見出し画像

【再】「オスラー病」という病について

実家生活ももう少し。母親の介護の話などを書いてきたが、脳梗塞で倒れる原因となったのは実は一般的な生活習慣病などがもとではなく、「オスラー病」という遺伝性疾患が原因だった。この病気はまだ未解明なことが多く、潜在的な患者数が多くいるのでは、と言われている。僕を含めたうちの一族がつきあっているこの病気について、以前書いた記事がサルベージ出来たので再度ここに記しておくことにする。

--

「オスラー病」という病気をご存じだろうか。おそらくほとんどの人が聞いたことすらない、と仰ると思う。

1.オスラー病とは何か

オスラー病というのは、正式名称を「遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)」という遺伝性の病気で、いちおう難病として指定されている。5000~8000人くらいに一人の割合でこの患者がいると言われており、都合日本では1万~2万人くらいの患者数になると考えられているが、この病気を研究している日本HHT研究会によると、現在この病気で受診している患者さんは全国で500人程度だそうで、気づかずにこの病気に罹患している人が潜在的に多くいるんだそうだ。

僕はこの病気の罹患者である。僕の症状は本当に大したことなくて、生活に支障は今のところまったくない。ただ、親きょうだいも罹患しており、母はこれによって脳梗塞を患い、今でも片麻痺でたいへん不自由な生活を余儀なくされている。

のちに述べるが、この病気は「自分はそうかもしれない」というヒントが比較的わかりやすい。そして、早めに対処をすれば、うちの母のような事態になることもほぼ確実に防ぐことが出来る。この病気の患者会に行ったりすると、まだ若いのに脳梗塞などになってしまって、後遺症に悩まされている人の話も聞く。この病気のことを書いてみようと思ったのは、気が付いてないけどこの病気の要素を持っている人がもしいるならば、気づくきっかけとなればいい、という思いからである。

2.「自分はそうかもしれない」のヒントとは?

この病気は、簡単に言うと体の隅々の血管に奇形が起こる病気である。奇形が起こるとどんなことが問題になるかというと、目に見える症状としては、

・繰り返す鼻血(多い人で1日数回~数十回)
・主に粘膜(唇とか舌、歯茎や鼻粘膜など)に毛細血管奇形による血腫のような赤いブツブツができる。そこから出血することもある。
・年を取ると消化器の表面で同様のことが起こって出血したりする

というようなものだ。これらの症状はオスラー病を持っている人のほとんどに大なり小なり現れる症状で、この病気の要素を持っているかどうかの大きな判断材料となる。

僕の場合、家族みんな割と日常的に(といっても毎日とかではないが、2~3日に1回は誰かが出す)鼻血が出ていて、鼻血というのはすべての人にとって割と日常茶飯事な出来事なのだと思っていた。ところが、これが遺伝性疾患の罠のようなもので、周りの人に聞くと鼻血というのはそれなりにスペシャルなイベントなんだということを後から知った。そういう小さな違和感がヒントになる場合もある。

また、歯周病と診断されたことがないのに歯茎から出血するということもある(実際に僕がそうだった)。心当たりのあまりない、他人様ではあまりみられないような出血があるという人は要注意だと思う。全く心当たりのない人は、この先読み飛ばしてもらって構わない。

3.この病気の何が怖いのか?

2‥の症状だけ見ると一見大したことのない病気に思える。が、毛細血管に奇形が起こることから、同時にこんなことが起こる。

・肺・脳・肝臓・脊髄など、内臓の中にも血管奇形が起こる
・その血管奇形により、動脈と静脈がくっついてバイパスしてしまう

動脈と静脈がバイパスするとどうなるか。普通、動脈も静脈も、それぞれ太い血管からだんだん細い血管に枝分かれしていき、最後の最後毛細血管のところで動脈と静脈の境目が発生する。それが、奇形によってある程度太い血管のまま、動脈と静脈がバイパスしてしまうと、本来毛細血管によってザルのように濾されていた細菌や血栓などが、動脈にスルーしてしまうのだ。

細菌や血栓がスルーすると、それが脳に回れば脳梗塞や脳膿瘍(細菌によって膿がたまってしまう)になる。奇形が脳にあると、それが破裂して出血してしまったりする。いずれにせよ、突然に命が危なくなるようなことになってしまうのだ。

実際、僕の母は脳梗塞になるような素養の全くない人で、血液検査はいつも100点満点であった。なのに、脳に血栓ができてしまったのは、ひとえに肺にあった動脈と静脈とのバイパスによって、足とかにできた血栓が飛んでしまったからだったのである。

4.どんな遺伝の仕方をするの?

この病気の遺伝の仕方は常染色体優性遺伝と言われ、簡単に言うと確率論的にはオスラー病の親からオスラー病のお子さんが生まれる確率は50%なんだそうだ。つまり、誰かがこの遺伝子異常を持っていると、かなりの高確率で子供にも遺伝するし、きょうだいや親もその異常をもっていることが多いということだ。ただ、遺伝子異常があるからと言って、この後述べるような症状が必ずしも出るとは限らない。遺伝性の病気がやっかいなところである。

5.「自分はそうかもしれない」に当てはまる場合は、どうしたらいいの?

「2.自分はそうかもしれない、のヒントとは?」でひょっとしたら、と思った方が万が一いたのであれば、今現在、自分の体に血管奇形が起こっているかどうかを検査することを強く勧める。記事の最後に、この病気の患者会のリンクを置くが、これを参照してこの病気に対応できる病院で診察を受けたほうがいいと思う。

その際行われる検査は、至極一般的なもので、脳および肺、内臓のCTとMRIを取る。それによって、血管奇形のほとんどがわかるようだ。ちなみに僕自身は、親族にオスラー病罹患者がいると分かって、各臓器のCT・MRIを取った。その結果、いまのところ重大な血管奇形は起こっておらず、今後起こる可能性も低いと言われていて、いまは5年ごとの経過観察となっている。

また、遺伝子異常の有無を見るうえで、遺伝子検査もすることができる。親族を含め誰がこの遺伝子異常をもっているのかを整理するうえでは、遺伝子検査を実施することも(特に子供たちなどの今後を考えるうえで)重要である。

6.もし肺や脳に血管奇形が見つかったらどうするの?

血管奇形が見つかった場合は、動脈と静脈がバイパスしているところをコイルで埋めて(カテーテルを入れる)せき止めたり、肺などであれば奇形部を含む肺の一部を切除するなどの対策が取られる。これによって、血栓や細菌が脳に飛ぶことを有効に防ぐことが出来る。

いずれにせよ、血栓や細菌が飛ぶことで引き起こされる脳梗塞などの症状に比べたら、あらかじめできることがあればやっておくコストを払う意味は大いにあると言っていい。そのために、自分はそうかもしれない、という方が一人でも多く気付いて、診察を受けるようになってほしいと思う。

7.参考情報

難病情報センター:オスラー病(指定難病227)
特定非営利法人 オスラー病患者会(検査・診察可能な病院情報など)

この記事が参加している募集

今日もあなたにいいことがありますように
51

おろち

書き重ねた雑文を淡々と/衝動は嘘を付かない/記事に対するコメントはTwitterまで