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さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-(ドルビーシネマ版)の感想

 2022年2月1日、ドルビーシネマ版の「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」を観た。最新技術で蘇った本作は本当に素晴らしかったので、思い出と感想をここに書き記したい。

 1981年の劇場公開当時、自分はテレビ版と劇場版の存在を知っていたが、年齢も低かったこともあって映画館に行くという発想はなく、劇場で本作を観ることはできなかった。
 劇場版銀河鉄道999の内容を知ったのは、親類の家にあったフィルムコミックだった。鉄郎の顔がTV版と違うことに違和感を抱きながらも、とても綺麗な絵だなと思ったことを覚えている。
 その後、年末年始の深夜にテレビ放映されたのを観たのが、本作との出会いだった。劇場版銀河鉄道999ではなく、さよなら銀河鉄道999を先に観てしまったのが、私の本作の評価を決定づけた。
 時は流れ、レーザーディスクの劇場版BOXを店頭で見かけて即購入し、何度も何度も繰り返し鑑賞するほどのお気に入り作品となった。
 さらに時は流れ、松本零士先生の仕事場にお邪魔して、そのLDBOXの箱にサインを書いてもらえる幸運も舞い込んだ。その際に、999が生まれたきっかけや地球を飛び立つシーンについての元ネタを教えてもらったのは、一生の宝物だ。

さよなら銀河鉄道999の魅力
 劇場版銀河鉄道999はストーリーが綺麗に完結した名作であっただめ、どうしても本作は「蛇足」の評価が多い。41年ぶりの再上映であっても同様の評価がネットには多く見られた。
 そんなことはもう分かっているんだから許してはくれないかと思うのだが、劇場版銀河鉄道999の熱烈なファンにとってはさよならは許せないようだ。
 それでも私は本作が大好きだ。ストーリーや話の整合性はどうでもいい。一瞬一瞬のシーンが濃密で引き込まれる。カッコイイ!美しい!大興奮!全編を通じて名台詞のオンパレードだ。それは理屈でなく、どのシーンを切り取っても絵になるのだ。
 それゆえ、最終的に誰もが気付く「鉄郎や老パルチザンが頑張らなくてもサイレンの魔女で機械帝国は滅んだのでは?」という身もふたもない結論に達したところで、本作の評価は変わりようがなかった。

ドルビーシネマ版の感想① 映像
 自分は劇場では本作を観たことがないため、残念ながらテレビ、LD、配信版との比較になってしまう。
 ドルビーシネマ版の映像は本当に美しかった。YouTubeで従来版との比較動画を観たときは、ドルビーシネマ版(4KHDRリマスター)は色がくどいなと思ったが、劇場で観てみると、色が鮮やかで鮮明であることはもちろん、暗い部分が真っ暗になっており、フィルムっぽいガクガクしたところもなく、これは本当に41年前の作品なのか!?という美しさであった。さらに、本作の特徴でもある透過光は眩しいくらいに輝いているではないか。
 ドルビーシネマ版で最も美しいと感じたのは惑星モザイクでのシーンだ。ホームから見る夜空は真っ暗で、遠景の都市は色鮮やかでかつ透過光で輝いていた。それは都市の夜景そのもので、実際の夜景と比べても遜色ない光景であった。
 帰宅後に、オリジナル版の同シーンを見直したところ、うっすら明るい夜空にビル群が淡く浮かんでいて、なんとも眠い風景であり、ドルビーシネマ版とは全く印象が異なっていた。
 オリジナル版の上映を観た方からすると改変になってしまうのかもしれないが、ドルビーシネマ版で作り手が狙った色彩により近づいたのではないだろうか。
 言うまでもなく、大画面で観る999号は迫力満点であった。惑星大アンドロメダへの進入シーンは圧巻だった。

ドルビーシネマ版の感想② 音響
 音響についてはネットでの感想ではあまり語られていないようだが、ドルビーシネマ版(ドルビーアトモス)で本作の音響は進化し、説得力を大いに増したと感じた。
 これ、映像は4K ULTRA HD Blu-ray版のソフトを購入すればいいが、音響ばかりはぜひ劇場で体験して欲しいと思った。リバイバル上映をぜひしていただきたい。
 冒頭は雨が降っているシーンだが、本当に空から雨が降っている。台詞はしゃべっている人のほうから聞こえてくるし、メーテルからのメッセージはまさにその機械から音が聞こえてくる。
 惑星ラーメタルのホームでのメーテルの足音は、カツーン、カツーンと次第に近づいてきて(メーテルが来た!)と鳥肌ものだったし、999の客室内のシーンで聞こえる走行音・環境音は宇宙鉄道の走行中にはこんな音が聞こえるのかと感動した。個人的には客室内の環境音がもっとも印象的だった。
 モノラルで平板だった台詞、効果音、BGMが分離され、必要な場所・音量で鳴り響く。自分の思いを表現する言葉がみつからないのだが、とにかく素晴らしかったし、鉄郎たちと一緒に冒険をしている気分だった。

おわりに
 今回のドルビーシネマ版の公開は、私が夢にすら思わなかった劇場で999を観る機会を与えてくれた。しかも、21世紀の技術でアップグレードされた極上品であった。東映アニメさんには感謝しかない。
 実際に観る前には、映画を見たら泣くに違いないと思ったが、涙目、鳥肌となるシーンはたくさんあったが涙は出なかった。これが老いなのか…しかも感動するシーンも以前と変わっていて、41年間の時の流れを意識せざるを得なかった。自分以外のお客さんも、かつては鉄郎だった老パルチザンが多かったけどね!


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