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赤いジャンパー、元すし職人、元キャバレーのボーイで、今は古本屋の菅さん

厚生書店 杉本信一   

秋雨が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、「天神さんの古本まつり」が近づいてきたのでございます。先日からひと足早く開催中の四天王寺さんでの即売会は大変雨の影響を受けられまして、誠に気の毒なことでございます。たまにお客様からお尋ねいただくんです。「やっぱり天神さんグループと四天王寺さんグループは仲悪いんでっか」と。(やっぱり、ってなんでんねん)と心の中でツッコミを入れながら「いえいえ、そんなことはないんですよ」とお答えするのですが、お客様の表情から(ホンマかいな)という疑念が感じられるのでございます。

実際のところは、仲が悪いどころか、大の仲良しでございます。今回も四天王寺さんの会場では天神さんのチラシやポスターをご案内いただいております。

古本屋というのは変な商売で、他のご商売と違いまして、いわゆる「商売仇」というよりも「仲間」や「同志」といったような感覚でしょうか。一口に「古本」と言いましても、江戸期の和本から洋装本、文庫本、アニメや映画などの芸能本、地図や絵葉書、文庫本など実に幅広く、それぞれに得意としている本屋さんがあり、なおかつそれぞれの分野が重なり合っています。「ウチは和本しか扱いまへん」なんという本屋さんはまれで、平たく言いまして「なんや良うワカリマヘンガ、儲かるもんなら何でも扱いまっせ」という本屋がほとんどかと思います。そんな中で、本屋さんごとのクセや好みがにじみ出てくるものなのでございます。自分の店に合わないものが入ったら、その分野に詳しそうな本屋さんに遠慮なく尋ね、また聞かれた方もわりと気安く聞かれてないことまで含めて売り方や値段まで教えてくれることが多うございます。

考えてみるとこれらは言わば企業秘密、「そんなこと教えられまへんなー」で済ますのが当然のようにも思えますが、そんなことをしてたら、今度自分が聞いたときに教えてもらえません。ギブアンドテイク、持ちつ持たれつ、が実際に生きている業界なのです。

さて、チラシをお持ちしまして、四天王寺の即売会を主催している関西古書研究会の会長、大仙堂さんにごあいさつをいたしました。
「おい、俺が死ぬ前にウチに遊びに来い。何が食いたい?」と言ってくださったのです。大仙堂さんはすし職人の経験もおありという異色の方で、和洋中なんでも器用に作ってくださるのです。

大仙堂さんはいつも自分の売り場におられず、はっきり言って「ウロウロ」されています。いや、これは失礼ですね。実際は会場内を隈なく歩いて困っている本屋、お客さまはいないか、トラブルはないか、売り上げはどうかを確認して回っておられるのです。自分の商売は二の次です。数年前から病を得られまして、しんどそうではあるのですが今回も巡回は続けておられました。

私は自分の商売で精一杯、いつか大仙堂さんのようになれたらええなぁ、と思う今日この頃でございます。

10月14日から18日まで、天神さんの古本まつりでお待ちしております。

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