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“VRソフト個人製作とは?”VR焚火製作者oreno_dinnerに独占インタビュー

2018年8月にOculusGo専用ソフトとしてkey販売されたVR焚火『BONFIRE
突如ツイッターのTimelineに現れたVR焚き火はコアな層に人気を博し、徐々にファンを増やしているのはご存じだろうか。
なぜ作ったのか?焚き火とは一体何なのか? 気になって夜も寝れない人は多いだろう。

だがみなさん、喜んで欲しい。
普段はメディアに出たがらないoreno_dinner(製作者)だが、なんと我々はOculusStoreにリジェクトされたばかりの彼に単独インタビューをすることが出来た。ぜひ読んでいただきたい。

------Oculusレビューお疲れさまでした。Twitter等も拝見させて頂いたんですが、今回の『VR焚き火』のOculusレビュー、実際どういった手応えだったんでしょうか?

oreno_dinner(以下ored)そうだね・・・思った以上に言語のハードルが高かった。という実感かな。『VR焚き火』は最高の作品、これは絶対間違いない。ただそれがOculusの審査チームに上手く伝わらなかったのは、僕の至らなかった点だし、これからの課題だよ。
 でも昨今の企業から求められている瞬間風速的な良さより、ジワジワくる良さがVR焚き火の方向かなと思っていて、今回リジェクトされても全然めげてないし、むしろOculus審査チームがこの良さを理解できる時代まで待たなきゃいけないのかな、なんて思っているよ(笑)

------そのVR焚き火ですが、製作に至った理由はなんでしょうか?

ored:もともとVRというのに興味はあったんだ。YouTubeにある焚き火を眺める動画が結構好きで、VRで焚き火ができるソフトはあるかのなと探してみたんだよ。でもVR焚き火と言いつつ薪をくべられないソフトばかり。それって僕にとってのVR焚き火ではないんだ。
 だから自分自身の手で納得のいくVR焚き火を作るしかない、と思った。けどVRソフトを製作するための環境ってめちゃくちゃ高いじゃない?PSVRは比較的安い部類だから検討はしてみたんだけど、個人で開発とかできないし。遊ぶだけにしてもPSVRはケーブルがあるから邪魔になると思って買えなかったんだよね。

------確かにPSVRによってハードルは低くなりましたけど、ケーブルの問題はまだまだ購入のハードルを上げているかもしれませんね。

ored:torne等の映像コンテンツのお陰で生活の中心にPS4はあるからね、居間にケーブルがはびこっていたら嫁は怒る。居間じゃない所にあるPCVRは有線でもいいんだけど、こっちは凄く高い(笑)

------なるほど(笑)、そこでOculusGoの登場ですね。

ored:そうそう! 3万円以下で一体型のモバイルVRゴーグルが凄い!!みたいなコメントが5月のGW中にTwitterに沢山呟かれていて、凄く欲しくなったんだ。やっぱり価格とスタンドアローンのインパクトは凄まじかったね。
 Androidベースというから今持ってるPCでも十分作れそうで、OculusGoを知った瞬間にUnityで僕は思わずVR焚き火を作り始めたんだよ。そして良さそうなのができそうだから嫁の了解を得て買ったんだ。

------そこからTwitterでVR焚き火の進捗を呟き始めたと。

ored:週1の進捗呟きを目標に製作してたんだ。なんせ初めてのVRソフトだったからめちゃくちゃ検索したよ、GoogleとかTwitterとかQiitaとか。そこでVR好きな先駆者や#OculusGoDevのハッシュタグとか知っていくんだけど、まあそこら辺の事情はTwitterの#VR焚火 タグを検索して読んで欲しいかな。
そこで製作過程のライヴ感のような物を感じ取ってほしいよ。

------趣味の個人製作とのことですが、製作時間とか詳しく教えて頂きたいのですが。

ored:そうだね、本業は全然プログラミングとか無縁でエクセルのマクロすら仕事で作ったことは無いんだけど、高専でプログラミングは少しやっていたんだ。アセンブラだけどね。だからプログラミングに対しては拒否感はあまり無くて、趣味でC#とOpenCVを使った人の顔を追従するロボットアーム”枝丸君”を作ったり、pythonで魔法陣みたいな円周状の二次元コード作成&読み取りソフトを作っていたよ。まあ魔法陣の方は読み取りのハードルが高くて凍結してるんだけどね。
 僕の製作スタイルは毎日少しづつ(1~0.5時間)、休日は空いた時間にカッチリ作る(4時間)という感じかな。振り幅は勿論あるけど、だいたいこんな感じ。傾向としては何か週末に発表できる進捗になったら、製作速度を緩めて他のことするってかんじかな。ここで注意して欲しいのはあくまでも趣味だよってこと。楽しむのが第一だし、やめちゃったり凍結したりするのは全然問題ない。同人誌を作る時だってそう。製作を楽しむことが一番で、楽しんだ結果から生まれた成果物を皆に見てもらうのは、その後の事さ。

------製作時間は結構短いような感じですね

ored:通勤時間とか休日の移動時間に色々unityの知見を調べているから、それを含めた製作時間はもっと長いと思うよ。VR焚き火に関して言えば、新規性のある技術は必要無かったので製作時間はあまりかかるものじゃなかった、ってことだろうね。実際、情報があまりなかったOVRLipsyncやOculus Audioの実装には苦労していて時間もかかっているからね。本当に先駆者の人達は凄いし感謝をしています。僕も情報を出したい気持ちはあるんだけど、UnityやVR周りの情報の速度が速くて、書こうと思ってもそれは既に古くて混乱を招きかねない不安があるんだ。
 あとこれが大きな理由なんだけど、OculusGoは良いハードなんだけどソフトが圧倒的に足りない。僕が知見を書くくらいだったら、ソフトを作った方が良いと思ってるんだ。

