喧嘩の後も気まずいんですけど
飛鳥:……
○○:……
簡潔に言う
嫁と喧嘩した…あ、妻のほうね、本妻
結婚して三年目
初めての喧嘩
それだけ俺には大事な話だったし飛鳥も同じ思いと思った
ところが違った
飛鳥:…嫌だって言ったよね?結婚する前に
○○:だけどもう三年だぞ?そろそろ考えないと…
飛鳥:…意味わかんない
頬杖をついてそっぽ向く
決して俺の目も見ない
あれこれ聞いてもはぐらかす
そして飛鳥はうんざりした顔で…
飛鳥:……興味ない、それが答え…
そこから言い争いとなり……
1時間後の今
お互い疲弊して黙ったまま
でも……
飛鳥に背を向けた俺の背中に…
ピタッと飛鳥の背中がくっつく
これで仲直り……
……ではないのだ
お互いに気まづくなる時間が来た
飛鳥:……
○○:……
沈黙……お互いなにも話さない
これは我が家暗黙のルール
どちらかが折れたら負け
俺も飛鳥も似たもの同士
頑固で頭下げるのが嫌い
だからこの体勢は本格的な開戦
お互いのぬくもりにどちらかが屈するか…
飛鳥:…私は嫌なんだよ…
○○:それは知ってる…でも俺が言ってる事は理解できるだろ?
飛鳥:……できるよ…でも…
○○:…それでも拒否ならしかたない
…賭けに出るか…俺だって真剣に将来を考えてのことだ……
○○:……別居しない?
飛鳥:……え?
ピクっと飛鳥の身体が反応した
○○:また俺がこの話しちゃうし、しばらくお互い頭冷やそ?俺も飛鳥の事ちゃんと考えるから
飛鳥は沈黙してた
いきなり言われたらそうだろう
でもお互いのこと考えたら……
ギュ…
○○:……飛鳥?
涙目になりながら後ろから抱きついてきた
俺の手に涙目が一滴零れた
飛鳥:……やだ…グスッ
○○:また喧嘩しちゃうよ?
飛鳥:グスッ…別居するぐらいなら…喧嘩するグスッ
○○:いやしたくないし飛鳥傷つけたくないし…
目いっぱい抱きついてくる
耳元ではすすり泣きずっと
飛鳥:やだ…やだ…グスッ…飛鳥…離れたくない…
○○:わかったよ…いるから…
飛鳥:…ほんと……?グスッ…
こんなに大粒の涙零され抱きつかれたら別居どころではない……やっぱり飛鳥は愛おしい
○○:大丈夫、もう別居するとか言わない、安心して?
飛鳥:……あのさ
○○:なに?
顔を俺の背中に埋めてか細い声で呟く
飛鳥:……考えてもいいよ
○○:…なにを?
飛鳥:……恥ずかしいからやだ…
○○:…だめ、言わないと伝わらない
飛鳥:……いじわる
飛鳥:だからぁ…その…あの…//
飛鳥:…子作り……//
○○:あの…言い方ね
飛鳥:じゃあなんて言えばいいんだよ…
○○:子供作ろうでいいでしょうに
飛鳥:…一緒だよ
○○:…でもさ…決めてくれたのはいいけど、心の決断はできた?
ぎゅっと…力強くまた抱きしめる
飛鳥:…○○は?
背中の温かいぬくもりを感じ、飛鳥の手を繋いだ
○○:俺は決めた…飛鳥にしてあげることはこれしかない…ううん…本当は子供を作るなって飛鳥の言う通りかも…
飛鳥:…子供を作るのは…悲しかったから…でも…あなたの子供を作りたい
また大粒の涙を流す
飛鳥:…大好きな人の子が欲しい…最初で最後の一夜でも…あなたが決めたなら
飛鳥の腕を離し前を向き抱きしめた
○○:ありがとう…俺のわがまま…聞いてくれて
俺も涙を流した…
飛鳥:…今までずっとしてなかったんだから…優しく忘れられない夜に…して//
○○:…うん、思い残さないようにな
そのままお互い泣きながら唇を重ねた
このあと一緒にお風呂に入り長い一夜を共にした
俺と飛鳥の…結婚3年目の初夜
あれから妊娠したことがわかった
妊娠したことは本当に嬉しかった
○○も喜んでくれた
でもその後○○は体調が悪化した
珍しい病気だった
彼と出会った時から言われた
○○:俺は病気にかかっていて…性交渉することによって発症率が高くなる…だから何もできないけど…
飛鳥:…しなくていい
○○:でももし結婚したら子供は…
飛鳥:…いい、○○がいれば…だからいらない
本当は嘘だった
○○の子供は欲しい…でも○○がいなくなるのはもっとやだ
付き合って二年、結婚して三年…一度もしなかった
○○も私も求めたい時はあった…でも…
お互いが好きだから
かなしみたくなかったから
○○が子供を作りたいとあの日に言ったのはなんとなく気づいたのかもしれない
病院の一室
彼はほぼ寝たきり
飛鳥:…お腹目立ってきたよ…あなたの子供
○○:…子供を作らない選択肢、あったかもね…こうなってわかった…俺は…飛鳥に押し付けたのかな
私は彼の手を取り微笑む
飛鳥:ばーか、私も欲しかったしあなたの子が欲しかった…あんたの子しか欲しくない…あなたと言う存在を残したいし…子供に聞かせたいでしょ
○○:ありがとう…
○○は微笑み涙を流す
優しく○○を抱きしめた…愛おしいあなたを
『ぱぱっていけめんだね!』
「そうだよ、それに優しくていつもママを守ってくれたの」
『ぱぱすごい!』
『ぱぱに会いたかったな〜』
数年前に無事出産できた
双子の赤ちゃん
○○と名前は決めていた
遥香とさくら
遥か彼方までずっと自分を残していて欲しいから…遥香
さくらの鮮やかにお淑やかに咲き誇って欲しい…さくら
一気に賑やかになり絶望だったあの時より心は救われた
○○が寂しくならないように遥香とさくらを残してくれたのかな?
…最後まで余計なお世話
でも…ありがとう…
子供達がいなくあなたもいなかったら私は…
だから…言ってくれたんだね
○○…
愛してるぞ、飛鳥は…ずっとね
遺影の○○は微笑んでいた
終
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