東京五輪招致は神宮再開発のため?読み比べから見えてきたこと。

こんにちはプチ鹿島です。

先週の自分のラジオ番組(火曜『キックス』YBSラジオ)や『文春オンライン』「吉本・政権・沖縄」の読み比べをしたら驚くほどの反響がありました。

『パワハラ、隠蔽、ブラック……でも吉本は「国から100億円」 プチ鹿島「静観できる事態ではない」「吉本」記事で、新聞読み比べ』(プチ鹿島・7月25日)

実はラジオやコラムでは目新しいことは言ってません。1カ月以上前の記事を紹介しただけです。

『辺野古 見えぬ対話 移設ノー、知事強調』(朝日新聞6月24日)

この記事では6月20日にある会議がおこなわれたことが書かれているのですがその部分を読むと、

《「基地跡地の未来に関する懇談会」の初会合には吉本興業会長の大崎洋氏らが出席。エンターテインメントやスポーツで「世界一の島にする」といった意見が出た。》

さらっと書かれていたのです。

もう一度言いますが1カ月以上前の記事です。

これを読んで私は「沖縄」「クールジャパン」「百億円」の事業の記事と併せて心にストックしておいた。

で、あの吉本の社長さんの記者会見を見て「こういう体質の会社にたくさんの税金が流れているのはマズくないか?」とラジオで喋り、コラムで書いたのです。

すると、私のラジオがきっかけとなったのか(?)、この点に注目した記事がたくさん出てきました。

本日の『東京新聞』では「では過去の沖縄の新聞ではどう報じられていたのか?」という検証をしていました。とても面白かったです。ゾクゾクしました。沖縄の基地跡地構想にはやはり「カジノ」というキーワードもあったことがわかりました。

ラジオでも言いましたが私が話したことは「世の中にすでに出ている記事」です。誰でも手に入れることのできる情報です。でもそういうのをつなげていくと「おお、、」と思ってもらえる瞬間がある。読み比べの面白さです。

さて今週の火曜キックスのオープニングでも同じく「すでに出ている記事」と「現在」をつなげてみました。

私が先週の新聞記事で最も気になったのがこちら。

『神宮外苑 高層化なし崩し』(朝日・7月25日)

これは先週木曜に朝日が一面トップで伝えた記事です。スクープというよりは「東京五輪あと1年」的な記事のひとつでした。

ここで伝えられているのは、

・明治天皇をまつるのにふさわしい沿道の維持を理由に、日本初の風致地区に指定された明治神宮外苑地区(東京都港区、新宿区、渋谷区)。「都心最後の一等地」と言われた一帯でいま、高層ビルが「雨後のタケノコ」のように生まれている。
・地区の景観を半世紀ほど守ってきた建築物の高さ制限が緩和されたためだ。
・呼び水になったのが、20年大会の招致だった。
・都が1970年に条例で設けた高さ制限は15メートルだった。しかし、この地で国立競技場を運営する日本スポーツ振興センター(JSC)が、大会招致に向け、英国の建築家ザハ・ハディドの案を元にした高さ75メートルの新国立のデザインを発表すると、7カ月後の13年6月、一部の高さ制限が80メートルに引き上げられた。

と書かれています。

わかりやすく言うと美しい景観を守るために高さ制限「15メートル」だった明治神宮外苑が新国立競技場をつくることで一気に「80メートル」に引き上げられたのです。

朝日はさらっと書いてますが、なんかザワザワしませんか。

ここで思い出したのが過去の記事です。

私はメールマガジンをやっているのですが、4年前にこちらの記事を紹介していました。

『新国立競技場計画を迷走させた「5人の男」すったもんだの末、白紙撤回』AERA編集部(2015/09/09)

『AERA』の記事です。神宮周辺の「高さ制限の緩和」についてこの時点で書いていました。

大事だと思う点を抜粋します。

・この周辺はもともと、建物の高さは15メートルまでと規制されていた。それが、神宮外苑再開発に伴い、高さ制限と容積率が緩和された。
・決めたのは2013年5月17日に行われた東京都都市計画審議会。新国立競技場や日本青年館が含まれる地区は、建築物等の高さの最高限度を75メートルとすることが認められた。しかも審議では5分ほどの説明があっただけで、全員一致で可決した。
・神宮外苑の高さ規制が緩和される10カ月前、公募が始まった新競技場の国際デザインコンペの基準には、すでに高さが「70メートル以下」と書かれていた。

高さ制限が15メートルとされていた時から、新国立競技場の高さの条件は「70メートル以下」と公募告知されていた事実がとくに気になりますよね。この公募はザハ案のときです。

当時の『週刊文春』2016年9月15日号にんなコメントがありました。新国立競技場の建て替えの経緯についてです。

国立建て替えには高いハードルがあった。神宮外苑が、風到地区に指定されており、建築物には15メートルという高さ制限があったのだ。「そこで13年6月、都は容積率を緩和し、高さ制限を75メートルに引き上げるのです。これによって、新国立の建設を75メートルに引き上げるのです。これによって、新国立の建設をした中心とした神宮外苑の再開発が可能になった。

これはいったいどういう意味だろう。

あ!・・・・

つまり、新国立競技場はアリバイとして使われたのではないか?

