ライトノベル作家と三年縛りの伝説
また、「三年縛り」である。
また、というのは、他でもない。
「三年縛り」の噂はライトノベル業界に定期的に流れる噂であり、最終的に「よく分からないね」で終わってしまう”伝説”なのだ。
1、そもそも「三年縛り」とは何か
「うちでデビューしたから、三年はうちで書いてね」というのが、伝説として流布する”三年縛り”である。
これはかつて、ライトノベル作家への道が、今よりも遙かに狭く険しかった時代の名残だ。
莫大な予算を掛けて「将来、金の卵を産む鶏」として獲得した作家を、他に攫われないようにするための”約束”である。
とは言え、実際には昔からレーベルによって差はあったようだし、そもそも大賞受賞者など、潤沢な販促費を投入出来る作家に限られるケースが殆ど、ということだったようだ。
結論から言えば「2018年現在ほぼ全て新人ラノベ作家は気にしなくて良い」ということになるだろう。
(例外としてはデビューした時からアニメ化企画が動いていますなどという特殊な場合だろうが、その場合はちゃんと説明されると思われる)
2、Web発時代の作家のサバイバビリティ
三年縛りという言葉の存在した時代はある意味で麗しい時代であった。
「三年は余所で書くな」というのは、裏を返すまでもなく、デビューして「三年はうちにチャンスがある」ということである。
もしチャンスを与えずに、三年縛りをしていたのなら、それは少し問題だと思うが、その話はここでは措く。
さて、前段で「金の卵を産む鶏」という言葉を使った。
かつてのライトノベルレーベルは鶏としての作家と契約をし、金銀銅の卵を販売することで利益を得るというビジネスモデルであった。
しかし、Web発の作品が増えた現在、状況は激変している。
鶏と契約しなくても、卵が転がっている、という時代なのだ。
それが金の卵がチョコエッグか石の塊かは磨いてみないと分からないのだがいずれにしても、ラノベレーベルはWebから卵を拾うことができている。
では、鶏はどうするべきなのだろう。
かつてと同じように同じレーベルと安定して付き合いを続けるのは、一つの手段である。
新たなビジネスパートナーを見つけてゼロから関係をはじめるのはコストが大きくなるのは、簡単に想像のできる話だ。
また一方で、レーベルが卵を磨くのを待っていられないという人もいる。
「戦いは数だよ兄貴ィ」という言葉があるが、バッターボックスに立たねばそもそも勝負ははじまらない。だから複数のレーベルから本を出す。
単純明快だ。
この場合は、「金の卵を産む鶏」としてレーベルと付き合うと言うよりも、「金の卵を売る人」として付き合うというイメージがしっくりくるかもしれない。
3、状況の変化(終わりに)
ライトノベルは1冊当たれば数十冊のシリーズを継続して書き、重厚長大なシリーズをものにする、というロールモデルがかつては存在した。
今も、その系譜を継ぐラノベ作家は少なくない。
このルートに乗ることができれば、大きな利益を得ることが出来る。
しかし、状況は流動的だ。
大シリーズが作れない場合単発の作品を次々と書くことになる。
その時にネックになるのが、企画を練る時間だ。
編集と話し合い、じっくりと企画を練るのは楽しいが、それは性に合わないというラノベ作家は、かなり多い。
「それよりも俺の卵を見てくれ! 金色だろう!」という方法である。
何が正しいかは分からない。
2018年10月末に正しかったことが11月初頭には間違った方法論になる可能性も大いにある。
少なくとも「三年」という今のライトノベル業界にとっては「永遠」と同じ意味の言葉は、最早、あまり意味を成さないと言うことだけは、確かだ。
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