見出し画像

商品貨幣論5  ―フランスの経済学2・重商主義とケネー―

重商主義
①高付加価値生産産業の保護育成
②穀物の低価格政策による富裕層の消費優遇措置
③関税による保護貿易

主にこの3点が柱となります。
政策実行者の名前を取り「コルベール主義(コルベルティスム)」とも呼ばれます。

①は利益率・付加価値の高い産業を国営で保護育成することです。
王立マニュファクチュアと呼ばれるこの手法は、「ゴブラン織工房」や「ボーヴェ織工房」という高付加価値のタペストリーを作る工房を国立で設営し、高付加価値商品の製造と販売を独占しました。
陶磁器は「セーヴル工房」、他にはガラス細工の工房など数多くの工房が保護されました。
これは日本に置きなおすと「明治政府が富岡製糸場を建設」したことや、粘土から「名物茶碗」を作成する朝鮮人の陶工を豊臣秀吉が保護育成したことなども同様と言えます。

王立マニュファクチュアに勤めていた職人は、
公務員だったわけです。

こうして①により、高付加価値の生産物が貿易の商品として取り扱われるわけですが、もちろん、それを直接取り扱う

王家御用達の貿易商人たち

はこれら優れた製品を他国の王族貴族に高値で売り、利益を得たわけです。
そして、前回述べたように、得た利益を第一身分の聖職者、第二身分の王家・貴族という特権階級でのみ還流させていたわけです。

身も蓋も無い表現をしますと、

「悪代官と越後屋」

の関係です。

さて、
②はこれは①により儲けた第一身分、第二身分の人たちも、だがしかし、「食料」を食べる人間であることは変わらないわけです。
彼ら特権階級の人間は「得た富を損をしないよう、お金を支払わないで腹いっぱい食べたい」と思うわけです。
そこで、第三身分の農民や市民が販売する小麦など「できるだけ安く購入できるようにする」ように穀物の取引価格を政府が不当に安く設定する政策を実行したわけです。

これは、

②は商品価値を低くし、富裕層は僅かな金品を支払うことで多くの商品価値を購入できる、という点において

「人為的にデフレを引き起こす政策」

と言えます。

そして、
③は自国製品は外国に売れて外貨を稼ぐことができる一方で、自国産業を守るために外国製品が国内に流入を防ぐ

関税を設ける、

という手法です。

以上のような①②③の手法でフランスは当時の列強大国となったわけです。
当時のフランスは神聖ローマ皇帝、オランダ、イギリスとも渡り合い、スペインも支配下に収めた超大国です。
贅の限りを尽くしたヴェルサイユ宮殿も造営されました。
国富は増加し、国力は確かに増強されたのでしょう。

しかし、それは第三身分の犠牲の下、だったわけです。

さて、前回お話したフランソワ・ケネーという人物は、実は生まれはパリの近郊、ウール県にあるメレという土地の「第三身分」の農家出身です。
一代で医者となり、当時のポンパドゥール侯爵夫人とルイ15世の庇護の下、ヴェルサイユ宮殿に居室を置く宮廷医、そして貴族の身分になりました。大変な苦労人と言えます。

ケネーは近世最後のヨーロッパでも稀な
「頭脳明晰の超人的知識人」
といっていいでしょう。

その彼が、何を思い
「重農主義(フィジオクラシー)」
を強く提唱したのか?

重商主義を排し、何を成し得たかったのか?

次回以降はそのあたりを考察してみるのと、

「現代の日本のデフレと、当時のフランスのデフレがどう違うのか?」

を考察してみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?