------確かに映像系のコンテンツは豊富にありますが、ソフトが少ないように思いますね。

ored:映像系は互換性が高くてソフトとは異なるレイヤだからOculusGoでも見れる超すごいVR動画を作ろうとしている人は多いよね。現在のVR動画での解は3DoFであり、それがOculusGoであることは間違いない。でも僕はソフトも欲しいんだ。virtual virtual realityの感動をもう一度味わいたいと思っている。ソフトって基本的に特定のハードに向けて作らなきゃいけないから、OculusGoのソフト製作を盛り上げていかなければソフトは増えないと思っているよ。

------OculusGoを盛り上げなきゃいけない?

ored:先駆者達のお陰で資料は豊富にある。だけどもソフトが足りない。推測なんだけど、結局先駆者の人達ってPCVRやHoloLenzといった、もっとカッティングエッジの領域にいるんだよ。まあ先駆者というんだから、そういうSAGAと思うんだけれども、OculusGoっていわゆるモバイルOculusDK1だから、先駆者達は経験済みなんだよね。OculusGoに対しての思いは強く抱いていると思うんだけど、新たな刺激を求めて開発は違うデバイスに挑戦している。ぶっちゃけソフト制作に関してはOculusGoに対してあまり魅力を感じていないのが正直なところじゃないかな。だからVR機器はOculusGoしか持っていない僕みたいな人は結構必死で、OculusGoを盛り上げないと良いVRソフトに出会えない(笑) 良いソフトが無いとハードの魅力が無くなるから、本当にOculusGoのソフト制作が盛り上がればいいと思っているよ。

------Twitterの呟きではVR焚き火の製作はスムーズに見受けられますが、大変だったことはありますか?

ored:正直に言うと、UZrecordsさんの音源を使わせて頂ける事が分かった瞬間に、VR焚き火の90%は完成したんだ。だからリリースできなくなるような障害が発生して乗り越えた、みたいなドラマチックな展開は無かったよ。まぁ、しいて言うなら操作方法かな。コントローラーにはマジックハンドモードと視点移動輪っかモードがあるんだけど、ボタン割り振りや切り替え方法は試行錯誤だったよ。アルファテストしてくれた皆さんには本当に感謝しています。正直まだ改善点はあるんだけど、リリース後に操作方法変更はやってはいけないと思っているから、歯がゆいね。

------アップデートでVRMモデルに対応しましたが、何か理由はあるのでしょうか?

ored:VRMについては名前だけなんとなく知っていたんだ。Unityで人型モデルを便利に扱うオープンソースという感じで。まあ最初はVR焚き火に関係ないと思っていて全然頭に無かったんだけど、VRoidが開発されているというニュースを見て、VRMの色々な使い方、VR焚き火とコラボできるアイディアが浮かんできたんだ。

------VRMの朗読機能も特徴的ですよね。

ored:そうだね、正直この機能はVR焚き火では無いと思っていて、焚き火空間でのVR朗読ソフトだと思っているよ。ただ、こういう遊び方もあるって提示したかったんだよね。VR焚き火として僕は世界を作ったけど、焚き火からVRMが朗読する世界に焦点を当てるとまた違った魅力的な世界になるんだ。それってやっぱりモニター越しのゲームや作品とは違った、VRならではの事だと思うよ。

------ところで次のVRソフトを作っているようですが、どういった作品なのでしょうか?

ored:まだまだ発表できるほど具体的なイメージは無いんだけど、やっぱり3DoFのソフトを製作していると6DoFがやりたくなるんだよね。制約があると、どうしても制約のない世界に行きたくなる。勘違いして欲しくないから言うけど、VR焚き火は3DoF用として一貫して作ったから3DoFに対して不満はない。3DoFはものすごく可能性を持っている世界だと思っているんだ。ただ次の作品は3DoFとして作るけど、6DoFに結構流用できるような作品にしたいと思っているよ。

------3DoFから6DoFのシフトという事でしょうか?

ored:そうだね、その言葉がピッタリかも(笑) 今の家庭用6DoFってルームスケールといっても日本だと部屋の制約が強くて4畳くらいの空間で動けるって感じでしょ?やっぱりそれって自由に動けるとは言えないし、意外と3DoFの制約と共通点が多いんだよね。
 virtual virtual realityを遊んだ人は分かると思うけど、真後ろ向くのは無線でも結構キツイ(笑)
 結局有線だから問題だ、と言っても無線で解決できないこともあるし、色々模索していかなきゃならないんだよね。だから3DoFと6DoFに壁はあまりなくて、シフトしていけると思ったのかな。

------最後に、VR焚き火ファンに一言お願いします。
ored:焚き火って最高ですよね。居心地の良い空間を全力で表現しました。
次の作品も気持ち良くなれるようなものを目指して作っていますので、楽しみにしていてください。

------本日はありがとうございました。

ored:こちらこそありがとうございました。正直めちゃくちゃ緊張したよ(笑)


突然の取材にも快く引き受けてくれたoreno_dinnerという設定のセルフインタビューだったが、楽しんで頂けたであろうか。
一つの作品を出した後の一人語りだが、セルフインタビュー形式は読みやすく、書いてる本人も楽しいので、この方法はありだとと思う。ぜひみんなセルフインタビューして欲しい。
あと良かったらVR焚き火を応援してね。

頂いたサポートは作品制作費に使わせて頂きます。どうぞ応援よろしくお願い致します。