もともと「神宮外苑の再開発」をド派手におこないたかった。それが最優先。

だから建物の高さ制限も15メートルから75メートルに変更した。

神宮外苑の高さ制限緩和はオリンピック(新国立競技場建設)のためではなく「神宮外苑の再開発」のため。

こんな見立てを4年前のメールマガジンで書いたのです。

その1年後には次の記事もありました。

私の感想を含め、当時のメルマガ部分をそのまま抜粋します。以下、過去の文章です。

『新国立競技場、隈案に決定の裏に利権の闇』(週刊ダイヤモンド編集部・2016年4月4日)http://diamond.jp/articles/-/88967

これまで「新国立競技場」のあらゆる報道を読み、考えたことをこのメルマガに書いてきました。

私は野次馬なので当事者への取材は当然してないですが、でも「世に出た記事」を読み比べるだけで、浮かんでくる行間がある。情報を細かく追えばみえてくることがある。この記事を読んでも思いました。

昨年の夏にザハ案が撤回されました。そのあと新デザインコンペが早急におこなわれた。A案は隈研吾氏&大成建設を中心とするグループ、B案は伊東豊雄氏&竹中工務店・清水建設・大林組を中心とするグループ。

選ばれたのはA案でした。

ここからがこの記事の肝なのですが、JSC(日本スポーツ振興センター)のホームページ上で公開されている議事録に、"黒塗り"されている部分があるというのです。そう、隠されている部分が。

具体的に言うと「伊東氏の技術提案書と15年12月19日に開催された第8回審査委員会の議事録」のことです。

その黒塗り部分は編集部の取材から推定すると、伊東氏が提案した「人工地盤の縮小案」だという。人工地盤とは立体の公園スペースのこと。伊東氏の縮小案だとデザイン的に見た目がスッキリし、約29億円のコストを圧縮できるものだった。

ところが議事録では「都市計画変更は簡単にできることではない」とJSCがツッコんでいるという。

さらに審査員の一人とみられる人物が「コストが削減できるからという理由で、東京都都市計画審議会で決定した都市計画を変更できるわけではない。この方が都市計画にとって何らかの点でプラスだというロジックがなければおかしい」と指摘した。

ここでいう都市計画というのは新国立競技場だけでなく「神宮外苑全体の再開発計画」のことです。伊東氏の案はデザインとコストのスリム化を狙ったものだったが、そうなると都市計画を変更しなければならなくなる。

そんなチャレンジングな姿勢がJSCらの“虎の尾”を踏んだのだろう。この案が通れば都市計画がゼロベースになり、トリプルタワーを含めた神宮外苑再開発計画が白紙に戻されかねなかった。

文中のトリプルタワーとは3つの建物計画のことです。

「新・日本青年館ホテル」(高さ60メートル)、「日本体育協会・日本オリンピック委員会新会館」(高さ60メートル)、外苑ハウスの東隣に建設する高層マンション。どれも高い建物です。しかし、もし都市計画を変更すればこんな高い建物は建てられなくなる。

ここで、昨年2015年の9月に私のメルマガで紹介した記事を思い出してみてください。

・新国立競技場計画を迷走させた「5人の男」すったもんだの末、白紙撤回(AERA編集部 2015年09月09日)http://toyokeizai.net/articles/-/83536?page=5

アエラの記事です。『便乗焼け太り 規制も緩和』というくだりに注目してください。以下、引用します。

日本青年館は全国にある青年団の総本山ともいえる施設で、所有者は財団法人日本青年館。明治神宮の造営に各地の青年団が貢献したことで建設が許され、1979年に改築された。
その築36年のビルを新競技場の周辺整備と称し、税金を使って建て直す。4フロアをJSCが本部として使う。先に書いた移転費174億円にこの事業が含まれている。青年団を出身母体とする自民党政治家は少なくない。今回の建て替えでも自民党の有力議員が動いた、と言われている。
都内の貴重な緑地として環境が守られてきた神宮外苑。「山手線内に残された最後の再開発地」と、不動産開発業者の垂涎の的でもあった。「規制を取り払うのは五輪誘致しかないと言われ、森の動きが注目されていた」

政治評論家の鈴木哲夫さんは次のように話します。

《再開発には一帯の大地主である明治神宮の協力が不可欠だ。森は宗教法人を管轄する文科省に強い影響力をもつ。宮司の中島精太郎に会って協力を求めたのは、森の意を受けた鈴木寛だった。》

