痛みなくして成長なし

週に一度、皮膚科に通っている。

僕の症状は尋常性疣贅というものらしい。いわゆる「イボ」の一種で、患部周辺が固くなるというものだ。爪で強く押すと痛むが、日頃はあまり気にならない。

当初はあまり気にしていなかったし、「そのうち治るっしょ」と楽天的に見ていた。が、コヤツは全然治らなかったうえに、よりにもよって左手の人差し指にも転移しちゃったのである。

左手の人差し指というのはギターを弾く僕にとっては致命傷も同然であった。スタジオでは常に痛みと違和感を堪えながらギターを弾くという、謎のハンデを課せられる事態となったのである。そのため病院に駆け込んだのは3,4ヶ月ほど前のことだ。

このイボができた時の治療法をご存知だろうか。
「液体窒素を患部に噴射する」のだ。

ググったところ、液体窒素を噴射して患部周辺を局所的に凍傷を起こさせ、壊死させているらしい。21世紀にそんなラジカルな治療あっていいの?!と思ったが、それがベストらしい。

みなさんはイボに液体窒素を吹き付けられたことがあるだろうか。スプレー缶のようなものに入っている窒素をブシューッと患部にスプレーするのだ。

想像して欲しい。手足の指先という敏感極まりないところに、液体窒素が吹き付けられるとどうなるかを。

低音すぎて「冷たい」とは思わないのだ。むしろ熱い。火傷のような感覚に近いのである。

想像して欲しい。手足の指先をライターでジリジリと炙られるような状態を。とでも僕には耐え難い痛みだ。

僕は液体窒素をジューッとやられるたびに「グッ…」と唸り、歯を食いしばり、全身を小刻みに振るわせ、鼻をヒクヒクさせ、腕をツネツネする。そうすると皮膚科の先生は決まって「ここ、痛みますか?」と聞くのだ。

痛いに決まってるだろ、と叫びたくなるが、こういう時、痛みに耐えるのが必死で全くリアクションできない。本当に痛い時、人はこうなるのかと思う。

「い、痛いです…はい…。」と僕が弱々しく答えると、先生は「あ〜〜、そうですよねぇ……。」と、芝居がかったような声で心配する。

心配してる場合か?!と思う。しかし、液体窒素は吹きかけられるだけ吹きかけられないと、もちろん治らない。仕方がないことなのだ。液体窒素を多めにジューッとしてもらったほうが、なんならおトクとも言えるだろう。

今回は、いつもより多めに液体窒素をかけてもらおうと、めちゃくちゃ痛いのに「あんまり痛く…ないです…ねぇ…。」と言ってみた。

「めちゃくちゃ痛い」の上を思い知らされた。
もう二度と言わない。

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