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仮面ライダークウガ考 【6】霊石アマダムについての考察

 ここでは、クウガを変身させる力を持つ石、 霊石アマダムについて考えて みたいと思う。
 この石が、そもそもなんなのかについては、番組中でもあまり触れられて いない。ただ、椿医師によれば、アマダムは五代の腹部を中心に、そこから 根のようなものを体ぜんたいへと伸ばし、細胞を変質させる力を持っている らしい。
 椿医師のこの見解が番組中で流れる以前、私はクウガの変身は、アマダム によって細胞そのものが完全に変化してしまって起こるものなのではないか と考えていた。
 実を言うと、この頃、私はたまたま原作版の『リング』と『らせん』を読 んだところで、ようするに、アマダムの力をリングウイルスのようなものだ と思っていたのだ。
 ので、先代クウガだった超古代の戦士は、どう言う人だったのだろうかと か、結婚していたのだろうか、子供がいたとしたら、その子供への影響は?  などと、いらない心配をしていたりしたのだが(笑)
 どっちにしろ、アマダムがなんなのか、よくわからないのは同じだと言う 気もしなくもないが、つまり、一種の寄生物と言うように考える方がいいの だろうか。

 たしかに、昔からヒーローの変身と言うのは、よくわからないものが 多かった。
 歴代ライダーたちは、とりあえず、改造人間であるとして、変身について の説明をすませていたし、私たち視聴者も、なんとなく納得していた感じが ある。
 が、ではたとえば「ウルトラマン」などの方は、どうだろうか。セブンや タロウのように、ウルトラマン当人が人間に擬態している場合はまあいいと しても、他のウルトラマンは、言わば人間に寄生しているような状態だ。 それが、ある瞬間になると、いきなり宿主である人間の体をのっとり、姿も 変わって更に巨大化してしまう。これは、考えてみれば、おそろしい話で ある。
 もちろん、私はヒーロー物にも正しい科学論理を持ち込むべきである、 などとは思っていない。「そんな事はあり得ない」事だから、おもしろい のだし、そもそも、物語がおもしろく、ヒーローがかっこよければ、視聴者は そんなことなど気にしないだろう。実際、私も、ウルトラシリーズを何度も 再放送等で見ているけれども、見ている時には、上記したような事などは、 考えたこともない。

 ではなぜ、クウガに関してのみ、アマダムってなんだろうか、などと考えた のだろうか。それはやはり、今までのライダーとは違っていたため、ではない かと思う。
 今までのライダーは、敵の攻撃を受けて、体の一部が損傷した場合、そこ からは、機械の部品が覗いたり、火花が散ったりした。が、クウガは、 私たちと同じく、血が流れるのだ。
 その事が、漠然と「ヒーローは私たちとは違うのだ」と言う観念を持って 見ている私たちの脳裏に、妙に鮮明に、衝撃的に映る。
 現代社会はすでに、動くロボットを生み出すまでになってしまっている。 動物の形をした、鳴いたり動いたりするロボットペットが、静かなブームを 呼んでいるが、彼らの人気の理由は、むろん、他にもあるのだろうが、一番は 毛が飛び散らないとか、食事の必要がないと言った、現実の生きている動物 にはかならずついて回る煩雑さがないためではないかと思う。
 そして、かつてヒーローたちは、まさにロボットペットのようなものだった。
 銃で撃たれても、高い所から落とされても、けして死なない。一部を損傷しても、 そこを直せば、また動き出す。たしかに、不死身であることは、人間にとっては 強い憧れでもある。だが、同時に、不死身の存在は人間ではない、 のである。 だから、常に「ヒーローは孤独な存在」だったのだ。
 だが、クウガは。
 クウガは、切られれば痛みを感じもするし、血も流れる。キノコ怪人の毒で、 死にかけもした。
 むろん、アマダムの力によって、普通の人間の何倍ものスピードで治って しまうし、死にかけた時も、結局、体の機能を完全に回復するために、全ての機能を 停止しただけにすぎなかった。
 そう言う意味では、やはりクウガも「不死身のヒーロー」なのだ。だが、同時に 「生身のヒーロー」でもある。
 アマダムが、どう言う物からできているのかはわからないが、どうやらそれは、 装着した人間の心に反応するらしい。
 五代が強くなりたいと願った時、それは、彼にライジングフォーム (これまた、おもちゃ会社の宣伝のためにつけられた名前。でも、たしかにこう言う時には 便利ではある。)を与えた。それ以前にも、素早く動くための青の力や、 聴力・視力等が鋭敏になる緑の力など、五代が必要だと思うたびに、クウガは変化を遂げた。
 言ってみれば、アマダムは石と言うより植物の種のようなもので、それは、 人の体に寄生し、宿主の精神に呼応して根を張り、成長して行くのではないだろうか。
 更に言えば、それは、おそらく外からの刺激にも反応する。
 クウガのライジングフォームが、椿医師が蘇生のために五代に行ったカウンター ショックが原因になっている事は、番組中で五代自身が後に証明してみせた。
 おそらく、グロンギの怪人への変身や戦闘時の力の強化も同じようなもので、 <バラのタトゥーの女>が殺戮ゲームに赴く怪人たちの腹部に、水晶の牙のようなものを 差し込んでいた、あれも、カウンターショックと同じような原理の外からの刺激、 だったのではないかと思う。
 これは、番組中でも言われていることだが、グロンギの怪人たちとクウガは、 物理的には同じ存在なのだ。それが何なのかはともかくとして、外からの刺激や 精神感応によって肉体を強化・変化させることのできる種を体に埋め込んだ戦士、 なのである。
 だが、そうやって考えて行くと、ますますこれらの石と言うか種は、いったい 何なのか、人工的に作られたものなのか、それともどこか(たとえば惑星外からとか) からやって来たものなのか、あるいは地球に元々あったものなのかが、気になる ところだ。
 むろん、それが地球外のものにしろ、地球に元々あったものにしろ、 自然発生的なものであるなら、それは問題ない。グロンギが、たまたまその性質に 気づいて、こう言う使い方をした、と言うだけのことだろう。
 だが、もしも人工的に作られたものだとしたら。
 グロンギの背後には、グロンギなる戦闘集団を作り上げようとしたものが 存在することになる。

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