重要な名前が出てきましたね。森喜朗先生の登場です。

大事な部分なのでもう一度。

《都内の貴重な緑地として環境が守られてきた神宮外苑。「山手線内に残された最後の再開発地」と、不動産開発業者の垂涎の的でもあった。「規制を取り払うのは五輪誘致しかないと言われ、森の動きが注目されていた」》(AERA)
《再開発には一帯の大地主である明治神宮の協力が不可欠だ。森は宗教法人を管轄する文科省に強い影響力をもつ。》(AERA)

今回のコラムを書くためにいろいろ調べてみると、そもそも神宮外苑の再開発というのは「2016年」の東京五輪招致のときのセットの構想だったことがわかります。しかし東京は落選して白紙になった。そしてまた「2020年」に立候補する。

このとき森喜朗が石原慎太郎都知事(当時)を説得して再度五輪招致に立候補させたことは「美談」になっています。森喜朗本人が自著で書いたり大声で語っているからです。森喜朗の影響力の大きさがわかります。

明治神宮まわりの人々&神宮外苑を再開発をしたい人々が有力な政治家に相談する→出てきたのが森喜朗さん、という図でしょうか。

思い出してほしいのは、森喜朗はマスコミに感想を尋ねられて「B案がいい」と発言したことです。自分の立場(五輪組織委員長)をわかって言っているのかという批判がわきおこりました。

今回のダイヤモンドオンラインの記事の「都市計画を変更しないためにはA案ありきだった」説を読むと森喜朗は最初から「A案」支持だったのではないでしょうか。自分の不人気を利用してあえてB案がいいと言っていたのでは?という邪推が浮かびました。※あくまで邪推です。

さて、ここで私が昨年7月に書いたコラムも紹介します。

自分で言いますが今読んでもなかなかいいポイントかも。というのもある政治家の発言に注目しているからです。

・「新国立競技場問題」で森喜朗の秘蔵っ子・馳浩がいよいよ参戦|プチ鹿島コラム(デイリーニュースオンライン 2015.07.12 )http://dailynewsonline.jp/article/989023/?page=all

ある政治家とは馳浩さんのこと。馳議員が文部大臣に就任する直前のことです。

昨年7月7日の有識者会議に馳浩が出席していたことに私は注目しました。この記事を読んでください。

「都民を納得させる理由が必要だ」。そう繰り返す知事に、7日の有識者会議で「知事、合わせ技一本ですよ」と自民党の馳浩衆院議員が話しかけた。
馳氏が引き合いに出したのは、都がJSCなどと4月に覚書を交わした「神宮外苑地区のスポーツクラスター(集積地)」計画。「新国立競技場単体ではなく、周辺の新宿区、渋谷区、港区の神宮外苑を一体で考えないといけない。スポーツ文化の発信エリアとして再開発すべきだ」。有識者会議でもこう訴えた。(朝日新聞・7月9日)

馳浩が森喜朗に代わり有識者会議で、「新国立競技場単体ではなく、周辺の新宿区、渋谷区、港区の神宮外苑を一体で考えないといけない。スポーツ文化の発信エリアとして再開発すべきだ」と発言したのです。

やっぱり、五輪より神宮再開発が本当の狙いのように見えてくる。

さぁここで現代に戻り、先週の朝日新聞の記事に戻ります。つまりこれらから4年後の今ですね。

記事を抜粋します。

《高さ制限の緩和は、JSCなどのスポーツ施設を持つ団体や、伊藤忠商事や三井不動産、明治神宮といった地権者にとって福音だった。高層化によって、土地面積あたりの収益性が高まるからだ。容積そのものが売買の対象になるため、競技施設を新設する費用を生みだすこともできる。》
《JSCで国立競技場の建て替え問題の最前線にいた高崎義孝(63)は「都、JSC、民間企業の水面下の動きが一気に表に出た」と振り返る。地区内で本社の建て替えを計画してきた伊藤忠は、社内報に「千載一遇の機会を得た」と記した。》

港区青山通り協議会の方はこうコメントしてます。

《五輪開催にも、再開発にも、反対ではない。それでも、民間事業者の利益優先に見える開発計画と、引きずられるように規制を緩める行政の姿勢に違和感を覚える。》

記事にはこんな一文があります。

『だれのため、何のための再開発なのか。』

このことをもう一度考えてみたい。問題提起したいのです。

東京五輪は本当にアスリートファーストなのでしょうか。

五輪より神宮再開発が第一の目標(開発ファースト)だと見立ててみると、このクソ暑い時期に五輪をやる意味も理解できます。

だって既成事実(アリバイ)として五輪招致をして再開発をしたかったから。高さ制限をとにかく緩和したかったのではないか?

ここらへん、もっとメディアに報道してほしいです。朝日もしれっと書いている場合じゃない。

こんなことを今週のラジオで話しました。


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