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仮面ライダークウガ考 【5】超古代の戦士(クウガ)についての考察

 ここでは、超古代の戦士とクウガと言う存在について、そして、<究極の闇をもたらすもの>について 考えてみたいと思う。
 まずは、クウガについてである。
 放送された番組そのものは、人間ドラマに重点が置かれていたために、クウガがいったい何なのかについては、 あまり詳しく掘り下げられていなかったように思う。が、幾つかの手掛かりは番組中にも存在しているので、 それを頼りに考えてみたいと思う。
 私は、<クウガ>とは固有名詞ではなく、 あのベルトを身に着け、あの姿に変わった者に与えられる、称号のような ものなのではないかと思っている。
 称号、と言うと変だが、たとえば歌舞伎役者や落語家などが、代々、同じ名前を受け継いで、「何代目誰それ」と 名乗るのと、同じようなものではないのかと考えたのだ。
 その根拠としては、番組中で、グロンギたちの会話の中に、「今度のクウガは……」と言うようなものが 幾つか見受けられたと言う事がある。
 代々受け継がれて行く名前でなければ、「今度のクウガ」と言うような言い方はしないだろうと思うのだ。
 更に言えば、グロンギにとってクウガは元々、敵ではなかったのではないか と私は思っている。
 敵ではなく、むしろ、グロンギ最高の戦士の称号、それこそが<クウガ>だったのではないかと。
 第1話の、九郎ケ岳遺跡で調査隊のメンバーたちが襲われているシーンの映像を思い出してみてほしい。
 中央に立つダグバは勝ち誇ったように、高々と例のベルトを掲げ、他のグロンギ怪人たちがそれを奪い合うように していた。また、クモ怪人がこともあろうに、警察へ突っ込んだ時、そこにはすでにベルトを装着した五代がいた。
 つまり、ここですでに、グロンギにとってベルトがただならぬ関心の的になっている事は描かれているのである。
 しかも、碑文の解読が進むにつれて<戦士>と同時に<クウガ>を表す文字が、本当はグロンギの文字だったらしい 事がわかって来る。
 この解読のヒントとなったのは、ダグバが被害者の血で残した象形文字だった。
 碑文の中で、クウガ(戦士)を表す文字が、血で壁に残されており、当初、一条と桜子は、これを五代に対する 挑戦の文字だと考えていた。が、壁の血文字を見た桜子は、それがクウガ(戦士)を表す文字と違って4本角を 持っていることに気付く。通常のクウガ(戦士)を表す文字は2本角なのだ。
 その事から、彼女は壁の血文字は挑戦状ではなく、ダグバの署名ではないかと考えた。更に、信濃大学に保存されている 碑文の実物を調査した彼女は、碑文の中の文字も<究極の闇をもたらすもの>に関する記述の部分だけが、4本角である事に 気付く。
 つまり、壁の血文字と碑文の中の文字が一致したのだ。
 そして、桜子は、本来クウガ(戦士)を表すこの文字は、グロンギのものだったのではないかと結論付ける。
 だが、だとしたらリントにその文字を持ち込んだのは、誰なのかと言うことだ。
 <クウガ>と<戦士>が同義語と言う事は、リントの民にとってはクウガとは戦士を意味し、戦士とはクウガを意味すると 言うことだ。
 つまり、最初に<戦士>と言う言葉や概念をリントに持ち込んだのは、他でもないクウガだったのではないかと私は 思うのだ。そして、その人こそが、おそらく、あの石棺の中で眠っていた、超古代の戦士だったのではないかと。
 が、超古代の戦士の事については後にゆずるとして、ここでは、クウガと言う存在について、もう少し考えて みることにする。

