急ブレーキ

今日、少し驚いたことがあった。

出勤時、バスに乗っていた時のことである。突然急ブレーキが踏まれ、私含めた乗客は進行方向に大きく傾いた。

なぜか運転手席のリクライニングは全力で前方に振り切り、くの字になった椅子の間に、運転手が軽く挟まれていた。

何があったのは見えていないが、おそらく何かバスの前方を横切るものがあり避けるために急ブレーキを踏んだのだろう。

乗客全員が目を点にしながら驚いた後に、数人が笑い出した。

その笑いにつられるかのように他の乗客も係員も、ついには運転手まで笑い出し、ノリの良さそうな若者は仲間内でハイタッチをしながら爆笑していた。

その中ただ1人の外国人であった私は、なぜ周りが笑っているのかが分からなかった。

ただ事故りかけて急ブレーキを踏んだことの、何が面白いのか。
面白いかどうかというより、危ないなという感情が大きく上回る。

「危ないんだから、笑ってる場合じゃないよ!」みたいな感情ではなく、ただ純粋に同じ事象に対して持つ感情の違いに驚いた、という感じだ。
もし日本のバスで同じことが起こったら、すぐに運転手の謝罪アナウンスが流れ、乗客はコメントすることもなく真顔かしかめっ面をしているだろう。

こちらの人は「もし事故っていたら」とか、「もし誰かコケていたら」とかは、考えないのだろうか。

前々から感じていたが、「もしも」みたいな感覚が本当にない。だから先回りとか逆算とか考える前に今を楽しむし、没頭する。

想定の話とか未来の話はあまり眼中にないようだ。

「急ブレーキで、みんなで同じ顔して驚いた」という事実が面白い。
それで、終わりだ。
それ以外の事実は今ここにないんだもの。

そうだよなぁ。
シンプルに考えたら、今ここにあることだけを考えるのが普通だよなぁ。

今ここにないものに悩み悩み悩み、自分なんかダメだという結論に至ってしまう人に見てほしい。
急ブレーキで驚いたこと以外に、実際に起こった事実は何もないよ。

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