見出し画像

初めての養老乃瀧、そして今。


各々が親の服を着て年齢を誤魔化して野毛の養老乃瀧に行ったのは中学3年の時だ、今では考えられないくらいに未成年の飲酒に寛大だった時代。
僕は父親のツイードジャケットを着ていった、ツイードジャケットはとても重くて、蟹の甲羅に入ったグラタンがとても美味しくて、エビの塩焼きのデカさに感動した、初めて髪につけたジェルはなんだかベタベタして落ち着かなかったけど、大好きな仲間達と腹を抱えて笑った、飲んだ後はなぜか桜木町駅まで仲間達と全力で走った。

毎日がキラキラしていて、この仲間達といれば怖いものなんてなにもないって本気で思っていた。

あれから随分と時が流れ、仲良かった仲間たちの大半は疎遠になり。
僕は疲れた白髪混じりの中年になった、とても残念だけどあの頃の胸に抱いていた夢の半分も叶えることができなかった。

そして今では馴染みの養老乃瀧での一人呑みが何よりの癒やしだ。



好きな酒を飲み、美味しい肴をつまむ珠玉の時間。
文庫本を読み、スマホをいじる。
あの頃のような胸のざわめきの代わりに、穏やかな時間が流れる。
それが細やかながらの幸せだ。

養老乃瀧での一人呑みは「歳をとるのも、そんなにわるくないな」という気持ちにさせてくれる。
今日も酒と肴が美味い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?