乳がん検診に行きまして

「マンモグラフィが、どのくらい痛かったかというとね、」に続く、うまい例えをすごくすごく考えながらペダルをこぎました。うまい例えもなにも、まだ経験していないので、例えられるはずがありません。

私が自転車で向かっているのは乳腺クリニック。乳がん検診に行きます。

ここ数日、乳がんに関するネットの記事を偶然見かけたり、街中で広告を見かけたりすることがびっくりするほどの頻度で続いたので、これは乳がん検診を受けなさいというメッセージかなと思っていたのですが、自らおっぱいをペチャンコに挟まれに行く勇気が出るはずもなく、ここはひとつ背中を押されようと、いつも私がとっている「あの方法」に頼ることにしました。

その方法とは、他力本願です。どういうことかと言いますとね。

「私が乳がん検診に行った方がいいなら、何かの形で教えてください。明日くらいまでによろしく。」と願います。心の中でです。

誰に、もしくは何に願っているのかは私にも分かりません。でも毎回これで答えのヒントになることがやってきます。どうしてか、かならず来ます。早いとすぐに。だいたい次の日くらいまでには。

次の日、友人が来ました。靴を脱ぐなり開口一番こう言ったのです。「今朝、乳がん検診を受けて来たんですよ。」ひゃー来た。これは検診を受けろということでしょう。

おしゃべりの大好きな彼女はこう続けます。

受けたことあります?すごく良いクリニックでしたよ、おすすめです。え?挟まれるのがですか?めっちゃ痛いです。ですです、ぺちゃんこになります、うーん1センチ厚くらい?チャリで行きました。ですです、そこです、あの坂を越えますよ。予約?すぐ取れます、ていうか何日も待てませんよね、わたし前日に予約しましたもん。

私の知りたかった情報が全てクリアになりました。つんのめるほどの勢いで背中を押された私は、その場でそのクリニックに検診の予約を入れました。もう迷いはありません。そしてお話は冒頭に戻ります。

私は自転車でクリニックへ向かいます。ドキドキするので他のことを考えようとしましたがそんなの無理な話、自然と頭の中はおっぱいでいっぱいになります。

桜坂のきつい上り坂に差し掛かります。ペダルをこぐリズムに合わせ、おっ、ぱい、おっ、ぱい、おっ、ぱい、と無意識に頭の中でとなえながらのぼっていました。意外とリズムの相性がいいです。てっぺんまでのぼり切ったところで気付いて、やめました。

珍しく一度も足を地面に着けることなくこの坂をのぼりきれたのは掛け声のおかげだと思いました。あとは下り坂だけです。「帰宅後、夫に体験談を話すシミュレーション」をしながら下ることにしました。

分娩の痛さについて「鼻の穴からスイカを出す」とよく例えられますが、あれのマンモグラフィ・バージョンで何かうまい例えはないかを、はさまれる前から考えていました。はさまれる寸前まで一生懸命考えました。おかげでドキドキする間もなくはさまれたので結果として良かったのかもしれません。エコーもしてもらいました。検診結果は異状なしでした。ホッとしました。

マンモグラフィは事前に聞いていたほど痛くはありませんでした。どちらかというとイタ気持ちいいくらいでしたし肩まわりのコリがほぐれたようなクセになりそうな感覚すらありました。夫に話す予定だった「どのくらい痛いかというとね、」のくだりはボツになりました。はさまれているおっぱいを見ながらパニーニみたいと思いました。

ロビーでお会計を待つ間、Amazonでパニーニメーカーをさがしました。デロンギの、良さそうなパニーニメーカーを見つけて、お気に入りに追加しました。ワッフルも焼けるそうで一石二鳥です。

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