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仮面ライダークウガ考 【10】番組を見終えての不満

 前項は、まるでこれでこの考察が終わるかのような結び方だったが、まだまだ続くのである(笑)
 で、前項ではとりあえず飛ばした、不満について、である。
 まず、一つは、結局グロンギの謎があばかれずじまいだったこと、であろう。
 前半の考察で、いろいろグロンギについても書いたが、それらはみな、ようは推測にすぎない。 明確な答えは、番組では明らかになっていないのだ。
 グロンギの目的も、超古代の戦士のことも、<究極の闇をもたらすもの>がなんだったのかも、 そして、ダグバや<バラのタトゥーの女>のことも。
 これはおそらく、人間側のドラマに時間を費やしたためと、全体の話数が少なかったためだろう。 実質、「クウガ」は一年間続いた。が、ゴルフなどの中継のため、話数は49話と、実際の一年間 (4クール、52話)よりは少なかった。
 昔は、特撮物に限らず、アニメでもドラマでも、一年間続いて、びっしり4クール放映されるものなど、 さしてめずらしくもなかったが、昨今は、ドラマでも1クール(13話)放映が普通である。どうして そうなったのかは知らないが、原作付きで、その原作が長編などの場合は、1クール放映に合わせて 大幅に話を変えられたり、タイトルを変えて、もう1クール放映したりする。
 別に、昔のように、4クールの予定でじっくり番組を作ればいいじゃないか、と思うのだが、 製作者側には製作者側の事情があって、どうもそう言うわけにも行かないらしい。
 もっとも、特撮番組は今でも一年間放映されるのが普通なので、それを考えれば、「クウガ」が 特別悪条件だったわけではないのかもしれないが。

 二つ目は、やはり48話の最後から49話に至るまでの間が描かれなかったこと、 だろう。 これも結局は、グロンギの謎があばかれなかったのと同じ理由から来るものだと思うのだが、 このあたり、もう少し、間の話を絞れば、48話を47話に持って来て、48話で続きをやることも 可能だったのではないか、と言う気もするのだが。と言って、このあたりの話を映画だのビデオでやる、 と言うようなことはしてほしくない。知りたくはあるが、それはずるい……と言うか、とりあえず、 テレビで完成しているのだから、そっちはまた、別なテイストでやってほしいなと思うので。

 結局、全ての理由は同じところにあるのだが、もう一つは、<バラのタトゥーの女>のことだ。 彼女が、あまりにあっさり死にすぎたのが、私にはどうも気になる。
 たしかに、神経断裂弾は強力な武器だったのだろう。だが、今までかなり強いグロンギ怪人にまで 命令を出していた彼女が、あんなにあっさりやられてしまうなんて、いくらなんでも拍子抜けするではないか。
 しかも、その死に方も、妙に意味ありげだったし。
 だから、実際は生きていて、最後にそのことを暗示して終わるのだろう、と思っていたのだ。だのに、 結局、最後はあんなだったし、もちろん、あの最終回に彼女が出てくれば、それはそれで不自然だろう。
 あるいは、製作者側には、彼女を撃ったのが一条だったから、あんなにあっさりとやられたのだ、 と思わせたい裏設定のようなものがあったのかもしれない。実際、ファンの間では、一部で、一条と <バラのタトゥーの女>の関係についても噂されていたらしい。が、それだって、どんな関係があったのか、 (いわゆる前世での関係なのか、それとも、現代において、彼女が一条に対して他の人間とは違う感情を 持っているのか等)は結局、はっきり描かれていない。
 ようするに、思わせぶりなだけなのだ。
 たとえば、彼女が一条に、他の人間に対するのとは違う感情(簡単に言えば、恋愛感情)を持っていたとしよう。 それがずっともっとはっきりした形で、番組中で描かれていたならば、あの最後も納得が行く。所詮は敵同士 なのである。しかも一条は、当然ながら刑事としても人間としても、人々を苦しめ、五代を傷つける存在である 彼女を、そう言う対象として見ているはずもない。だから、あっさり撃たれたのだ、と。
 が、番組中ではそう言うはっきりとした彼女の感情を表す描写は存在せず、しかも、死ぬ寸前に、謎の言葉を 残している上に、彼女は爆死ではなかった。水に落ちたのだ。ドラマなどでは、こう言う場合、往々にして死んで いない事が多い。
 そうしたことから、私は、彼女は生きているのではないか、と考えたのだが、結局、番組としては、 あれで死んだ、と言うことになってしまったようだ。

