだなと。

・殴り合いは、八極拳のはの字もないただの喧嘩だけど力技ゆえの泥臭さが良かった。途中折れた鼻を戻して鼻血を出す言峰、さすがラスボスの厄介ぶり。

・倒れた言峰の笑み。そして手のそばには捨てたはずの十字架が。大事なときいつもそばにあった十字架は言峰の最期まで寄り添って、たったひとりで死んでいく姿を看取った。言峰の問いかけに対しての答えをくれなかった神はしかし寄り添ってくれた存在であったと。あるいは十字架はクラウディアの暗喩(嫁との回想のときにマリア像やら十字架があった)でもあるのかもしれない。

・最後お母さんに会えてよかったねイリヤ……

・罪に潰されるのは逃げだと知りましたという桜。負けるな、という凛の願いを体現しているのかなと。罪にも負けず、どのような糾弾も非難にも負けずに生きていく。

・ラスト、士郎と桜がせーので超えた白線は、幸せな新しい人生のスタートラインであったと信じたい。

・最後に
ここまで言峰に尺を割いてくれるとは思いませんでした。「士郎と桜の物語」と銘打たれた作品で、言峰をこれほどまでに仔細かつさまざまに描いてくれたのはZeroアニメも担当したufoさんだからかなと思いましたし、Zeroからはじまったひとくさりの結びとしてのHFという側面も感じました。
描写の細かさは、士郎に立ちはだかる言峰を絶対的な敵として見せる役割であってZeroは関係ないのかもしれませんが、ファンとしては考えがZeroに及んでしまうのです。
今回クラウディアが登場したのもZero一話における、先日妻を亡くしたばかりで云々、を受けてなのかなと。言峰の、切嗣に対する評価話も端折られず、活躍や内面もじっくり描かれ、アンリマユの消滅を阻む者としてラスボスとなり士郎と泥臭く殴り合ったのも、Zeroで描かれた言峰と切嗣の因果があったからこそだと考えると感動もひとしおです。
素晴らしい作品を見せてくださってありがとうございました。


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