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ライナーノーツ「denki-bran」その2

さてさて。執筆熱があるうちに…。

■ミニアルバム「denki-bran」セルフライナーノーツその2

 【denki-bran(part1)】について

■曲について

全曲に言えることとして、ラフなコード進行・構成・リフ・メロディをgaragebandで作ってから、Logic Pro Xで読み込んでシンセサイザーの音を選んだり、ギターを重ね、初音ミクの打ち込みを行う、と言う工程を踏んでいる。

garagebandを触ってると、小一時間は没頭できるけど、iPhoneのバッテリーの減りがえげつない。

選んでる音色については、極力電子音であることを心がけている。要するに、バンドサウンド、アコースティックサウンドで出せる音は使わない。(明確な意図があるときは除いて。)
ピアノやストリングス音源を使う時は、これでもかとエフェクトかけたり、「おそらく、ここでこうは弾かないんじゃないかなぁ〜?」というフレーズにしている。

で、この「denki-bran(part1)」。

電子音のシーケンスと高BPMのドラムに、ジャズやブルースで聞いたことがあるようなベースラインが絡み、抑揚のないミクのボーカルが乗る。そしたら突如ストリングスとピアノが階段のように駆け上がり、終盤へ向かうに連れて、BPMはそのままに「加速感」が増していく(ように聞こえる)。

ピアノもストリングスも全く知識がない(弾けない)ので、電子音の「鎧」「壁」ありきで、いい意味で「インチキくささ」を出せたのかも。

この曲の原型ができたのは、今年の1月に福島県いわき市に出張に行った時。夜食事を終えて宿に戻る時に、ものすごく鮮明な満月が浮かんでた。理由なく、肋骨の奥がざわめき出して、ダッシュしたくなる。いや、ダッシュしろと何かにせがまれているような感覚。ウサギの餅つきが達人のように速くなるようだ・・・。

そのイメージのまま、宿の部屋でgaragebandで打ち込んだ。

あまり、Aメロ、Bメロ、サビなどは考えないで作った曲。

■歌詞について

曲の途中でピアノとストリングスだけになって浮遊するようなパートがある。酔っ払ってる時に意識がどこかに行っちゃってる感があって、打ち込んだときは「やったな」と思った。

いわき市でお酒にまつわる思い出。

今年の1月のいわき出張は2回目。1回目は一昨年の夏だったと思う。夜にいわき市の横丁に行った際、そこで初めて「電気ブラン」なるお酒に出会うのだった。前回のライナーノーツにも書いてるとおり、往年の文豪たちが好んで、夜な夜な浅草で飲んだと言われているお酒。

この一口含んだときの苦味たるや。

そして一気に血中を駆け巡り、顔面を紅く染め上げる。

この文豪たちの苦悩や葛藤を象徴するような苦味と、彼らとともに浮世離れしていく感覚から、アルバムや各曲のタイトルに「電気ブラン」を引っ張ってきた。アルバム内の全曲通してみると、奇数の曲(part1、3)は結構内観・内省的な詩。偶数の曲は(part2、4)は、「誰か・何かをモチーフに作ってみよう」とあらんかぎりのイマジネーションと狙いをもって作った詩、だったりする。

で、この「part1」は、いわきでの「電気ブラン」との出会いと、満月の夜のイメージが完全に一致した。それゆえ、仮タイトルは「moonlight」だった。

さらにこの詩の主人公は、借り物の言葉で愛を打ち明けるひと。例えば「月が綺麗ですね」なんて最たるもので。素面じゃあ伝えられないが為に、酒で箍を緩めつつ、散ったときの悲しみを麻痺させる。酔って堕落したムードを出すことで、自分で演出した「繊細さ」に酔いしれる。そして、頭の中の「蔵」を駆け上がって、「これまで読んだ・聞いた・目にした台詞の中で一番気の利いた言葉はなんだ?」と探し漁る。自分の言葉なんてありゃしない。

「読書家モーション、破滅のメンタル、ハリボテポエトリー」

結果、酔いが回りすぎて、なんの言葉も出てこなくて「ヤパパパパパパ」なのである。情けない恋をイメージした歌なんです。これは。

この曲に関しては特定の誰かを描いているものではなく。ある種、自分にも当てはまる情けなさを描いてる。まるで「言葉の借り物競争」。終盤の焦燥感・加速感はそのためなのかも。

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