 第1話で、封印を解かれたグロンギたちが、例のベルトを奪い合っていた、と言うことは先に述べたが、では、なぜ 彼らはベルトを奪い合っていたのだろうか。
 それはむろん、そのベルトを装着したものが、クウガとなれるからだ。
 クウガになると言うことは、あの力を手に入れると言うことであり、同時に、<究極の闇をもたらすもの>となる 可能性があると言うことだ。
 グロンギに関する考察の項で述べたように、もしもグロンギにとって、<究極の闇をもたらすもの>をこの世に 降臨させることが目的なのだとしたら。彼らにとって、それが、神のような存在なのだとしたら。神と一体化し、 自らが破壊神となることを彼らが望んだとしてもおかしくはないだろう。
 いや。おそらく、彼らの最終目的は、本来はそれだったのではないかと思う。
 そう言う意味では、ダグバは最もその目的に近いグロンギだったのだろう。
 言ってみれば、グロンギの中のチャンピョンのようなものか。
 おそらく、普通であれば殺戮ゲームによって勝ちを収め、上位に昇って来た者がチャンピョンと戦い、チャンピョンが 勝てばチャンピョンが、挑戦者が勝てば挑戦者が、クウガと戦う、と言うことになっていたのではないか。
 ここでクウガが勝てば、<究極の闇をもたらすもの>が本当の破壊神として目覚め、負ければ勝者がクウガとなる。
 それが、彼らグロンギのルールと言うか、神を降臨させるための儀式だったのではないかと私は思うのだ。 そうして、彼らの生活様式も考え方も、全てがそこから派生して来たものではないかと。
 だがおそらく、グロンギの歴史の中で、実際に破壊神が目覚めた事はなかったのではないか。それがあれば、彼らは 現代までも、彼らのルールを持ち込む事はなかっただろうと思う。
 むろん、次第に神を降臨させることそのものが、形骸化して来た可能性はある。
 時代を経るに従って、部族の中での優劣を着けるためや、戦う事や殺戮ゲームそのものを楽しむ事に重点が置かれ、 本来の意味は忘れられかけていたと言う可能性は高いだろう。当然、クウガとなれば、グロンギ内では最高の戦士と 言うことになるから、崇拝や尊敬も受けようし、もしかしたら、なんらかの特権もあったかもしれない。
 そんな中で、異変が起こったのだ。
 クウガたる戦士が、獲物でしかなかったはずのリントに味方すると言う、異変が。
 あの、石棺の中に眠っていた超古代の戦士のことである。
 いったい、どんな事情があって、彼がリントに味方することとなったのかは、まったく不明だ。
 物語としては、幾つか思いつくが、それをここで述べるのはやめておこう。長くなるし、それらは、何の根拠もない 「物語」であり「創作」以外の何物でもないので、この考察の主旨からははずれてしまうと思えるからだ。
 だが、彼が、言ってみれば「悪の組織」であるグロンギからの裏切り者であるらしい、と言うそれは、歴代ライダーたち へのオマージュであるのかもしれない。
 歴代ライダーたちは、私たちから見ればともかく、「悪の組織」側から見れば、常に「裏切り者」だった。
 「悪の組織」の科学の粋を集めて作り上げた改造人間であり、これから彼らの世界征服のために充分役立ってくれる存在 だったはずなのに、ライダーたちは、誰もが組織を飛び出し、対立する存在となった。それは、かなり勝手な言い草とは 思うが、組織から言えば、立派な「裏切り者」である。
 ともあれ、リントの側についた超古代の戦士は、グロンギからリントの民を守り、グロンギを封印して、自らも眠りに ついた。だが、たとえその封印を途中で破られようとも、彼は、グロンギの誰にもクウガたる資格を与えるつもりはなかった のだ。
 だから、五代を呼んだ。
 五代を、と言うよりも、自分の後を引き受けて、クウガとなるにふさわしい人間を、と言うべきだろうか。
 力のみの強さを求めるのではなく、心の強さも持つ、そう言う人間を。そうでなければ、たやすく<究極の闇をもたらすもの> に心も体も明渡してしまう事になる。そうなっては、戦士がはるかな時間を、グロンギを封じて来た意味がなくなってしまう だろう。
 その呼びかけに、五代が応えたのは、偶然だったのか、必然だったのか。
 物語的には、偶然とするよりも、必然とする方がおもしろいだろうが、それに関する記述は、ここでは避ける事とする。

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