 それから、最後の方では、ほとんどゴーラムの活躍の場がなかったこと。
 ゴーラムだけでなく、ビートチェイサーについても最後の方ではほとんど活躍の場がなく、少し寂しかった。
 もちろん、物語を盛り上げようとすれば、不必要な要素は切り捨てなければならないのだと言うことはわかる。 また、新たな武器や乗り物が次々と登場するのは、ヒーロー物が「子供向け」であり、そのスポンサーが 玩具メーカーである以上、逃れることのできない宿命だと言うこともわかる。
 だが、せっかく登場したメカが、しかも「仮面ライダー」であるにも関わらず、最後でほとんど活躍の場がない と言うのは、やはり、寂しい。それに、五代が旅立ってしまった後、ゴーラムはどうなったのだろうか。クウガの 意志によって始動するメカなのだから、科警研に今も保管されているとしても、五代がいなければ、誰にも動かす ことはできず、他の人間には用のないシロモノでしかない。
 まあ、ビートチェイサーについては、元々、警察車両なので、パスワードを変えれば使用できるし、問題は、 ないのかもしれないが。

 とりあえず、他者からも賛同してもらえそうな不満は、このくらいである。
 ここからは、私個人の――もしかしたら、私しか持たないかもしれない不満について書いてみることにする。
 不満、と言うより、単なるわがまま、に近いものだと言う気もしなくもないが。
  ようは、普通のヒーロー物なら「お約束」である、誰かが人質になって、ヒーローが変身できないまま、 敵にやられ放題になってしまう、と言う話がなかったこと、なのだ。
 もちろん、これは「クウガ」と言う物語の主旨からは大きくはずれてしまうし、敵も特殊であったから、 無理だったのは、ようくわかっている。わかってはいるが、やっぱり、そんな話もあったらおもしろかったのに、 と思うのだ。
 人質となるのは、みのりか桜子、あるいは案外、一条とか。
 誰であっても、五代が苦悩するのは目に見えているので、やっぱり、そう言うのも見たかったなあと。
 あるいは、みのり、桜子、一条の三人が、おやっさんと共に「ポレポレ」にいる時に、そこがグロンギ怪人に 襲われ、爆発炎上し、全員が死んだと思われて、怒りのあまり、アルティメットホームに変身してしまう五代、とか。
 もちろん、実際は全員助かっているのだが、五代はそれを知らず……などと言うのは、おもしろかったんじゃ ないかと思うのだが。
 これは、五代を試すかのようで、少し意地悪かもしれないが、自分に何の関係もない高校生たちが、グロンギ怪人に 次々と襲われただけで、あれほどの怒りに捕らわれて我を忘れてしまうのだ。 自分にとって、本当に大事な人間たちの 身に何かあったら、その時、彼はどうしていたのだろうか。私は、それが見たかった。
 実際、海ヘビ怪人の時には、プールの入り口で、みのりたちは怪人とすれ違っているし、他の話でも桜子が襲われて いる。一条も、しょっちゅう怪我をしている。
 つまり、あわやと言う瞬間は、番組中でもあったわけなのだから、もう少し、それを進めてみてもよかった気が するのだ。
 ともあれ、物語的にはおもしろいのに、いかんせん、説明不足な部分も多く残った作品だったように思う。

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